さよなら空








「三橋っ!」




バタバタと大きな音を立てて廊下を走る音が近づいてきてガラッと教室の扉が開いた。

「か、叶君…」

息を切らせて飛び込んできたのは叶だった。

「お前、高等部に行かないって…埼玉の高校に行くって本当かよっ?!」

とても焦ったような、辛そうな様子でそう捲くし立てるとそのまま三橋の肩を掴み更に言葉を続ける。

「なんで…、なんでだよっ?!」

叶のそんな辛そうな顔が三橋には辛かった。

叶がこう反応してくるかもしれないとは考えてはいたものの直接こんな様子の叶を見るのは胸が痛んだ。

けれど。

「今までごめんね…」

このまま、ここにいてはいけないから。

そう決心したときに、疵付かなかったわけではない。

悩んで悩んで悩んだ。

どうするべきか考えに考えた結果が外部進学という道だった。

このまま、三星学園にいてお情けで貰うエースの座にはいられないと思った。

このまま、三星学園にい続けて彼から…叶からエースの座を奪い続けるのはどうしても出来ない、許されないそう思った。

本当ならもっと早く、こうしておけばよかったのかもしれない。


だから。

離れようと思った。

このチームで野球がしたかった、叶と一緒に野球をしていたかった。

けれど。

それは自分の我侭でしかないと判っていたから。

「高校は実家から通えるんだ…、だから。…卒業式が終わったらすぐ埼玉に帰るんだ」







笑顔で、別れようと決めていた。

彼が、叶が引き止めてくれるだろうことは判っていたから。

彼は優しいから、幼馴染のオレを見放すことが出来ないくらいに優しい人だから。

だから。

彼が疵付くことがないように、彼が三橋のことを気にすることがないように。

だから。

笑顔でいよう。笑顔でさよならを言おう。

そう決めてた。


「今まで、ありがとう。…元気で、さよなら」

「三橋…」










上手く笑えたのか判らない、だけど。

涙は流さなかった。

でもやっぱり上手く笑えなかったのかもしれない。

だって、修ちゃんが今にも泣き出してしまいそうな顔をしてたから。

今までごめんなさい。

そんな顔させてごめんなさい。

傷つけてごめんなさい。

けど、これからは。

一番は修ちゃんのものだから。

だから。

離れるのは辛いけれど。

野球がしたい、けれどオレがここで野球を続けるわけにはいかないから。

マウンドに、あの空の下にいてはいけないから。

だから。
















「さよなら」