四物語
2010/09/02 Thu
m25
そんな中、とうとう業を煮やしたサイキカルが続きを急かした。
デュオロンはもう一度カウンターに視線をやると、殊更声を潜めて言葉を紡いだ。
「先月初めに、交通事故で死んでるはずなんだ」
瞬間。
場の空気が凍った。
その空気を察しているのかいないのか、デュオロンは尚も続ける。
「この酒場のオーナーに聞いた。オーナーは葬儀にも参列したそうだ」
「「「――――………」」」
何とも言えない沈黙の後、三人同時にカウンターへと視線を投げるが、今まで居たはずのバーテンダーの姿はない。
まるで、最初からバーテンダーなどいなかったかのように、酒場は喧騒に包まれている。
三人の頬を、冷たい汗が伝って落ちる。
「――――…今夜は貴方の勝ちですね」
「そのようだな」
搾り出すようなオズワルドの声に、無機質なデュオロンの声が重なる。
グスタフは渇いた喉を潤そうとグラスを持ち上げたが、
死人に注がれた酒だと思うと呑む気が失せてしまいそのままテーブルへと戻した。
ちなみにサイキカルはカウンターに目を向けたまま凍っている。
結局その夜は、心身ともに冷えた身体を温めようとして、 四人が大層悪酔いしたことは関係者のみが知る。
[7] <<
-
-
<< 恋娘―こむすめ―
紳士のくちづけ >>
[0] [top]