私のクローンがこんなに可愛いはずがない
2011/07/23 Sat
m25
クローンゼロの荒い呼吸と衣擦れの音が部屋に響き、時折オリジナルゼロが低い声で笑う。
「―――ッ…はっ…」
ギリギリと極められる腕は血流が滞り、既にぴくりとも動かない。
常人であれば痛みの余り気を失ったとしても不思議はないが、ここでもクローンゼロの矜持が邪魔をした。
このまま意識を保っている方が、いたずらにオリジナルゼロを悦ばせるだけだと理解している一方で、一時とはいえ力で負ける姿を晒す気にはなれなかった。
クローンゼロの理性的な部分が、気絶するほうが利口だと囁いてくるのを意思の力で跳ね除ける。
「…は、……くッ」
鍛えているとはいえ、同等の実力者に何の加減もなく拘束されると、呼気が乱れる。
苦痛を孕む呼吸は無様な風音となってクローンゼロの耳を嬲った。
身動き一つ取れない己を叱咤する以上に、寛げたクローンゼロの首筋を辿る舌を罵倒したかった。
舌はまるで獲物を味わう蛇のように筋を辿ると、浮かぶ冷や汗を丁寧に舐めて動脈に歯列を立てる。
急所に立てられた犬歯は甘噛みというには強く、命を奪うには弱い力で噛みつき、屈辱の痕を残していく。
せめてもの抵抗の証として、その行為を嫌がるように首を振ると不意に何かがクローンゼロの頬に当たった。
「―――あぁ、こら。折角運んできたのに、潰れてしまうぞ?」
霞む視界に入ってきたのはぼやけた白ばかりで何か分からなかったが、茶化すようなオリジナルゼロの言葉でそれがクローンゼロが運んできたケーキの箱なのだと理解した。
こんなものさえ無ければこんな目に遭うことはなかったのだと思えば、八つ当たりだと分かっていながら白い箱を睨みつける。
すると、今まで決して止まることのなかった手が不意にクローンゼロから離れた。
「……」
クローンゼロがどれほど罵倒しようが抵抗しようがお構いなしで、常にしたいようにするオリジナルゼロの珍しい行動に安堵よりも壮絶な怖気が湧いた。
無論、行為を中断する気だというのなら万々歳だ。多少熱を持った身体の自己処理くらいで済むなら安いものだと思う。
けれど、これで終わるとは到底思えない。そう思うには、クローンゼロはオリジナルゼロの性格を知り過ぎている。
これから何が起こるのか、先の展開が全く読めず、クローンゼロの頬を冷たい汗が伝う。
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