放っておいたら、いつまでたってもいつまでたっても変に遠慮して連絡なんてしようとしないだろうということを予想して、最低でも週に一度。

必ず電話をするという約束をした。

子供の頃のようにげんまんをして、照れながらも廉は嬉しそうに笑った。それは、オレの気のせいではないはず。









call you











その約束をして以来、週に一度。金曜の夜に掛かってくる廉からの電話は何よりも待ち遠しいものだった。それは10分、15分程度の短い時間ではあったけれど、それでもオレにとっては何よりも大切な、大切な時間だった。





「でね、阿部君がね…」

何よりも大切な廉との穏やかな時間。

不意に廉が口にした名を耳にした途端に、大切なものを壊されたようなそんな気がした。

電話越しで、嬉しそうに、楽しそうに話す廉。折角オレと話をしているというのに、廉の口から零れるのは阿部のことばかりでそれを聞くたびにどんどん気持ちが冷めていくのがよく判った。


「―――廉は本当に阿部のことが好きなんだ?」

冷めていく気持ちとは裏腹に口から出た言葉は驚くほどに穏やかだった。

「うん?す、きだよ。あ、阿部君はすごいんだよっ!」

「へぇ?」

「あ、べくんみたいなすごい人が、お、オレのこと認めてくれたんだ。だからオレもが、頑張る!」

本当に、心から嬉しそうな廉の弾んだ声。それが、堪らなく悔しくて…こんなことを言ったら廉を困らせるだけだと判ってはいたけれど。

思わず声にしてしまった想い。

「そんなに、阿部が好き?」

「…え?」

「そんなに…オレのことよりも阿部が好き?」

「しゅ…かの、くん?」

こんなこと言ったら廉は困るだけだ、こんな子供染みた馬鹿げた独占欲なんて廉に知られたくないはずなのに。

そう頭で理解していても感情がついていかない。





廉が好きだ、誰よりも誰よりも。

オレの、大切な廉。

オレ以外の誰かなんて見ないで。





こんな汚い、独りよがりな感情は廉には相応しくない。判ってるのに。

あんな風に廉に大切に思われる阿部が憎らしくて堪らない。









「修ちゃんがいちばん、だよ?」

「え…」

「オレのいちばんはずっと、ずっと修ちゃんだよ。修ちゃんはずっとオレのエースだよ」

暖かな、じんわりと染み入るような廉の言葉。

「…オレも、廉が一番だよ。廉のこと、大好きだ」

ずっと、変わらないただ一つの想い。

「う、うひ…お、オレも修ちゃんがだいすき」

電話越しに判る、照れてるときの廉の声。

あんなに阿部に嫉妬していた気持ちが嘘のように落ち着いていく。

現金な自分に呆れる。

あんなにささくれだっていた気持ちが、廉のたった一言で凪いだ海のように穏やかに、落ち着いていく。

「…逢いたいな」

「う、お…お、オレもっ!」




逢いたい、なんで群馬と埼玉はこんなに遠いのだろう。今すぐにでも逢いたい、逢って抱きしめて、キスをして。

群馬と埼玉、一度は納得したはずの距離だけど今日はどうしても。

今すぐに、逢い行けたらいいのに。

そうしたら、ずっと抱きしめて離さないのに。

けれど、どうしようもないから。

だから、次に逢うときはまず抱きしめて、それからキスをしよう。

電話越しに切なく廉の存在を感じながら強くそう思った。