四物語
2010/09/02 Thu
m25
その返答を聞き、サイキカルの顔色が僅かに悪くなった。
「ずっしりと……そうだな…胸から足に掛けてまで、身を捩ることも出来ないほどの重みだった」
顔にも口調にも出さないが、実はグスタフ自身はその時、恐怖を感じていなかった。
グスタフが寝入った後に、ユウキが帰ってきたのだと思ったのだ。
お互いに、それなりに忙しい仕事を抱えているから。と、ユウキに合鍵を渡したのは随分前になる。
その合鍵が使われる頻度は決して多くはないが、稀にこうして深夜と呼べる時間帯に訪ねてきては
グスタフを起こさぬようにベッドの隣にもぐり込み、束の間の休息をグスタフの傍に求めるのだ。 そのユウキが、珍しく寝入る前に懐いてきたのだろう、と。
グスタフは何の疑いもなく、身体に掛かる負荷に腕を伸ばした。
「―――腕は動いたからな。確認しようと負荷の掛かっている辺りを探ってみた」
まるで…否。正しく子どものように懐くユウキをからかい半分、 労わり半分で抱き寄せようとした腕は、しかし、まるで意図せぬ感触を掴んだ。
その感触を思い出し、グスタフの眉間に皴が寄る。
口の止まったグスタフを促すように、オズワルドが水を向けた。
「……結局、原因はなんだったんですか?」
「………アビスだった………」
そう、ベッドに乗り上げ、グスタフの身に負荷を掛けていたのは、あろうことか第三形態をとった巨大アビスだった。
今思い出しても恐ろしい。
手に触れた、ぐちゃり、という感触に驚いて完全に覚醒したグスタフは、身体にのしかかるゼリー状の巨大物体に
全身の毛を逆立て、問答無用でなぎ払った。
「……あの時ほど、セキュリティ会社の性能を疑ったことはないぞ……」
酷く疲れたようなグスタフの声には何処か哀愁すら漂っている。
何であんな巨大生物の進入を許した。
様々なことは『致し方なし』の一言で見逃されてしまうMUGEN界だとは言え、
セキュリティにすら引っかからないのはどういう仕様だ。と思い出すだけで頭が痛くなる。
けれど、本当に大変だったのはその後で。
覚醒直後に放った全画面当身に、何時の間にかベッドに潜り込み、隣で大人しく寝ていたユウキを巻き込んでしまったのだ。
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