QLOOK?A?N?Z?X????

四物語

2010/09/02 Thu
m25


そんな中に、何者かが侵入した。

―――…本当に?

「正直、嫌な予感は尽きませんでしたよ」

それでもオズワルドが部屋に戻って仕事を再開したのは、何の気配も感じなかったからだった。
一線を退いたとはいえ、かつて名うての暗殺者であったオズワルドの察知能力は健在である。
身体の老いを認めないわけにはいかないが、感覚機能はその限りではない。その自負がオズワルドにはあった。
気を取り直して仕分け作業へと戻るが、速度は格段に落ちている。
意識しないながらも、出来うる限り紙が擦れ合う音を殺し、いち早く異変を察知しようと耳をそばだてる。

「けれど、皮肉なものです。気のせいだと思えば思うほど神経質になってしまって仕事が少しも進まないんですよ」

困ったものだとオズワルドは笑みを零すが、真実その時のオズワルドは困っていた。
『何か』に怯えて仕事が手に付かないなんて、まるで年若い女性でもあるまいに。
そう何度も心中で呟くが、気がつけば仕分け室の扉へ意図せず意識を向けてしまう。
一つ呼気を吐き、邪念を振り払うように頭を振った、そのときだった。


また、音が聞こえた。


「…今度は、気のせいだ。と自分を偽る必要もありませんでした」
「何故だ?」
「扉のすぐ向こう側から聞こえたからです」


もう仕分けの指先すら完全に止まってしまった。
扉に背を向けたままの状態で、手にはメール便を持ちながら、オズワルドは心臓が嫌な音を立てるのを聞いていた。
緊張からか、呼吸が浅くなり、少しの音も立てないように直立不動を保つ。
しかし、そんなオズワルドの反応を嘲笑うかのように、もう一度、音が鳴った。


今度はオズワルドの真後ろからだった。
そして、音はしたものの、未だ何の気配も察知していない。


じわりと、オズワルドの背筋を冷たい汗が伝う。
オズワルドは震える指先を叱咤してひゅっ、と息を吸い込んだ。
そして、意を決して身体ごと振り返ると、そこには―――



『―――オズワルド、もう十一時だぞ?』




緑の軍服に身を包んだ見慣れた尖兵が立っていたのだ。





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[Serene Bach 2.23R]