廉とは滅多に逢うことが出来ない。


群馬と埼玉、そう遠い距離ではないけれど距離の問題ではなく、ただ単に休みが合わないのだ。

オレも廉も部活が休みなんてこと滅多になくて、たまに休みがあったとしても大抵はどっちかだけ。

だから、三橋ん家で法事があって廉が部活を休んでこっちに来るなんて滅多になくて、こんな風にゆっくり逢えることは滅多にない。

それなのにーーー。









きみがすき









「阿部くんはスゴい、んだよ!」

キラキラした目で廉は嬉しそうに阿部のことばかりを話す。折角久しぶりに逢えたというのに廉はずっとこの調子で、初めは西浦で楽しくやっているんだと安心したけれど、こうも他の男のことばかり聞かされては面白いわけがなかった。

廉はそんなオレの様子に気付きもしないでずっと喋り続けている。

廉の唇は忙しなく動き続けて、ふとその唇を塞いでしまいたいと思った。



頭をよぎった考えに従い、そのままにゆっくりと喋り続ける廉に近づいて、廉に口付けた。

廉は驚いて、唇が触れ合ったすぐ後に何か言おうとしたけれど、しっかりと唇を塞いでそれを許さない。

触れた唇はカサついて微かに荒れていた。それでも久しぶりに触れた感触は心地よくて、長くその触れていたいと思ったけれど顔を真っ赤にして息苦しそうな表情を浮かべる廉がかわいそうで、可愛くて。

名残惜しげにペロリと唇を舐めてからゆっくりと離れた。

「いつまでたっても慣れねーのな」

いたずらっ子のように笑ってそう言うと廉は泣きだしてしまいそうな顔になる。

「だって…は、恥ずかしい…っ」

…こんな可愛い顔でこんなことを言うのは反則だと思う。

あんまり廉が可愛いから、ついいじめてやりたくなった。

廉が逃げ出さないようにがっしりと肩を押さえつける。

「し、修ちゃん…っ?」

不安そうな声で上げたけれどあえて無視して、Tシャツからのぞく廉の白い首筋に唇を寄せてきつく吸い上げた。

「しゅ、っ!」

何秒か置いて唇を離すと、吸った部分が鮮やかに色付いていた。もともと色が白いだけに目立つその痕は暫らくは消えないだろう。

きっと阿部は目ざとくすぐに気付くのだろう。

そして、きっと。

この紅い、紅い痕の意味が判るだろう。

これは、証だ。

廉が、オレのものだっていう。

阿部がどんなにすごいキャッチャーで、どんなに廉に尊敬されていたって廉にこんなことを出来るのはオレだけなんだという牽制の意味を込めた、証。

「あ、ごめん。痕ついちゃった」

悪びれなしに軽く謝ると、たちまち廉の目に涙が溜まる。

「こ、こまる…よっ!こんなとこ、か、隠れないよ…っ」

「大丈夫、大丈夫。虫刺されって言っとけばバレないって」

まぁ、阿部がどんな虫だと思うかまでは保証出来ないけれど。

廉は未だに困った顔で、目に涙をいっぱいに溜めて今にも零れてしまいそうだ。

あんまり困った顔をしているから、額に優しくキスを落としてにっこりと笑いかける。

「ごめんな?好きだよ、廉」

途端に、笑顔になった。困った顔だけれど、さっきまでの表情とは違う。心から嬉しそうな、安心した顔。

「お、おおお、オレも…修ちゃんがす、きだよ」
















きっと、今。

廉の思考を占めてるのはオレだけ。

きっと、今。

廉はさっきまで話してた阿部のことなんて一切考えていないだろう。

それでいい。

廉はオレのもの、オレも廉のもの。