011:現在













「そして三年前、貴女と約束を交わしました。」



その約束故に、シュウゴは危険を承知で祖国へ戻った。
それは王位継承権が消失する僅か前のこと。

予想通りに内乱が続き、シュウゴが玉座に就くことが出来たのは国に戻って一年が過ぎてからだった。




「内戦が続く間に、継母と異母弟を亡くしました…。」



そこまで話して、シュウゴはそっと瞳を閉じた。
そして瞳を閉じたまま口を開く。


「私の家族はもう、貴女だけです。」


ぽつりと力なく呟いて、レンの腰に回した手に力が込められる。


レンの肩口に顔を埋めているせいで表情を読み取ることは出来ないけれど、声だけでとても辛そうに言っているのがよく判る。


シュウゴが辛いと自分まで辛くて、きりきりと胸が痛んだ。


シュウゴの背に手を回してぎゅっと抱き締める。
自分には想像もつかないような過酷な人生を歩んできたシュウゴに何て言っていいのか判らない。けれど、何もしないではいられなかった。ただ衝動のままにシュウゴの夜着を握る手に力をこめる。




言わせてはいけないことをシュウゴに言わせてしまった気がして仕方なかった。
辛そうに過去のことを話すシュウゴが愛しくて、そして辛くて、どうしようもなく抱き締めたいと思った。

そっと、それでも力強くシュウゴを抱き締めて一人ではないのだと教えてあげたかった。自分が傍にいる、シュウゴは一人ではない、だから。



一人で抱え込まないでほしい。



けれど、その言葉を軽々しく口にしてはいけないと判っていたから。
シュウゴが辛酸を舐めている間ずっと、優しい世界だけで生きてきた自分にはその資格がないのだと判っていたから。

レンは静かにシュウゴを抱き締めた。


「傍に、いる…。これからずっと、シュウちゃんといっしょに…傍にいる、から…。」

そう言うのが限界だったけれど、シュウゴはレンの言葉を聞いて一瞬顔を歪めて。それでも次の瞬間には僅かに微笑んだ。

「…ずっと隠していたことを、許して頂けるのでしょうか。私の傍らにずっと、寄り添って頂けるのでしょうか。」

「許すも許さないもな、い。だって王の隣のいるのは王妃の務め、でしょう?」

微笑みながらそう囁くレンの声はどこまで柔らかく、その笑顔はどこまでも優しかった。

―――心から、愛おしい。
レンを抱き締めながら、そう想った。
レンを愛している。
あぁ、自分は。
今、この瞬間のために生き永らえたのだ。


「シュウちゃんのこと、好きです。」
「私も、愛しています。」



そっと唇を重ねたときに頬に涙が伝った。

それは一体どちらの涙だったかわからない、ただ二人の気持ちは一つだった。