廉はオレにとって唯一で、一番で、特別だった。


廉にとってオレは絶対で、一番で、特別だった。






唯一、大切な幼馴染み。

同い年だけれど、泣き虫で弱虫な廉はオレにとって弟のような存在で、きっと廉にとってもオレは頼りになる、信頼出来る兄のような存在だったんだろう。

廉はオレの言うことならなんだって信じて疑うことなど知らずに、オレの言うこと、することは全てが廉に取って絶対。















幼馴染み















廉は何処までもお人好しで純粋で真っすぐだった。



こんな風に誰もいない家に二人きりで、オレの部屋のベッドの上に押し倒されて、組み敷かれているというのに尚、状況が理解出来ていないのか不思議そうに自分の顔のすぐ上にあるオレの顔を覗き込んでいた。

「修ちゃ?」

昔から変わらずに寄せられる無条件での信頼。



廉から寄せられる、この真っすぐな視線を重たく感じるようになったのはいつからだったろう。


廉の目にオレはあくまでも幼馴染みの、頼れる『修ちゃん』なんだとその事実が痛く、心に突き刺さるようになったのは一体いつからだったろう。



廉は疑わない。

オレのすることを決して疑ったりしない。

廉の手首を押さえつけていた掌をゆっくりと移動させて廉の頬を撫でる。

すべすべとした肌の感触は存外に心地よく、掌に馴染む。

何も言わずに頬を撫でる。こんな風に触れても、廉はそれが普通なのだと疑わない。

廉に触れているのが『オレ』だから。



廉から寄せられる信頼が、重い。

オレが、オレが廉に抱いてる感情はもう『幼馴染み』なんかじゃ測れない。もう、『幼馴染み』なんかじゃ我慢出来ないのに。

それなのに、廉の目に映るオレは変わらずに『幼馴染み』のままなのだ。








指先でゆっくりと廉の唇に触れた。

その柔らかな感触に指先が甘く痺れる、そんな気がした。

「修ちゃん…?」

廉の、疑いも、怯えも、何もない真っすぐな目がオレを捕らえる。『幼馴染み』としてのオレを。



「しゅう、ちゃ…?」



まだだ。

まだ、足りない。


もっと、もっと――――…。





もっと怯えればいい。疑えばいい。

もっと、オレを警戒すればいいんだ。

そうしなければ、そうならなければオレはこのまま。ずっとココから先へは進めない。




『幼馴染み』としての立場から、動けやしないんだ。












「廉」

一呼吸置いて、廉の名を呼んでそれからまた強く手首を押さえつけた。

「っぃ、た…」

廉は痛みに顔を歪めたけれど。わざとそれを無視した。

いい加減、いつもと様子が違うということに気が付いたのか廉の顔に一瞬。

ほんの一瞬、僅かな怯えが見えた。

それを見逃さずに。






「廉」






名を呼んで、返事を待たずにキスをした。

無理やり押さえつけて、廉のことなど思いやらずに傲慢な自分勝手な口付けを。

舌先を捻じ込み、怯え、口膣内で逃げようとする廉の舌を絡め取り嫌がるのを無理やりに蹂躙した。







それはとても長い間のように感じたけれど、実際はほんの一瞬だったのかもしれない。

無我夢中で覚えていないけれど、がりっと舌を噛まれて口の中に苦い、鉄の味が広がってオレはようやく廉の唇を解放した。

見れば廉はぼろぼろと涙を零していた。唇に微かにオレのだろう血が付いている。




「しゅ、ちゃ…っ?」




それは初めて見るオレに怯えた廉。


―――それでいい、それでいいんだ。















オレを信用しないで、信じすぎないで。


その信頼を。


壊さなければ、オレは。





一歩もココから先へ進めない。

お前に、好きだなんて言えやしないんだ。

















「――――好きだよ、廉のこと」



もう、幼馴染みじゃいられない。