「きれいな髪だね」

初めて出逢ったときに言われた言葉。
世辞も、媚もない真っすぐな瞳での素直な言葉。

母様譲りの黒い髪。
ブリタニアでは珍しい、濃い色の。
母様がよく緑の黒髪ねと言って褒めてくれた、梳いてくれた。
母様と同じ、黒い髪を。

母様と同じなのは嬉しかったし、誇らしかった。
綺麗な、優しい母様は自慢だったから。
けれどその髪を褒めてくれたのは母様とナナリーだけだった。


だから。


真っすぐな瞳で見つめられて、褒められたのがとても嬉しかった。
とても、とても嬉しかった。


だから。


スザクにはずっと傍にいてほしかった。
ずっと一緒にいてほしかった。


だから。


いつか、自分の手でナナリーを守りきれなかったとき。
いつか、ナナリーの傍にいられなくなってしまったとき。
スザクにナナリーを守ってほしかった。
スザクにナナリーの騎士となってほしかった。


けれど、その願いはもう決して叶わない。


スザクはもう手の届かないところへいってしまった。




もう二度と。









いつも、いつも。
たいせつなものは。
たいせつになればなるほど。
するりとこのてのなかからこぼれおちてしまうんだ。



こぼれおちるもの