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黒龍の優雅な晩餐

2010/10/28 Thu
m25



「自ら滅びの道を選ぶか」

ルガールの生き方は文字通り破滅の道だ。
果てない輪廻の終着点は、ルガール自身の滅びでしかない。
血を啜り、骨を砕き、命を潰すルガールの先など、誰の目にも明らかだ。
今までルガールがしてきたように、やがてはルガールも血の報いを受けることになるだろう。
憐憫すら混じるヨハンの目を、ルガールは鼻で笑って一蹴する。

「私が滅べばそれだけの男だったというだけだ」

最後まで戦いの中で生きて、戦いによって死ぬことを選んだ眼。
自らの血に濡れたルガールの目は獣のそれだった。
戦いを止めて平穏に生きるより、路傍に屍を晒す方が本望だという、狂気を孕んだ独白を聞きながら、ヨハンはぞくり、と背筋を粟立たせた。
悪寒よりもずっと興奮を得られる感覚に背筋を苛まれながら、熱を含んだ吐息を漏らす。

「黒龍の力は人には過ぎた力。手に入れるには犠牲を払わねばならない」
「元より承知の上だ」

心地良いまでに貪欲な返事に、ヨハンは一層笑みを深めた。
まるで夜の闇のように純然とした黒い笑顔に、僅かにルガールが訝しがるような視線を向ける。
その視線を受け、ヨハンはゆっくりとルガールの顎に手を掛け、顔を上向かせる。
無理な負荷が掛かったことにより、ルガールの首が嫌な音を立て、眉間に皺が寄った。
しかし、その表情はすぐに驚愕によって崩された。
上向いたルガールの唇を、ヨハンが己のそれで塞いだのだ。

「―――ふ……ん…」

ぴちゃぴちゃと、唇の端から流れる血を丁寧に舐め取り、舌を口腔へと差し入れる。
ルガール自身の血を舌へと落とし、舌先を触れ合わせて互いにその味を共有する。
口の中まで切っているルガールにとって、器用なヨハンの舌で擽られるのは痛くはあったが、そんな痛みは常のものに比べれば酷く些細なものだ。
一瞬の驚愕が去ると、ヨハンにとっては意外なことに、ルガールも舌を絡ませて応えてきた。
血に濡れた腕を持ち上げ、ヨハンの腰を捕らえるのに抵抗せず、ゆっくりと自重をルガールへと傾けていく。
ねっとりと互いの呼吸すらも牽制しあうようなキスを繰り返し、銀糸を引きながら唇を離すと、ヨハンはうっとりとした視線をルガールへと向けた。

「……、差し出せ。お前の矜持と肉体を」

これ見よがしに下肢を密着させ、欲の孕んだ瞳を合わせればその言葉の持つ意味など一つしかない。

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[Serene Bach 2.23R]