桃色両想い。 1









その日、三橋廉は悩んでいた。


廉の目の前に広げられているのは普段はクローゼットの中に納められている洋服の数々。

色とりどりの服の山。

その山を前にうーんと頭を抱えて悩んでいた。

服を一枚手にとって、鏡の前に立ち身体に当てては放り投げ、また手にとっては身体に当ててまた放り投げという動作を繰り返す。

「どうしよう…」

とうとう涙が目に浮かんできたところで、携帯が鳴った。着メロは「栄光は君に輝く」だ。

「も、しもし」

画面も確認せずに通話ボタンを押す。

『レンレン?泣いてるの?!誰かにいじめられたの?!』

相手はルリだった。廉に甘くて、廉が可愛くて可愛くてたまらない従姉妹は廉が三星学園を離れ埼玉へ帰ってからも毎日電話なり、メールなりで連絡を寄越す。

ルリ曰く、心配だから。らしいけれど。

イキナリ涙声の廉に驚いて甲高い声をあげるルリに驚き、廉は慌てて言い訳を始めた。

「ちが、うのっ!あの、服が…」

しどろもどろの廉の言葉は理解するのがかなり難解だけれどルリは根気よく廉の言葉を聞いた。







曰く。

ゴールデンウィークに叶と久しぶりにデートをする約束をしたこと。

叶がわざわざ埼玉まで出向いてくれると言ってくれたとても嬉しくて1も2もなくOKしたこと。

けれどデートにどんな服を着ていくか決められないこと。

だから思わず泣きそうになってしまった。







廉の言葉を最後まで聞いてからルリはその言葉を順番どおりに組立て理解した。が、面白くない。

ルリにとって大事な大事な従姉妹の廉。

同い年だけれどルリにとって廉は守るべき存在でまるで妹みたいで。

その大事な廉が、大嫌いなあの叶修吾と付き合っているという事実。

面白いはずがない。…けれど、さっきまで涙声だったはずの大事な従姉妹は叶のことを話すのは本当に嬉しそうで。

廉の幸せはあたしの幸せという法則の元。仕方なしにルリは廉に協力することにする。

『廉、どれか一着には決められなくてもいいな〜って思うのは何着かあるんでしょ?』

「う、うんっ」

『じゃ、それ写メって送って。デジカメで撮ってパソコンに送ってくれてもいいけど廉、パソコン苦手でしょう?』

「う、うんっわかっ、た!」

すぐさま電話を切ると、ルリに言われた通りに何着かを選び出して携帯カメラでメールを送る。

メールを送信後、そわそわしながらルリからの連絡を待つ。

ゆうに10分はたっただろうか。廉の携帯が再び鳴った。

「もしもしっ!!」

『レンレン?薄いオレンジのちょっとエレガントっぽいトップスがあったでしょ、胸元がレースのやつ。それに白い上着を合わせて、一番上のリボンで軽く止めるだけにするのよ?その方が可愛いから。その下にデニムのパンツ合わせて。スカートは駄目、ひらひらしすぎるから。』

「うんっわかっ、た」

『バッグは入学祝いにお祖父ちゃんにもらったやつ、ほらあたしとお揃いの。アレが合うと思う。それと髪の毛!こないだ送ってあげたピンあるでしょ?ちゃんと整えるのよ?』

「う、んっ!ルリちゃん、ありが、とう!」

その他にもルリは主に叶に対しての注意点をつらつらと上げてから電話を切った。

電話を切ってから廉は慌ててルリが言った通りのコーディネートをして、散らばっていた服の山を片付けた。





ゴールデンウィークが待ち遠しい。






叶と付き合いだしたのは中学に入学した直後からだった。三星学園の中等部は男子部と女子部には分かれていたけれど、小さな頃から互いのことが大好きだったし、一緒にいたかった。だからそれは極自然な流れだった。…ルリは大反対したけれど。

そして中学を卒業するときに、廉から別れを切り出した。

そうすることが一番いいと思ったから。

今思えば、なんて馬鹿な考えだったのだろうと思うけれど。

傷付いて、傷付けて。これ以上泣きたくなくて、これ以上痛い思いをさせたくなくてだから離れて。



でも結局離れるのが一番傷付いて、泣いて、痛かった。



去年のゴールデンウィークに、再び付き合い始めて埼玉と群馬。距離は遠くて寂しかったけれど傍にいた頃よりも気持ちは繋がっている。そんな風に感じた。

互いに部活で忙しくて滅多に逢うことは出来ないけれど、その分叶はマメに連絡を寄越すし、廉も毎日メールを送る。

携帯は遠距離、とまではいかないけれど中距離恋愛を続ける二人にとって強い味方だった。なんたってTV電話も出来るのだ。

だから連絡は頻繁にとっていたけれど。

けれどやはり。





直接逢える方が嬉しい。












早く、早く。

ゴールデンウィークに入るまで廉は毎日そわそわしながら、けれどとても幸せそうに過ごした。








続く。