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祭祀様は眠らない

2010/08/26 Thu
m25



「わかりました、わかりましたから。しかし、こんな夜更けに何をしようと言うのです」

諦めたようにグスタフが折れた声を出すと、ゲーニッツの口角が持ち上がった。
撓む唇が薄く開いて、掴まれている手を翻しグスタフの身体を勢いよく引く。
当然引力に負けてグスタフの身体は崩れ、中腰を保っていた体勢はゲーニッツの膝の上へと崩れ落ちた。

「………っ、祭祀様!」

上司の暴挙に声を荒げて、見上げるとゲーニッツは青い瞳を光らせて首を傾ける。
指先をグスタフの額に滑らせ、生え際まで指先で撫でてから黒髪を梳いた。
長く武骨な指に糸のように細い長髪が絡んで流れを作り、後方へと落ちていく。

「そうですねぇ……、あまり騒ぐと近所迷惑にもなりますからね」

まるで大声を出したことを咎めるような言葉選びに、グスタフは小さく呻いた。
その呻き声に被さるように密やかな笑い声が降ってくる。
獣が喉の奥で漏らすような笑い方に、グスタフは少しだけ片目を歪めてみせる。

「さ、」

祭祀様、と呼びかけるはずの言葉は最初の一音で途切れた。
後頭部まで伸ばしたゲーニッツの手が、グスタフを下肢に導いたのだ。
片膝を付いていたグスタフは上体が更に傾き、視界が正装の青一色になる。
驚きを隠せず、ゲーニッツに真意を問おうとしても後頭部を鷲掴まれているので思うようにならない。
そこへ当の本人から、とんでもない言葉を聞かされた。

「舐めてください」

その言葉を聞いた瞬間は、何のことだか分からなかった。
あまりにも予想外の言葉に思考が止まる。
しかし、ある程度年を重ね、適当に夜遊びも経験したグスタフにいつまでも呆けていることは出来なかった。
意味は直ぐにグスタフの頭の中へと滑り込んできた。ただ、喉から下へ飲み込むことが出来ない。

「今、……なんと…?」
「奉仕してください、と言ったのです。貴方の口で」

今度は頭を殴られたような衝撃がグスタフを襲った。
ストイックなまでに青の正装を着こなし、穏やかな態度で言うような類の言葉ではない。

「出来ない、と言うことなら、それでも構いませんよ。下がりなさい」
「………試しておいでなのですか」

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[Serene Bach 2.23R]