009:告白












ゆらりと。


空気が揺れた気がした。

瞬間、身体が小さく揺れる。

窓から入る凪いだ風が、軽く身体の上をなぞってゆく。


レンはゆっくりと振り返った。



「しゅ、ちゃ…?」



そこにいたのは間違いなく、レンの待ち人。


けれど。


違和感を感じる。そこにいるのは確かにシュウゴなのに、付きまとう奇妙な違和感。



違和感の正体は。



シュウゴの纏う衣装は、アスガルト王国風の夜着でその色は。この国で唯一人にしか着ることの許されない禁色。

王家所有の荘園で、特別に染め上げられるとされている黄色。その色は他のどんな染料を持ってしても決して作ることの出来ない色。


「ど、して…っ」


驚きの余りに声が震えるのが自分でもよく判った。



この国でその色を許されているのは唯一人だけ。

それが誰かだなんて、レンだって知っている。


それは国王のみに許された高貴な。

他の誰も、着ることの出来ない禁色。



「どうして…っ!」



レンの、乾いた声が小さく部屋に響く。



どうして、シュウゴがその色を着ているんだろう。

どうして、夜着のままこの部屋を訪れることが出来たのだろう。


この二つのことだけがレンの頭の中を忙しく、ぐるぐると回っている。理解、出来ない。


シュウゴはそんなレンに困ったような微笑を浮かべてそっと手を伸ばした。
ぴくんとレンの肩が揺れて、レンはぎゅっと目を瞑り俯く。


シュウゴの腕がゆっくりと伸びて、華奢なレンの身体を抱き締める。夜着姿のレンの身体はカタカタと震えていた。


「どうして、…どうして…っ?」

「…ずっと姫様に隠していたことはお詫び致します。」




シュウゴが纏っていたものは国王のみに許された禁色。
シュウゴは、この国で唯一人以外許されないその禁色を身に纏って現われた。つまり、それは。



シュウゴがこの国の王であることの証。



震えながら『どうして』そう呟き続けるレンにシュウゴはそっと。

「全てが終わりました…。ようやく貴方を妃として迎えることができるようになったのです。」



小さく囁いた。


己の妃となった少女の小さな「どうして」という呟きを耳にしながら、王は苦しそうな笑顔を見せた。






「…長い、話を致しましょう。」



「はな、し?」



「何故国を離れて騎士として旅をしていたのか、どうして隠していたのか。…話せないこともたくさんあります。全てを話すわけではありません、それでも貴方には聞いてほしい。こんなのは私の我侭かもしれません、ですが貴方には知っていてほしいのです。」




そうして王は、苦しそうに口を開き、ゆっくりと語りだした。