私のクローンがこんなに可愛いはずがない
2011/07/23 Sat
m25
数日前には粉砕した扉も、ネスツの科学力に掛かれば短時間で復元可能だ。
他に類を見ない科学力を野試合の後始末に使うべきものではないとは思うものの、言い出したら聞かないのがイグニスでありイグのんだ。
正論を振りかざすのは随分前に諦めている。
「…おい、あの小娘は何処だ」
オリジナルゼロの執務室を訪れたクローンゼロは、大量の書類に追われている同僚に問いかけた。
出戻ってからというものイグのんはオリジナルゼロ付近をテリトリーと定めたらしく、日中はその執務室に閉じこもっているのが常だった。
それ故に、ネスツ内にあるイグのんの私室ではなく、わざわざオリジナルゼロの執務室まで足を運んだと言うのに、室内の何処にも少女の姿はない。
こうしている間にも、クローンゼロの執務室には決済を待つ書類が溢れていくのだ。ゆっくりとはしていられない。
クローンゼロの苛立ちに気づいているのかいないのか、今まで書類に目を向けていたオリジナルゼロはちらり、と視線を上げて見せる。
「イグのん様ならお出掛けになったぞ」
「―――チッ…いいご身分だ」
別段、イグのん自身がクローンゼロに運搬を命じたわけではないのだが、毎日大量に贈られてくる貢物を知っているはずなのだ。
それを送り主から直接受け取らないのなら、せめてクローンゼロが運んだものを受け取るくらいはしても良いだろうに。
トーナメント出場くらいしか能のない小娘とは違って、こちらはいつも、いつでも忙しいのだ。
思わず手にした大量の箱を握り潰したくなるも、潰したらそれこそ処理が面倒だと済んでのところで思い留まる。
「しかし凄い匂いだな」
オリジナルゼロの視線が手元に集中しているのを感じて、クローンゼロは心中でもう一度舌打ちを漏らした。
体よく使われているのはお互い様だとはいえ、唯々諾々と運搬をしている姿は見られて楽しいものではない。
自然、吐く言葉には棘と毒が混じっていく。
「私ではなくあの小娘に言え。面倒でかなわん」
「まさかお前が買ったのか?」
オリジナルゼロの意外そうな言葉を聴きながら、クローンゼロは嫌そうに眉根を寄せる。
いい年をした中年が、忙しい仕事の合間を縫って洋菓子を買いに走らされるなどそれこそ、『まさか』だ。
[7] << [9] >>
-
-
<< オーバーヒート
【目次】その他色々 >>
[0] [top]