FOR YOU














マウンドに立って、空を仰いで深く深呼吸をしてから前を見る。

18.44m先にあるミットを見詰めて、そこだけを見詰めてゆっくりとおおきく振りかぶってボールを投げる。

フォームを戻すのと同時にミットに吸い込まれていくボール。それはとても気持ちのいい感覚。





吸い込まれていくボールを見るの好きで。




ボールを投げるのが好きで、好きでたまらなかった。

自分の思った通りの場所へ投げることが出来たらきっと、もっと気持ちいい。

そう思って。

だから。

もっと気持ちいいと思っていたくて、もっと投げることを好きになりたくて。

必死で練習をした。

自分にはスピードボールは投げられないって判ってたから、だからせめてコントロールだけでも。

そう思って。



毎日、毎日。

九分割の的に向かって必死で練習して。



そうしてコントロールを手に入れることは出来たけれど。

それだけじゃ駄目なのだと思い知った。


好きなだけじゃ駄目なのだと。

コントロールだけじゃ駄目なのだと。

どんなに努力しても駄目なこともあるのだと。



そして自分が好きでしていることは大好きなあの人を傷付けていることなのだと知った。







それでも、やめられなかった。

手放せなかった。

誰かを傷付けていてもそれでも必死で投げることに、マウンドにしがみ付いて。

自分の浅はかさに、醜さに眩暈を起こしそうになりながらそれでも手放せなくて。





…やっと周りに目を向けたときにはもう手遅れで、何もかも遅すぎた。




全部自分が悪い。

自分のことしか考えずに、周りのことなんて思いやらずに自分勝手だったから。

だから。






自分から切り出して。

今まで傷付けてばかりいた分、今度は自分が傷付く番だから。






今までごめんなさい。

もうすぐ、もうすぐだから。

オレが消えれば全部が上手くいくはずだから、だから。








「叶くん、オレ…オレね…高等部へは行かない」







大好きな貴方へ。

オレからの最後のプレゼント。