四物語
2010/09/02 Thu
m25
「そう難しく考えずとも、恐怖を感じたことを話せば良いんですよ」
オズワルドがデュオロンに同意を求めて視線を投げる。
今まで静かにカウンターを眺めていたデュオロンは一拍遅れて首肯した。
スターターを譲られたサイキカルは酷く嫌そうな顔をしていたが、
水を向けられて尚黙っていることも出来ず、溜息を吐いてから口火を切った。
「――――…人から聞いた話だが。」
サイキカルは意識を過去へと飛ばしながら、目を細めた。
それは、何故か同居することになった男―――空手から聞いた話だった。
『心を持つぬいぐるみの話を知っているかい?』
夕食も終え、二人で食後の茶を啜っているときに、空手がそう切り出した。
秀麗な美貌に似合わず、ぬいぐるみや小動物といった可愛らしいものが好きなサイキカルはその言葉に目を輝かせた。
同時に、珍しくメルヘンチックなことを言い出す空手が可笑しくて口元に笑みを湛えた。
『アンタがそういう話をするとは珍しいな。明日は雨か?』
『まだ梅雨明けには遠いから、そうかも知れないな。』
サイキカルがそう茶化せば、空手はわざとらしく宵闇に染まる窓へと視線を投げた。
二人で一頻り笑うと、気を取り直したように空手が続きを話した。
曰く。
大切に作られたり、情を込めて名を呼ばれるぬいぐるみや人形は心を持ち、
美しい姿を永く保つのだという。
そして、持ち主がぬいぐるみに愛着を持つように、ぬいぐるみもまた持ち主を慕うのだ、とも。
「九十九神か」
「まぁ、モノに魂が宿るというのは別段珍しくはないな」
「楽器や銃の名器も、自ら主を選ぶと言いますしね」
デュオロンが呟けば、グスタフが続き、オズワルドが同意する。
だが、その事象は奇怪ではあろうが恐怖ではない。
ぬいぐるみだろうが武器だろうが、モノが主を慕うのはどちらかと言えば微笑ましい。
そんな感情を読み取ったのか、サイキカルは甘い酒で喉を潤すと、続きを口にした。
「私もそう思った。だが…」
サイキカルも、自分のコレクションたちがサイキカルを主と認め、慕ってくれるのは嬉しいことだと思った。
しかし、空手は違う意見だったようで、緩く首を振った。
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