危ないカンパニー
2010/09/26 Sun
m25
そうして、心も、身体も、全てが重なりあい、記憶はそこで途切れ――――
「それで、何を書いてらっしゃるんですか?ウィンドさん」
「ぎくり」
絶対零度まで冷え切った声がウィンドの耳に滑り込み、体内から薄ら寒いものを感じた。
黒いケープを羽織った肩を震わせ、茶目っ気たっぷりに冗句めかして驚いて見せるが、
そんなことで誤魔化しきれるほど、オズワルドは易い相手ではなかった。
「こ、こんにちは、オ、オズワルドさん。こ、これは脳を活性化させるための創作活動でして……」
「……ほぅ?」
きらりとサングラスの奥の瞳が輝いて、ガサガサと原稿用紙を背中に隠すウィンドを射抜く。
血の付いた手袋はもうしまったはずなのに、オズワルドの瞳には命を刈り取るものの暗い光が宿っている。
ウィンドは眉尻をピクピクと怯えるように震わせながら、口元に添える笑みが引きつる。
「そうですか…」
穏やかな声を出しながら仕分け人はゆっくりと懐に指を差し込んで、愛用のトランプを引きずり出していく。
オズワルドから本気と書いてマジな色が見えたところで、ウィンドは観念して掌を合わせて頭を下げた。
「ごめんなさいごめんなさい! もうしないとは言い切れませんけど、反省はするつもりです!!」
金色の長い髪を揺らして頭を下げると、オズワルドは呆れたように息を吐き出しながら、
取り出しかけたトランプを再びスーツの下にしまいこみ、全く、と呟いた。
怯えるように下がった頭にこれだけ怖がらせれば良いでしょう、と内心で独りごちる。
謝罪ひとつで許すのは一重にウィンドが若い女性で、同僚だからに過ぎない。
本当はカーネフェルの真髄でも見せたいところだが、素直に謝る婦人に追い討ちを掛けるオズワルドではない。
「……大体、何を考えてらっしゃるんですか何を」
「いやぁ、最近オケ専に嵌ってまして」
言葉で諌めるも、全く悪びれない口調で言い訳されて再びオズワルドの瞳が据わる。
グン、と確かにウィンドの周りだけ気温が下がって、ひぃ、と喉の奥で悲鳴をあげた。
「―――ご理解頂けなかったようですね…?」
「ゴメンナサイ」
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