どきどき、する。 廉のことを思うだけでどきどきして、顔が熱くなるのが判る。 失くしてから気付いたって遅いのに。 オレは馬鹿だ。 どきどきする。 高等部に進学して、中等部のときと同じように野球部に入学した。 外部組以外は皆、中等部のときと同じメンバーで大した変化もなく毎日を過ごす。けれど、何かが物足りない。 何が足りないのか。 それは考えるまでもなく、オレは答えを知っている。 廉が、いない。 3年間側にいた、子供の頃からずっと隣にいた。 でも今は、いない。 廉が高等部へは進学せずに、外部受験するのだと初めて聞いたとき。 哀しい、寂しいという気持ちよりもほっとした気持ちの方が強かった。 ほっとした安心の気持ちの意味は、これ以上廉が他の奴等に傷付けられることがないんだという思いともう一つ。 これでオレがマウンドに立てるんだという思い。 いや、むしろオレがという気持ちの方が強かった。 廉が傷付いていることも、皆に認めてもらうためにとても努力していたことも、それでも認められずに泣いていたことも、知っていた。 だけど。 努力していたのは廉だけじゃない。 オレだって。 いつか、廉に勝ってやる。そう思って、ずっと努力してた。 オレだって。 マウンドに立って、一番を背負って、エースで在りたかった。 だから、本音を言えば。ほっとしたとかそんなんじゃなくオレは、嬉しかったんだ。 廉がいなくなれば、マウンドに立てるのはオレだ。 そう思って、嬉しかった。 それなのに。 いざ、隣に廉がいなくなって。廉が立っていたマウンドに立ってみれば嬉しさと同時に込み上げてくる感情。 心の中にぽっかりと何かが空いているような、切ない、寂しい気持ち。 あんなにマウンドに立つことを望んでいたのに、マウンドに立てることがこんなに嬉しいと思うのに。 それ以上に、寂しいだなんて。 廉がいない、もう側にいない、もう一緒のチームじゃない。 そう思っただけで胸が潰れそうに軋んだ。 廉の隣はオレ。オレの隣は廉。それが定位置だった。けれど、廉はもういない。 ズキンと胸が痛んだ。 そうしてオレはようやく、気付いたんだ。 廉のことが好きだ。 今更気付いたって全ては遅い。 オレは馬鹿だ。 もう廉はオレの隣にはいない、だけど。 それでも廉のことが好きだ。 |