002:出逢い








学士が部屋から出て行くのと当時に二人は駆け出した。

退屈な授業も、終わった後の楽しみを考えると真面目に取り組めるもので二人はいつになく真面目に学士の講義を受け、いつにない二人の様子に学士は喜びいつもは説教のために長引いてしまう講義も珍しく定刻通りに終えることが出来た。


「しゅうーちゃんっ!」

「待ってよ、レン!」


息を切らしながら二人でシュウゴが王宮に在中する間与えられている部屋に飛び込むとシュウゴはそんな二人の様子に笑みを零しながら出迎えた。


そろそろ二人がやってくる時間だろうと女官に支度を頼んだお茶と菓子をテーブルに用意し終えたところで二人がやってきたのだ。まるで見計らったかのようなタイミングに思わず笑ってしまった。


お菓子を口いっぱいに頬張りながら、二人はわくわくした表情でシュウゴの話を聞いた。聞いたこともない、様々な国の話。旅の途中でのトラブルや冒険劇、それは笑ってしまったりハラハラしたり。二人を楽しませるに充分のものだった。


「しゅうちゃん、今度はいつまでいられるの?」


一通りの話を聞き終えて、お菓子もなくなった頃にレンがぼそりつ呟いた。


シュウゴは国から国へと渡り歩く旅の騎士だ。

本来ならばこんな風に王宮に留まることはない。

イシュタットの王宮に留まるのは他でもない、レンがいるからだった。





小国とはいえ一国の総領姫と、流浪の騎士。

きっかけは湖だった。



普段は決して王宮の外へ出ることが叶わない王女二人、その日は国王に連れられて湖で舟遊びを楽しんでいた。滅多に出来ない体験に二人ははしゃいでいた。

ほんの一瞬、舟が揺れてバランスを崩した。そのまま、レンが湖に落ちてしまった。

泳ぎなどしたことのないレン、そして海とは違い湖では本人が泳がない限り人体が浮くことはない。


運の悪いことに、その日に限って従者は女官ばかりで数人の兵達は皆国王の傍に控えていたために、助けに入るには遠すぎた。

国王の怒声とルリや女官達の悲鳴が飛び交う中、見慣れない人影が湖へと飛び込んだ。


それがシュウゴだった。


助け上げられたレンは多少水を飲み込んで咽てはいたものの、生命に別状はなく一同を安心させシュウゴはそのまま国王からたっての望みで王宮へと招かれた。


それ以来、シュウゴはイシュタットに立ち寄るたびに王宮へと招かれていた。
国王からは信頼を寄せられ、レンにはまるで兄のように慕われてシュウゴはイシュタット王家にとって大事な客人となった。





「そうですね、十日後には発とうと思っております。その後はしばらく、こちらに立ち寄ることが出来なくなると思います。」


シュウゴの応えにレンはあからさまにがっかりとした様子でがっくりと肩を落とした。
が、次の瞬間には何か思いついたようにシュウゴを見上げる。


「で、も!それなら明後日の宴には出てくれる、よね?」


シュウゴは極力目立たないようにと、これまでにも何度か王宮での宴に誘われたが『自分はそのような立場のものではないから』と全て断っていた。

けれど、今回は滞在期間が短いこと。それから騎士として、この王宮に訪れるのはきっとこれが最後になるであろうこと。…断ってしまったらこの小さな王女はきっと泣き出してしまうだろうことからレンの言葉に控え目に頷いた。


それに、その宴はレンの誕生日を祝う特別なものだったから。


「しゅうちゃ、ん!一曲でいいから踊って、ね。」
「…私でよろしければ、喜んで。」


えへへ、と嬉しそうに笑うレンはとても可愛らしかった。