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四物語

2010/09/02 Thu
m25


「いや、肝が冷えましたよ」

しみじみと瞼を閉じるオズワルドに、グスタフがテーブルを叩き猛烈に噛み付いた。

「ちょっと待て!私の話と何処が違う!?」
「全然違いますね。忍び寄る物音ですよ?怖いじゃないですか」

飄々とオズワルドは嘯くが、言っていることは本心だった。
話のオチとしてはグスタフとそう変わらなかろうが、オズワルドにしてみれば結構な恐怖体験だったのだ。
何せ相手はあのパーフェクト・ソルジャーである。
野生の獣かくや、と言わんばかりに気配を殺せる尖兵が微かな物音だけを供に近づいて来れば、 誰だろうと肝も冷えるというものだ。

「デュオロン、お前は何かいい話はないか?」

そんなグスタフとオズワルドのじゃれ合いのような会話を聞き流しながら、
サイキカルは静かに耳を傾けていたデュオロンに水を向けた。

「―――ある、といえば、ある」

デュオロンは、カウンターを一瞥した後、そう語った。
珍しく歯切れの悪い切り出しに、三人は一様に視線をカウンターへと投げる。
カウンターには、先ほどテーブルに酒を運んできた年若いバーテンダーが静かにグラスを磨いていて、 その向かいには二人連れの客が居座り談笑しながら酒を愉しんでいる。
何の変哲もない、ただの酒場の一コマだ。
三人がそれぞれ視線を元に戻すと、デュオロンは静かな声で、聞いた話だが。と前置きをした。

「さっき、酒を運んできたバーテンダーなんだが……」

やはり、歯切れ悪くデュオロンが語り出す。
いつも無表情に、淡々と物事を話すデュオロンにしては物凄く珍しいことだ。
その様子に、いつもは口を挟まないオズワルドが介入した。

「先ほどの方から聞いたんですか?」

「違う」

微かに首を振り、否定する姿はいつも通りで、尚のこと不自然さが際立った。
オズワルドと同じく疑問を抱いたグスタフがその後に続く。

「どうもぱっとしない男だったが、あの男がどうかしたか?」

「しいて言うなら、どうにもなっていないのが可笑しい」

訳が分からん。と言わんばかりにグスタフは眉間に皴を寄せた。
今回ばかりはオズワルドの手にも余るようで、量りかねたように首を傾げて見せた。

「回りくどいぞデュオロン」

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[Serene Bach 2.23R]