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四物語

2010/09/02 Thu
m25



『待てと言ってるだろ!』

何処か切羽詰まったようなサイキカルの声に、空手は背を向けながら肩を揺らす。
くるり、と向き直る空手の顔は、まるで微笑ましいものを見るかのように笑みを刻んでいた。
図られた、とサイキカルは気付いたが、全ては後の祭りである。
羞恥に視線を泳がせながらも掴んだ腕を放さずいれば、空手はふふ、と微笑してサイキカルの髪を梳いた。

『……一緒に寝るか?』
『―――お前がどうしてもと言うなら、寝てやらんでもない』


視線を外しながら、それでも尊大にのたまったサイキカルは、結局空手のベッドで朝を迎えることになったのだ。


単なる添い寝だけでは終わらなかった夜を思い出し、緩々と頬に朱を集めるサイキカルを見やる三対の目は
その夜にあったことをほぼ正確に把握すると何事もなかったように話を元に戻した。
席順から言って、次はグスタフかデュオロンのどちらかである。
グスタフが、どうする?と視線でデュオロンに訊ねるが、
生憎とデュオロンはカウンターに視線を投げており視線が交わることはなかった。
グスタフはそれ以上の労力は使わず、まぁいいか。と、二番手を引き受けた。
未だ顔の赤いサイキカルと、酒宴を愉しんでいるオズワルドをそれぞれ見やると、酒に濡れた唇を動かした。



「持ち帰った仕事を済ませ、明日に備えて寝ようとしていた、ある夜の事だ…」



連日の暑さと激務に疲労を蓄積していた身体をベッドへと横たえれば、意識は瞬く間に四散する。
その夜も、そんな風にさながら気を失うように眠りに付いたはずだったが、グスタフは唐突に眠りの縁から引き離された。
カーテンを閉め切った寝室の闇の中、ゆるり、と、緩慢に浮上する意識。
身体はまだ眠りの海を漂っているが、意識は現へと引き戻され、闇に慣れた目は見慣れた寝室をぼんやりと映す。

「何故起きたのか、自分でも分からん。しばらく天井を見上げて、何をするでなく気を飛ばしていた」

すると、不意に。
身体が重くなった。
正しくは、何かの負荷が掛かった。

「…行き成り、か?」
「ああ」

確認するかのようなサイキカルの言葉に、グスタフは軽く頷いた。

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[Serene Bach 2.23R]