泣いている廉を見たら衝動的に躰が動いていた。










君の笑顔も泣き顔も











廉の様子がおかしい。そう思った。

あの試合のあとなんとか廉の携帯番号とメールアドレスを聞き出した。そう頻繁だったわけではなかったけれど週に何度かメールを交わし、たまには電話もしていた。

昔のように、というようにではなかったけれど、それでも回数を重ねていくにつれ廉は少しづつではあったけれど、硬くなっていた態度を次第に軟化させていって叶はそれが嬉しかった。

そんなやり取りが一月近く続いただろうか。

廉からメールの返信がこなくなった。

初めはただ忙しいだけなのかと思った。ただ練習に疲れて寝入ってしまっているだけなのだと。

何度か返信が来ないことが続き、直接電話をした。携帯と自宅の両方に。

けれど何度かけても廉には繋がらずに、ようやくオレはおかしいと気付いた。

もしかしたら避けられているのかもしれない、そんな考えがほんの少し頭をよぎったけれど、どう考えても避けられる理由が判らずに連絡の取れない廉へと苛立ちを募らせた。





どうしようもない苛立ちを募らせていたある日。

食事中、母親から廉が遊びにくるらしいと聞いた。慌てて三橋に確認を取ると、渋々ながら金曜の午後から、廉が本当に群馬に来ると教えてくれた。

西浦もテスト期間らしく部活がないから日曜までは滞在するということも。

話をしたかった。

何故避けるのか。

心配だった。

またつまらないことでぐるぐる考え込んでしまっているんじゃないかと。


なによりも、逢いたいと強く思った。




テスト期間中は部活も禁止で昼前には帰宅し、勉強もせずに廉が来るのを今か今かと待ち構えていた。

家の中に入ったらきっと三橋に捕まって話をするどころじゃないだろう、その前にどうしても。

話がしたいと思った、廉の顔を見たかった。

どれくらい待っただろうか。見慣れた車が見えたとき、あたりはすっかり茜色に染まり始めていた。

慌てて家の外に出て、夢中で叫んだ。廉はよほど驚いたのか大きく口を開いていた。

「か、かの…」

廉がオレの名を言う前に。

「なんで電話にもメールにも返事しないんだよっ!!」

怒鳴ってしまっていた。

だって、会いたかった。声を聞きたかった。話をしたかった。笑顔が見たかった。


オレが怒鳴った瞬間、廉は泣き出した。あっという間に涙が溜まり、廉の頬を伝う。ぼろぼろと泣く廉は昔と同じ泣き顔で、なんだか懐かしくて、それでも泣かせたいわけではなくて。

泣くなと言っても、涙は止まらずに、指で拭っても涙は止まらずに。

ぼろぼろと泣く廉の顔を見ていたら、衝動的に。





躰が動いていた。





「廉」








名を呼んで、頬に唇を寄せて伝う涙を舐めとった。

なんでそんなことをしたのか。理由なんて判らない。

ただ。

泣いている廉を見たら、衝動的に躰が動いていた。

そうするのが当然のように、何の違和感も何もなく。

舌先で触れた廉の頬は柔らかかった。

涙はしょっぱく、苦いようなそんな気がした。








泣き顔を見たいんじゃない。

廉には、ずっと笑顔でいてほしかった。

この気持ちが何なのかは知らない。

だけど。






廉には、ずっと笑顔でいてほしい。

泣き顔も可愛いけれど。

笑っていて、ほしい。