携帯はキライだ。 繋がらない 発信履歴の一番上を確認して、通話ボタンを押す。 1コール、2コール、3コール。 いつだってどこにいたって声が聞けるはずの便利な携帯電話は、繋がらなければ何の意味もないものにすぎなかった。 電話は繋がらない。 繋がらない距離、空白の時間。 時折、距離と時間に押しつぶされそうになる。 不安で、不安でたまらなくなる。 廉に逢いたい、逢えないならせめて声だけでも聞きたい。 そう思って携帯に手を伸ばすのに、一番繋がっていないときに限って繋がらない。 繋がらない、電話。繋がらない、距離。空白の時間。 廉の声が聞きたいのに、話がしたいのに。 電話は繋がらな、い。 1コール、2コール、3コール。 いつまでたっても無機質なコール音を繰り返す携帯の電源を切って放り出す。 繋がらない携帯に用はない、とばかりに。 叶にとって携帯は廉と連絡を取るために必要なものでしかない。 だから、繋がらない携帯に用はないのだ。 携帯を放り出して、そのままベッドに倒れこんでぼんやりと天井を眺める。 最後に廉に逢ったのはいつだったろう。 最後に廉の声を聞けたのはいつだったろう。 その記憶ですらもう、定かではなくて。 距離が遠い。 逢いたくて、でも逢えなくて。距離が遠くて、繋がらない携帯に寂しさと切なさは益々募る。 こんなに逢いたいのに、声が聞きたいのに。 繋がらない、廉と。 繋がらない。 一番に繋がっていたいのに。 繋がらない。 不安になる。 オレと繋がらない今、この瞬間。 廉は一体何をしているのか、何を見ているのか、何を思っているのか、誰と一緒にいるのか。 廉と繋がらない今、この瞬間。 オレにそれを知る術はなくて、だから不安で不安でたまらない。 携帯はキライだ。 繋がらない距離が不安で、怖くて、そんな臆病な自分がキライだ。 廉と繋がらない携帯なんてキライだ。 |