QLOOK?A?N?Z?X????

四物語

2010/09/02 Thu
m25



「そんな時、遠くで音がしたんですよ」

それは本当に微かな音で、日中の喧騒があればまず気付かないような些細なものだった。
けれど、余りに静かな空間は、確かにその音をオズワルドの耳へ届けた。
オズワルドは手を止め、首を傾げた。
オズワルドしか残っていない社内で、何かの音がするはずはない。
疑問符を浮かべつつ、呼吸を潜めて耳を澄ませた。
しばらくそうして音を待ってみたが、一度聞こえたはずの音は何時までたっても到来しない。

「その時は気のせいだろうと思いましてね。まぁ、仕事で疲れていましたし、空耳だろう、と」

オズワルドは止まっていた手を動かし始めた。
正確さとスピードを持った指がメール便を法則に従い仕分けていく。
疲れているとはいえ、その正確さに淀みはない。
山はあと半分を残しているが、このペースで行けば終わりはそう遠くないだろう。
オズワルドが僅かに吐息を漏らしたとき、その音は再びオズワルドの耳を打った。

「…今度は、先ほどよりもしっかりと。確かに何かの音がした、と、認識できるほどの大きさで聞こえました」
「その……それは…やはり……」

歯切れ悪く、グスタフが口を挟む。
サイキカルは固唾を呑んでオズワルドの言葉の続きを待っている。
一度目に聞こえた些細な音が、二度目には確りと音として聞こえた。
一度目を気にしていたから、二度目の音が大きく聞こえていたのだろうか。
それとも、ごく単純に、二度目の音の方が大きかったのか。

どちらも外れと言わんばかりに、オズワルドが緩く首を振った。



「……近づいてきてたんです」



オズワルドは、仕事の手を止めてドアのセキュリティを解除すると、仕分け室の扉を大きく開き、 廊下に視線を投げた。
補助照明のみに照らされた廊下は薄暗く、遠くは闇に埋もれたように暗い。

「もちろん、補助照明がついている時点で、電気系統が生きていることは証明されています。 ですから、セキュリティが起動していないなんてことは有り得ません」

ルガール運送会社は腐っても大企業である。
そう簡単に侵入できるような設計はされていない上に、社員でさえセキュリティ解除の手順を間違えれば 侵入者と見なされてしまうほど防犯システムは厳しい。

[7] << [9] >>
-
-


<< 恋娘―こむすめ―
紳士のくちづけ >>
[0] [top]


[Serene Bach 2.23R]