空の下、貴方を想う。 好き。 その一言が重くて、苦しい。 好きなのに、こんなに好きなのに。 好きだと思うのと同時に、苦しくて。 三月。 埼玉の春は群馬よりも早かった。 三年前までは確かにここで生活していたのに、三年。埼玉を離れていた間にすっかり忘れてしまっていたようだ。 暖かい空気に慣れない。 群馬ではこの時期、まだ肌寒さが残っている。 ここは暖かすぎる。 そう思った。 ここの空気は暖かい。 全てが暖かく、優しく廉を包み込む。 ここでは悪意に満ちた視線も、感情も向けられない。 誰もが優しくて、その空気はほっと安心させた。 けれど。 たった一つ。 足りない。 穏やかな空気は心地いい。けれど、奇妙な違和感がある。 足りないものがある。 その答えは判っている。 修ちゃん。 そう口にすることを戒めたのは自分だった。 投げることが好きで、好きで、大切すぎて、もっともっと大切な人を傷つけた。 投げることが好きだった。 ずっと、ずっと小さな頃から好きだった。 廉の狭い世界には白いボールと、そのボールの向こうにいつも在る大好きな彼の笑顔。 いつの間にかボールを追うことに必死で、その先の笑顔の存在を忘れていた。 そして、投げるということに必死でしがみ付いて。 投げ続けることで大好きな彼の人を傷つけた。 誰よりも大切で、大好きな人を。 ずっと守ってくれていた人を。 ずっと変わらずに笑いかけてくれていた人を。 優しいあの人を、傷つけてた。 己のことしか考えられない自分が恥ずかしい。恥ずかしくて、腹立たしい。 だから。 これ以上、優しいあの人を傷つけないように。 黙って、群馬を離れた。誰にも告げずにひっそりと。 これ以上、優しいあの人を傷つけないように。 久しぶりに感じる埼玉の春は暖かくて、優しくて。 ほろりと涙が零れた。 投げることが好きだ。 投げているときがとても幸せで。 けれど。 投げることがあの人を傷つける。 だから。 遠い空の下。 遠いあの人想って。 ほろりと涙が出た。 「修ちゃん…」 小さな涙声交じりの呟きは誰にも聞きとめられることなく、風に浚われた。 好きなのに、こんなに好きなのに。 決して言ってはいけない言葉、言えない言葉。 伝えてはいけない言葉。 好き。 |