紳士ゲーム
2010/07/13 Tue
m25
「――…私だ。………、お前か」
そのままカードを伏せて立ち上がり、卓を離れるので、後半の声は聞きにくくなるが、耳も眼も異常に良い三人には全て聞こえてしまう。
「留守電を聞いたのか。……ああ、忘れていたぞ」
「………。――…無いと困るなら自分で取りに来い」
「……、相変わらずだな……、………今からか?」
ふいにグスタフは首を捻って卓の面子に視線を投げる。
オズワルドとサイキカルは言わずもがな、茶化すように瞳を撓めており、
―――…平たく言えば、物凄く嫌な笑顔でにやにやしていた。
しかも、デュオロンまでもが興味深そうに此方を見ている。
下世話な勘繰りだと米神を引きつらせながら無言で卓に背を向けて、携帯へ「少し待っていろ」と言いつけて切った。
「デートか?」
「違う、忘れ物を取りにくるだけだ」
「例の彼ですか?」
「たまたまだ」
「………何を忘れたんだ?」
「…………」
三者からの質問攻めに片眉を揺らすが、そんなことで引き下がるような神経の持ち主は此処にはいない。
グスタフは苛立ちを紛らわすように伝票を引っ手繰るようにして手に取った。
「すまんな、この埋め合わせはする」
「…何を忘れたんだ?」
クン、と細い顎を捻り問いかけてくるデュオロンに悪気はない。
ただ、好奇心があるだけだ。無表情の中にそんな気配を感じて、グスタフは息を吐き出した。
「………スカーフだ」
サイキカルのニヤニヤが度を増した気がして、グスタフは踵を返し、酒場を後にした。
カラン、とドアベルが響く余韻まで楽しむとサイキカルは早々にカードを山に捨てる。
一人抜けてしまっては、ゲームにならないと手を閃かせた。
今回は優勢だったので、出来れば勝ちまで持って行きたかったが、なんとなくコツは掴めたので良しとする。
それにいい年をして、あんなに真剣に恋愛しているグスタフを見たら、其方のほうが稀少である気がして、決して悪い気分ではない。
サイキカルも第三者から見れば、さして変わらぬ立場ながら、灯台下暗し、岡目八目とは良く言ったもの、まるで自覚がなかった。
オズワルドも己の持っていた手札を山に帰し、死神を屠ってカードを集めなおす。
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