四物語
2010/09/02 Thu
m25
モノは人の都合は考えない分、厄介だと言った。
『厄介だと?』
『そうだな…例えば、君が違うぬいぐるみを大切にし始めたら?自分を見てくれなくなったら?
やはり、寂しいと思うんじゃないか?』
『…まぁ、確かに』
無機物であるモノに、人の心変わりなど分かるはずもない。
今まで大切にされていたのなら、これからもずっと大切にされるのだと思うだろうし、途端に見向きもされなくなったらやはり悲しむだろう。
サイキカルが頷けば、空手は殊更声を低くした。
いつもの空手からは考えられないくらい密やかなその声は、ある種の注意深さが滲んでいた。
そう、まるで、リビングにも飾られているコレクションたちに聞こえないようにするかのように。
『もしも君が止むに止まれぬ事情でぬいぐるみを手放すことになったら…』
恨むだろうね。
なまじ心がある分、深く、酷く、……重く。
「………心が宿るのも良し悪しだ、という。その程度の話だが」
「いえいえ。中々空気は冷えましたよ」
その時の空手の声を思い出し、多少なりとも心身が冷えたサイキカルはそう話を締め括ると、
上機嫌なオズワルドが応じた。
その様子に若干憮然としたサイキカルは、似たような声を聞いたことを思い出した。
今しがた話し終えた怪談の後に、空手が茶を飲み干して笑ったのだ。
『さて。話も一区切り付いたところでそろそろ寝るか』
『………待て』
今のように心身が冷えたサイキカルは空手を呼び止めた。
正直、そんな話の後でコレクションが飾られているリビングに居続けるのも、
コレクションで溢れている自室に戻るのも嫌だった。
『ん?どうしたサイキカルくん』
『…………いや』
呼び止められた空手は微かに首を傾げて問い返してきた。
しかし、そこで怖いと言えるほどサイキカルは幼くないし素直でもなかった。
訝しがるような空手の視線がどうにも決まりが悪く、温くなった茶を喉へと流し込む。
『そうか?では寝ようか』
『待て』
二度目の静止に、今度は空手は止まらなかった。
湯のみを持って立ち上がると、そのままリビングから出て行こうとする。
サイキカルは眉間に盛大な皴を刻むと、自身も立ち上がり空手の腕を掴んで止めた。
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