着信有り。







大きな深呼吸を一回、二回と何度か繰り返してゆっくりと携帯のプッシュボタンを押す。

プルプルと携帯を持つ手が震えて、結局今日もまた廉は最後までボタンを押せずにいた。















三星学園との練習試合の後に、叶と携帯番号とメールアドレスの交換をした。

それが嬉しくて、交換をしたときに『電話をする』と約束をした。

けれど。

廉は未だ、一度も電話を掛けられずにいる。

毎日、毎日。

途中までは携帯を操作する。けれども結局毎日最後までは出来ないままに終わっているのだ。

電話をしたくないわけではない、むしろ毎日だって電話したい。離れた距離の分だけ、その距離を埋めるためなら話したい。

それは間違いない、廉の素直な気持ち。

けれどもし。

もしも、迷惑だと言われたら?

拒絶されるのが怖い。

そうした考えがあるのも事実。

今一歩の勇気が足りないんじゃなく、怖いのだ。

叶に、嫌われるのが。

叶に、拒絶されるのが。

和解して、叶が廉を認めていてくれていると知ってもそれでも尚、消えない廉の中に燻ぶる叶への負い目が廉を堪らなく不安にさせる。

それ故に、自分から連絡することが出来ない。





勿論、叶から連絡がないわけではなかった。この一週間で二度、携帯に着信があった。

一度目は試合当日。

けれどその日はただ眠ってしまっていて、着信に気がついたのは翌日だった。

二度目は三日前。

履歴に残った時間から考えて練習が終わってすぐにかけてくれたのだろう。

けれどその日はグラウンドの整備にいつもよりも更に時間を食ってしまっていて、着信に気がついたのは帰宅してからだった。

どちらも掛け直すには時間が経ちすぎていて、散々悩んでいるうちに掛け直すことが出来なかった。





そうこうしている内に、あの日から一週間が経ってしまった。

そうして今日もまた。

指が震えて、最後まで押すことが出来ずに結局ボタン操作一つを残して携帯をベッドの上へ投げ出してしまう。

大きく大きく溜息をついて、そのままベッドに転がる。



―――自分の小心さに我ながら呆れる。
…もしかしたら、叶君はもうオレのことなんか忘れてるかもしれない。



そんな考えが頭の中をぐるぐる回って、そのままうとうとと瞼が重くなってきた。

その時。

ぶるぶると携帯が震えた。

慌てて飛び起きて、着信画面を確認するとそこには間違いなく『かのうくん』とあった。

思わず、握り締めたばかりの携帯を取り落としそうになる。

もしかして、怒られるのかもしれない。何で連絡つかなかったんだ!って。
どうしよう、どうしよう。

そう思っても。

声が聞ける、喋れる。

それだけで嬉しくて、少し躊躇いがちに通話ボタンを押した。

「も、もしもし…?」

『あ、三橋?オレオレー』


じんわりと、心が温かくなるのを感じた。

今まで怯えていたのが嘘のように。

機械越し伝わってきたのは、変わらない優しい声。















もっと早く。

自分から連絡すればよかった。