一期一会









それは、最初で最後の夜。









三橋が埼玉は戻る前夜、オレたちは一緒に過ごした。とりとめのない話をして何をするわけでもなく一緒にいた。

そうして口付けたのはどちらが先だったか。覚えていないけれど、オレたちはまるでそうするのがとても自然なことのようにゆっくりと静かに抱き合った。

触れ合うだけの軽い口付けを何度も何度も交わして、幾度目かから深く、深く。

互いの唾液が交じりあい、唇から零れて顎を伝う。息苦しいのか、それとも恥ずかしいのか。三橋は頬を赤く染めて、潤んだ目でオレを見た。それはひどく扇情的で、視覚からオレを興奮させるに十分だった。

無意識にゴクリと喉を鳴らし、

「いいか」

と尋ねると、三橋は微かに震えながらも小さく頷いた。







触れた躰は女とは違う、少し筋肉質な自分と同じ男の躰。

触れた瞬間僅かに震えたけれど、三橋はオレの手から逃れることなく大人しくオレの腕の中に納まって。

口付けをゆっくりと、額から唇へ、頬へ、耳元へ、首筋へ、胸元へと降らす。

唇が、三橋に触れるたびに三橋はピクリと躰を揺らす。触れた唇が、指先がじんじんと痺れるそんな気がした。

震えるのは三橋だけでなく、ぎこちなく触れるオレの指も震える。

三橋に触れるたびに鼓動が、どきどきと。あまりに緊張して、どきどきして眩暈がしそう。

「三橋…、三橋…」

このままずっと、ずっと一緒にいられたらいいのに。一つになれたら、とてもとても幸せなのに。

子供染みた馬鹿な考えだと判ってはいても、そう思ってしまうのを止められない。

ずっと、一緒にいたかった。

ずっと一緒だと思ってた。













―――だけど、俺たちはもう子供の頃のままじゃいられないから。


だから。


これは再生の儀式。


求め合って、触れ合うのはこれが最初で最後。


二人で過ごすのは今夜が最後。


口付けて、抱きあって、想いを…互いの存在を確認し合って。


こんなにも深く、強く…探りあうように抱き合って向かい合うのは。


これで最後。







最初で、最後の。

ただ、一度だけの逢瀬。

これで最後、だから決して詞にはしないけれど。









愛してるよ、廉。