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天才は病人と踊る

2010/09/21 Tue
m25


その感情が、『友人として』だと言い聞かせていると、沈黙が満ちる室内から再び声が漏れてきた。




―――案外、東方不敗もお前を嫌っているのではないか?




その声を聞いた瞬間、東方不敗の中で何かが切れ、気付いた時には控え室の扉を蹴破っていた。







足音荒く退場していった見慣れた白とお下げ髪を見送ると、アミバは身体から力を抜いた。
この界隈では常識人枠に収まってる東方不敗が、ダウンをとった相手に殴る蹴るの暴行を加えるはずもないのだが、
予想以上に怒り狂った姿を見てしまった手前、身構えずには居られなかったのだ。
その証拠のように、アミバの視界の端には、アミバ自身を吹っ飛ばして粉々に粉砕された扉の残骸だったものが映っている。
例え控え室の扉だとはいえ、耐神設計と名高いトーナメント会場の一部を再生困難になるほど破壊するとは、
なかなか激しい男である。

「―――…くく…ッ」

アミバの言葉に傷ついたのか、眼に薄く涙を張ったトキやら、殺気を隠さず向けてくる東方不敗を思い出すと
溜息よりも笑気が漏れた。
けれど弱った身体にはそれすら毒で、呼気が喉に絡まり軽く噎せ返った。
もともと試合後の本調子ではない身に加え、扉のダイレクトアタックを受けたのだ。
そう簡単には起き上がれない。
アミバは冷たい床にひっくり返った状態のまま視線を天井へと向ける。

「……まったく……」

何かにつけてアミバがトキへとちょっかいを掛けている、というのは衆目の知るところであり、
トキは一方的な被害者だと思われがちだが、トキとてしっかりと報復はしている。
アミバのちょっかいが度を越しているというのもあるのだが、ほとんどの場合が問答無用の胡坐ビームである。
先刻の手酷い言葉とて、東方不敗の乱入がなければ胡坐ビームが飛んできたことだろう。
熱した石に落ちた雫の如くゲージが蒸発したことなど、数えるのも億劫になるほどだ。
アミバの性格とトキの性格から、あまり気付かれることはないが、よくよく見ていればアミバに対する手加減が一切ないのが分かるはずだ。
腐れ縁といえるほど長い付き合いだからか、はたまた遠慮を捨てたのか、『聖人』とも思えないその態度はアミバにとって既に慣れたものだ。

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[Serene Bach 2.23R]