私のクローンがこんなに可愛いはずがない
!注意
ゼロゼロでクリームプレイ18禁話。
神オロチとイグのんのノマ描写ありなので注意。
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クローンゼロは、両手に余るほどの箱を抱えて、ネスツの廊下を歩いていた。
積み重ねた真っ白な箱からは絶えず甘い香りがして、クローンゼロへと纏わり付く。
中に収められているのは、大量の一言に尽きる洋菓子で、箱にはピンクのレースでリボンがあしらわれており、いっそ笑えてしまうほどクローンゼロには似合っていない代物だった。
「――――…チッ…」
クローンゼロは、常の仏頂面をさらに顰めて舌打ちを漏らすと、脳裏を過ぎる金髪の幼女に毒づいた。
現在、クローンゼロが持っている箱のすべては、金髪の幼女…イグニスの実子たるイグのんへの貢物だった。
幼いながら、イグニスと同等クラスのカリスマと強さ、何より人外をも惹きつける魅力を備えた彼女は、目下のところ地球意思たる龍蛇の長に求愛されていた。
否、求愛という表現は的確ではない。龍蛇の長と彼女の間には、既に二子を儲けている。
…その事実に対しても色々と迷惑を掛けられているので一言や二言は言いたいのだが。
閑話休題。
当のイグのんは龍蛇の長と駆け落ち同然で同棲までしているのだがつい先日、何の前触れもなく一人で戻ってきたのである。
無論、駆け落ちをしていようと子が二人いようと、彼女はイグニスの実子であり、ネスツは実家といっても過言ではない。
故にイグのんが姿を現しても単なる里帰りで済んでしまう。少なくともクローンゼロはそう思った。
しかし、幼いラインの残る頬を真っ赤に染めて、大きな瞳に零れんばかりの涙を湛えていたのを見たオリジナルゼロにとっては違ったらしく、空調整備がなされている執務室とは思えないほどの冷気が発生し瞬時に室内を凍らせた。
その室温に気づいていないのか、気づいていながら頓着していないのか、イグのんはオリジナルゼロへと駆け寄ると喧しい小鳥のように駆け落ち相手である龍蛇への鬱憤をぶちまけたのだから始末に悪い。
只でさえ、イグのんに対しては薄ら寒いほど甘い男である。
その甘さは実父であるイグニスを軽く上回り、それ故に、浚うようにイグのんを娶っていった長を蛇蝎の如く嫌っているのだ。
此処は危険だ。
脳内を警鐘が鳴り響き、業務上の確認に執務室を訪れていたクローンゼロは咄嗟に座っていた椅子から飛び退いた。
驚嘆すべき速度でクローンゼロの脚が大きく間合いを取ったその瞬間、綿のように軽く小さい身体を追ってきた白い半裸の男が執務室の扉を叩き割り、今までクローンゼロが腰掛けていた椅子を大破した。
その男とほぼ入れ違いに執務室を脱出したクローンゼロが認識しているのはそこまでだ。
凄まじい破壊音と空間が捻じ曲がる奇怪音を背中で感じていたが、わざわざ戻って確かめる義理もない。
最も、その僅か2時間後には耐神設計であるはずのネスツの一部が更地になったらしいので、クローンゼロの危機察知能力は正しかったわけだが。
途中で消えたクローンゼロにはどちらに軍配が上がったか知らないが、それ以後からイグのん宛の貢物が贈られてくるようになったことを鑑みれば答えは推して知るべし、と言う奴である。
「あの小娘め…面倒事ばかり増やしおって…」
父親であるイグニスの元よりも先にオリジナルゼロの元へと飛び込んでいった小賢しさは流石だが、それによって起こる弊害を理解してもらいたいところだ。
破壊されたのが自分の執務室でなかったことは僥倖なのだが、その対価が胸焼けを起こしそうなバニラビーンズの匂いを放つ大量の菓子箱の運搬である。
面倒事を回避するために離脱したクローンゼロを覚えていたらしい龍蛇の長は、イグのん名義で送ってもオリジナルゼロに処分されるだけだと理解したらしく、クローンゼロ名義で数々の貢物を贈ってきているのだ。
これを届けてやる筋合いも義理もないクローンゼロとしてはこのまま捨ててしまいたかったが、脳裏を金髪の幼女が過ぎ去るとそれも憚られた。
無論のこと、馬鹿馬鹿しい夫婦喧嘩に心動かされた訳でも、沈んでいる金髪に絆されたわけでもない。
単に互いの実力を視野に入れると対立するにはリスクが高すぎると判断しただけだった。
「―――…甘ったるい」
それでも毎日のように阿呆のような量な貢物を運ぶのは業腹どころの話ではない。
鼻につく香りはすでに慣れたものだが、それでもこうも連日運べば辟易するというものだ。
別に食べられない訳ではないが、好き好んで食すほど得意でもなかった。
そもそもこんなのは女子供の食い物だ、という偏見があるのも理由の一つだった。
クローンゼロは眉間に山脈のような皺を刻むと、漸く辿り着いた目的地の扉を押し開いた。
数日前には粉砕した扉も、ネスツの科学力に掛かれば短時間で復元可能だ。
他に類を見ない科学力を野試合の後始末に使うべきものではないとは思うものの、言い出したら聞かないのがイグニスでありイグのんだ。
正論を振りかざすのは随分前に諦めている。
「…おい、あの小娘は何処だ」
オリジナルゼロの執務室を訪れたクローンゼロは、大量の書類に追われている同僚に問いかけた。
出戻ってからというものイグのんはオリジナルゼロ付近をテリトリーと定めたらしく、日中はその執務室に閉じこもっているのが常だった。
それ故に、ネスツ内にあるイグのんの私室ではなく、わざわざオリジナルゼロの執務室まで足を運んだと言うのに、室内の何処にも少女の姿はない。
こうしている間にも、クローンゼロの執務室には決済を待つ書類が溢れていくのだ。ゆっくりとはしていられない。
クローンゼロの苛立ちに気づいているのかいないのか、今まで書類に目を向けていたオリジナルゼロはちらり、と視線を上げて見せる。
「イグのん様ならお出掛けになったぞ」
「―――チッ…いいご身分だ」
別段、イグのん自身がクローンゼロに運搬を命じたわけではないのだが、毎日大量に贈られてくる貢物を知っているはずなのだ。
それを送り主から直接受け取らないのなら、せめてクローンゼロが運んだものを受け取るくらいはしても良いだろうに。
トーナメント出場くらいしか能のない小娘とは違って、こちらはいつも、いつでも忙しいのだ。
思わず手にした大量の箱を握り潰したくなるも、潰したらそれこそ処理が面倒だと済んでのところで思い留まる。
「しかし凄い匂いだな」
オリジナルゼロの視線が手元に集中しているのを感じて、クローンゼロは心中でもう一度舌打ちを漏らした。
体よく使われているのはお互い様だとはいえ、唯々諾々と運搬をしている姿は見られて楽しいものではない。
自然、吐く言葉には棘と毒が混じっていく。
「私ではなくあの小娘に言え。面倒でかなわん」
「まさかお前が買ったのか?」
オリジナルゼロの意外そうな言葉を聴きながら、クローンゼロは嫌そうに眉根を寄せる。
いい年をした中年が、忙しい仕事の合間を縫って洋菓子を買いに走らされるなどそれこそ、『まさか』だ。
クローンゼロは手近な卓に荷物を置くと、匂いの移った掌を軽く振り払いながら忌々しく口を開いた。
「馬鹿を言え。あの半裸男からだ」
そう、言った途端。クローンゼロは執務室の温度がグンッと下がったのを肌で感じた。
つい先日も真近で感じた冷気に、クローンゼロの脳内で警鐘が鳴り響く。痺れるほどの冷気に背筋が粟立ち、肩が強張る。
「――――…ほぅ…?」
緩慢な動作で首だけを巡らせて振り向いた先には、穏やかに微笑んでいるオリジナルゼロがいた。
口元に乗るのは穏やかな笑みで、手にした書類を卓上へと戻す手つきも静かだが、その中で切れ長の瞳だけが氷のように冷えていた。
その視線を受け、肩に張り付いた強張りが全身へと瞬く間に広がっていく。
しかし、今ここで凍り付いていても我が身の危険は回避できない。クローンゼロは咄嗟に身を翻した。
「―――あの小娘が帰って来たら渡しておけ。私は仕事に戻る」
「まぁ、そう言うな」
「お前にも仕事があるだろう。邪魔が入らん内に進めておけ」
「丁度一息入れようと思っていたところだ」
「なら一人で休め。私は戻る」
口早に言い切り、返事を待たずに歩き出す。
けれど、一歩を踏み出す前に腕を取られ、肩が外れ兼ねない勢いで執務机へと叩きつけられた。
咄嗟に手を着いて衝撃に備えるも、体制を直す前に足を払われ受身を取りそこなう。
身体が机へと叩きつけられ無様にも視界が揺れ、肺に溜まった空気が逆流した。
「―――ッ、何をする!」
突然の暴挙に怒鳴れば、背後から腕を捩じ上げられて机に縫い付けられた。
オリジナルゼロの笑気を項に感じながら、クローンゼロは額に青筋を浮かべた。
こういった雰囲気で、この後どういう流れになるのか想像できてしまう我が身が憎い。
そして、クローンゼロの想像が下世話な勘繰りでないことをコートの裾から侵入してきた冷たい掌が証明してくる。
「この、色情魔がッ!」
確かな目的を持って着衣を乱してくる手を、捕らえられている腕に渾身の力を込めて引っ掻いた。
皮膚を引き裂いた爪に、オリジナルゼロの皮膚が溜まる。抵抗を受けたオリジナルゼロは、静かに、けれど咎めるように捩じ上げた腕へ更なる負荷を掛けた。
骨が軋む音が耳の奥で聞こえ、激痛がクローンゼロを襲う。冷や汗が滲むほどの苦痛に動きが凍ると、その間にオリジナルゼロの手が悠々と下衣を取り払う。
クローンゼロの荒い呼吸と衣擦れの音が部屋に響き、時折オリジナルゼロが低い声で笑う。
「―――ッ…はっ…」
ギリギリと極められる腕は血流が滞り、既にぴくりとも動かない。
常人であれば痛みの余り気を失ったとしても不思議はないが、ここでもクローンゼロの矜持が邪魔をした。
このまま意識を保っている方が、いたずらにオリジナルゼロを悦ばせるだけだと理解している一方で、一時とはいえ力で負ける姿を晒す気にはなれなかった。
クローンゼロの理性的な部分が、気絶するほうが利口だと囁いてくるのを意思の力で跳ね除ける。
「…は、……くッ」
鍛えているとはいえ、同等の実力者に何の加減もなく拘束されると、呼気が乱れる。
苦痛を孕む呼吸は無様な風音となってクローンゼロの耳を嬲った。
身動き一つ取れない己を叱咤する以上に、寛げたクローンゼロの首筋を辿る舌を罵倒したかった。
舌はまるで獲物を味わう蛇のように筋を辿ると、浮かぶ冷や汗を丁寧に舐めて動脈に歯列を立てる。
急所に立てられた犬歯は甘噛みというには強く、命を奪うには弱い力で噛みつき、屈辱の痕を残していく。
せめてもの抵抗の証として、その行為を嫌がるように首を振ると不意に何かがクローンゼロの頬に当たった。
「―――あぁ、こら。折角運んできたのに、潰れてしまうぞ?」
霞む視界に入ってきたのはぼやけた白ばかりで何か分からなかったが、茶化すようなオリジナルゼロの言葉でそれがクローンゼロが運んできたケーキの箱なのだと理解した。
こんなものさえ無ければこんな目に遭うことはなかったのだと思えば、八つ当たりだと分かっていながら白い箱を睨みつける。
すると、今まで決して止まることのなかった手が不意にクローンゼロから離れた。
「……」
クローンゼロがどれほど罵倒しようが抵抗しようがお構いなしで、常にしたいようにするオリジナルゼロの珍しい行動に安堵よりも壮絶な怖気が湧いた。
無論、行為を中断する気だというのなら万々歳だ。多少熱を持った身体の自己処理くらいで済むなら安いものだと思う。
けれど、これで終わるとは到底思えない。そう思うには、クローンゼロはオリジナルゼロの性格を知り過ぎている。
これから何が起こるのか、先の展開が全く読めず、クローンゼロの頬を冷たい汗が伝う。
オリジナルゼロは新たに伝った汗を舌先で掬うと、一分の隙もない笑みを浮かべて見せた。
「折角お前が手ずから運んでくれたものだ。有難く使わせて貰おうか」
それはどういう意味だ。と、問い掛ける暇すらなく、オリジナルゼロはケーキ箱から装飾のリボンを奪うとクローンゼロの両手を拘束した。
たかがリボンとは言え、幾重にも巻きつけ、更には指先まで丁寧にぎっちりと締め付けられていてはどうしようもない。
逃げようもない現状に満足したのか、極めていた腕も離れ、止まっていた血流が末端へ向かって流れていく。
漸く痛みから解放されたクローンゼロはこれを機に盛大に吠え立てた。
「っ貴様はどうしてこうも要らんところまで器用なんだ!?」
「そう褒めるな」
「誰が褒めるか馬鹿者が!!」
執務机を肩で詰るように暴れるクローンゼロを尻目に、オリジナルゼロの手は再びケーキの箱へと伸びる。
リボンを解いたお陰で片手で簡単に開いた蓋を放り、内に整然と収まっているケーキからクリームを掬い取った。
細かい絞り口で丁寧に作られただろう製菓は容易くオリジナルゼロの指へと移り、熱によって僅かに溶け始めた。
クリームが全て溶けてしまうより早く、その手がクローンゼロの下肢へと下った。
「―――ッ!?」
緩く熱を持っているとはいえ、濡れるまでには至っていない陰茎に行き成り滑りが及ぼされ、クローンゼロは息を呑んだ。
同時に押さえつけられた身体も強張り、足先が幾度となく床を掻いては傷を刻む。
下肢から上ってくる甘い香りと、塗りつけられているクリームの感触に視界が滲んでくる。
戒められた両手をあらん限りの力で握り込み、奥歯を噛んで恥辱に耐えるが、オリジナルゼロの手が止まることはない。
ケーキの箱とクローンゼロの下肢を何度も往復し、陰茎から後孔までクリームを塗りつけられ、クローンゼロの息は意図せずに上がっていく。
「―――ッの、変態が…ッ」
毒を吐く唇にまで、器用な指先が伸びクリームを塗りつけていく。
クローンゼロがその指に牙を剥くより早く退いた手は、そのまま後孔へと突き刺さった。
ホイップクリームを纏う太い指が、無遠慮に身体の奥深くへと侵攻し、硬く閉ざされた後孔をクリームで緩ませると、二本の指を一気に根元まで沈み込ませる。
クリームの滑りに助けられているとはいえ、不快感と圧迫感が薄れるわけではなく、クローンゼロは喉を引き攣らせた。
「ぐ…ぅ…ッ―――」
クローンゼロの口から苦しげな呻き声が漏れるが、全て黙殺される。
あまつさえ、息も整わない内から収まった指が抽出を開始されて押さえつけられた身体が頼りなく震えた。
「き、さ…ま…ッ」
グチグチと肉を無理に拓かれれば、苦痛と屈辱で視界が涙で滲み、腰から広がっていく快楽に脳が痺れた。
掌に立てた爪で肉が裂けるまで力を込め、流されそうになる理性を無理にでも繋ぎとめる。
しかし掌に傷が増えるたびに、まるで咎めるように攻め手が強まりクローンゼロの抵抗を殺いでいった。
「―――ひ、…や、め…ッ…!」
信じられないような水音は、ホイップクリームが溶けたからだ。
決して、起立している陰茎から零れる先走りの音ではない。
視界を閉じて声なく言い逃れるクローンゼロを、狼藉者は低く嗤った。
「何故だ? お前も愉しんでるだろう?」
精神を嬲る言葉に、咄嗟に瞼を押し上げてオリジナルゼロを睨みつける。
こちらを見下ろしてくる男はこの上なく愉しそうな、酷薄な笑みを浮かべていた。
良いように指で高められ、溶けていく様を笑うオリジナルゼロは酷く性質が悪かった。
執務室という特異な場所での性交に気が昂ぶっているらしいのも始末に終えない。
クローンゼロは奥歯が鳴るほど強く歯列を合わせると、嬌声ばかりが零れる口で毒を吐く。
「なにを…ッ戯けた…っこと…ッ!」
毒が完全に形になる前に、埋まった指がバラバラに動いて息が詰まった。
此処最近はオリジナルゼロがイグのんに掛かり切りだった為、平和な一人寝を満喫していただけに強すぎる快楽がいっそ苦しい。
震える身体も嬌声交じりの息継ぎも、己のものだというのに何から何まで気に入らなかった。
霞む思考と揺れる視界、その中で体内を動く指の動きだけが嫌に鮮明で、クローンゼロは奥歯を噛み締めた。
「―――ッ…く……ハッ…」
上擦りそうになる声を叱咤し、嬌声を吐息へと変えて責め苦に耐えるが、クローンゼロの性感を熟知したオリジナルゼロに掛かればそんな些細な抵抗など物の数には入らない。
その証拠のように埋めた指を軽く旋回させ、一際強く突き入れると、クローンゼロの下肢に更なる白が加わった。
ドクドクと吐き出される精液と、解かされたクリームが混じり、クローンゼロの下肢を白く汚していく。
上は黒いコートを纏ったまま、成す術もなく下肢を露出させ白濁を纏わせた姿はオリジナルゼロの目を愉しませた。
「なんだ、溜まってたのか?」
耳を打つ腹立たしい言葉に噛みついたくとも、達したばかりの身体は酸素を欲して言葉を遮る。
吐精の余韻に揺れる荒い呼吸を聞きながら、オリジナルゼロはうっそりと笑みを刻むと、余韻に震える腰を引き寄せた。
今まで以上に密着してくる狼藉者の気配に気づいたクローンゼロが暴れるより早く、オリジナルゼロは猛る熱でその体躯を貫いた。
「―――ひッ……ぁぐ…ぅッ」
内壁に塗り込まれたクリームが陰茎の侵入を助け、また、クローンゼロの身体に掛かる負担をも減らしていた。
太い指で嬲られ、散々解された後孔は異物を受け入れ、より深くへと誘い込む。
オリジナルゼロはその誘いに逆らわず、クローンゼロの息が整わない間から律動を始める。
「ぅ、あ……ぐッ…っ」
呻き声が何度も零れ、下肢から上ってくる水音と混じりあい意識が混濁していく。
内壁を擦られるたびに愉悦が駆け抜け、下肢から及ぼされる熱に腰が善がり狂う。
律動に合わせてガタガタと揺れるデスクに顔をこすり付け、クローンゼロは嫌がるように首を振った。
こうしてオリジナルゼロに嬲られることは既に何度も遭ったことだが、クローンゼロの身体が行為に慣れたわけではない。
後孔を幾ら弄られたとしても挿入の際には必ず苦痛が身体を支配する。
だからこそ、クローンゼロはそれを理由に出来たのだ。
この行為に意味などなく、ただ単にオリジナルゼロが憂さを晴らす為だけの暴力だと、そう割り切れた。そう割り切らねばやってられないと思った。
これが単なるセックスだとしたら、オリジナルゼロの行為に悦を感じてしまったとしたら、クローンゼロはどうすれば良いのだ。
殺したいほど嫌悪し、叩き潰したいほど忌々しい男相手に、自ら肌を許して身を任せているのだと思えばいいのか。
クローンゼロは萎えそうになる気力を振り絞り、強く奥歯を噛みしめた。
「――――…やめ…ろッ…」
既に歯の根すら合わないほど感じ入っているにも関わらず、力に任せて歯列に力を込めた結果、クローンゼロの咥内の肉が裂けた。
咥内に広がる血の味と痛みに、クローゼロは僅かに理性を取戻し、拒絶の言葉を舌に乗せる。
そんなことを認めるわけにはいかない。クローンゼロにとって、オリジナルゼロはあくまで腹立たしいだけの相手でなければならないのだ。
今までもこれからもそれ以上の意味も、それ以下の価値もこの男には必要ない。
「…やめ…ろッ……離、せ……ッ」
渾身の力を振り絞って身を捩るクローンゼロを、オリジナルゼロは抽出を緩やかにして背後から見下ろした。
下から射殺さんばかりに睨みつけてくる眼光は眦に涙が浮き、頬は怒りと悦楽に紅潮している。
戒められた手首が自由を取り戻そうと絶えず動き、指先は掌に爪を立てて理性を繋ぎとめようと必死だ。
オリジナルゼロを咥えこんだ後孔から溶けたクリームとクローンゼロ自身が零した先走りが混じりあい、下肢は既に白に染まっていると言って良い。
その揚句にあらん限りの力で噛みしめられた唇からは拒絶の言葉とともに血が滲んでいる。
「―――前々から思っていたのだが…」
オリジナルゼロは手の伸ばし、親指でクローンゼロの唇を拭った。
そうすることで指先には血の彩が移り、血の滲んでいた唇にはクリームが添えられた。
鼻孔近くにバニラビーンズの香りを感じて、クローンゼロの瞳が揺れ、オリジナルゼロは酷薄な笑みを浮かべた。
「お前は煽るのが巧みだな」
笑気を多分に含んだ声が耳を打ち、クローンゼロは目の前が真っ赤になるほどの苛立ちに包まれる。
自身の言葉がオリジナルゼロを喜ばせたらしいのも気に食わなければ、煽ったなどと思われるのは冗談にしたって性質が悪い。
抵抗すればするだけ行為は激しくなり、長引くのだと経験から知ってはいたが、だからといってオリジナルゼロの発言を許すわけにはいかなかった。
クローンゼロは腸が煮えくり返るほどの激情に身を任せ、すぐ傍にあったクリーム塗れの太い指に牙を剥いた。
がり、と、弾力のある肉の感触が歯に伝わり、次いで濃厚な血の味が口内一杯に広がる。
オリジナルゼロは痛がる素振りすら見せず、そのまま骨まで砕こうとするクローンゼロを押さえつけると何の前触れ無く抽出の速度を速めた。
「―――ッ!」
途端に腰に広がる悦楽に、クローンゼロの身体が引き攣り、オリジナルゼロは指の奪還に成功した。
けれど、クローンゼロの口内から引きづり出すことはせず、逆に喉奥深くまで侵入し、己の血の味をクローンゼロに覚えこませる。
肌と肌がぶつかる音が下肢から聞こえ、口内は血とクリームの味が混ざり合い、酷く気分が悪かった。
口内の味を流そうと唾液が溢れ、酷く耳障りな水音が脳に響いた。
口の中は気持ち悪い上に、肌の上に落ちるオリジナルゼロの吐息は忌々しく、貫かれる下肢は例えようもない快楽をクローンゼロに与え続ける。
いっそこのまま気が狂えば楽になれるのかもしれない、と、飽和した思考がトチ狂う。
しかし、クローンゼロが理性を手放しかけた、正にその瞬間を見計らったかのように、執務室の扉が、かたん、と鳴いた。
「――――あれ? 鍵掛かってる?」
扉の音に次いで聞こえてきた子ども特有の高い声に、クローンゼロの理性が音速を超えた速さで戻ってくる。
嫌になるほど聞きなれたその声は、酷い有様になっているケーキの正当な受け取り人であるイグのんのものだ。
クローンゼロはそれを認識すると、暴れていた身体を無理に押さえつけ、気配を消すことに集中する。
ネスツは全室オートロックが完備されている為、どうあっても勝手に入ってくることは出来ないが、可能性は皆無ではない。
もしもあの喧しい幼女に現状を見られたりした日には、一時間も持たずにネスツ全域に情報が行き渡ってしまう。
如何にクローンゼロが周囲を気にしない性質だとはいえ、それとこれとは話が別だ。
今までの暴れようが嘘のように大人しくなったクローンゼロに、オリジナルゼロはまたも上機嫌に笑みを深めた。
そして、戦々恐々としながら扉へと視線を向けるクローンゼロを存分に鑑賞しながら口を開いた。
「イグのん様、お帰りなさいませ」
「ゼロー? 何、仕事中ー?」
「いえ、単なる雑用ですよ」
性交の気配を毛ほども見せない厚顔さは流石と言ってよかったが、紡がれた言葉にクローンゼロの米神が露骨に引き攣った。
扉一枚しか隔てていない現状では、イグのんに気付かれるわけにもいかず非難の声すら上げられない。
下から殺意を込めて睨みつけることぐらいしか出来ない。酷く無力だ。
静かに繰り返す息すら殺しながら唇を噛んでいると、不意にオリジナルゼロの手が前へと下る。
クローンゼロは信じられないような思いで眼を見開いた。
その様子に気付いているだろうに、オリジナルゼロは淫液を零すクローンゼロの陰茎を太い指であやすように撫で摩る。
摩擦に対し正直に質量を増す自身にも呆れるが、こんな状況下ですら手を止めないオリジナルゼロこそ常軌を逸していると言わざるを得ない。
クローンゼロは解けそうになる唇に力を込めて、歯列を噛み締め全力で声を殺しにかかるが、オリジナルゼロはゆったりと項に歯を立て肌に痕を残していく。
そうしながらも、オリジナルゼロは扉の向こうのイグのんとの会話を続行させる。
「ただ、少しばかり手が離せないので、申し訳ありませんが私室のほうへお戻り頂けますか?」
「分かった。また呼んでね」
「承知いたしました」
正直、全てを捨てても良いから、今この場でこの男を殺したい。
とたとた、と、軽い足取りが去っていく音を拾いながら、クローンゼロの心中を占める感情はそれだった。
室内の状況に気付いた様子がなかったのがせめてもの救いだが、より悪いほうと比べてまだマシ程度の救いに用はない。
去り行くイグのんが一定の距離を離れたことを確認すると、クローンゼロは荒い呼気に怒声を混ぜた。
「こ、この―――ッ!!」
「余所見をしてすまないな」
「黙れ下種!!」
誰かそんなことを気に掛けろと言ったか。そもそも余所見も何も最初からクローンゼロなど眼中にないだろうに。精神を嬲るだけの意味しかない言葉が腹立たしかった。
刹那の間だけ浮かんだ、深読みの出来そうな思考がクローンゼロの中に残る前に、オリジナルゼロは眼下の巨躯を押さえつけて嫣然と微笑んだ。
「安心しろ、私は雑務でも手を抜いたことはないぞ」
喧しい、と、怒鳴る暇さえ与えられるはずもなく。
クローンゼロはオリジナルゼロの気が済むまで時間外勤務に付き合う羽目になったのだった。
クローンゼロは漸く辿り着いた私室の扉を荒く開けると、そのままコートも脱がずにベッドへと直行した。
昨夜までは優雅で穏やかな一人寝を満喫していた身体にとって、硬い執務机での淫行は暴挙以外の何者でもない。
他者の手が肌を這うという行為にある程度は慣らされているのは事実だが、ああもねちっこく責められては身が持たない。
現に今も、散々食い荒らされた身体はボロボロで、いつ誰がくるとも分からない場所で強いられた行為によって精神は磨耗していた。
クローンゼロは鉛のように重い身体を引き釣り、やっとの思いで寝台に身を投げ出した。
ぎしり、と、巨躯を受け止めた寝台から抗議のようにスプリングが鳴いてクローンゼロを受け止めた。
「―――…ッ」
そこそこの勢いで倒れ込んだクローンゼロは、スプリングが身体を受け止めた瞬間に息を詰めた。
横になりたいという一心のみでの行動は、身体に思わぬ痛みを及ぼしたのだ。
クローンゼロは痛む腰に片手を宛がい、枕に顔を埋めて声にならない呻き声を上げる。
久しぶりに男根を咥え込んだ後孔がジクジクと痛み、まだ中にいるかのような圧迫感が襲ってくる。
適当に処理をされているとはいえ、蹂躙を受けた箇所は熱を孕み、中にはまだ精液とクリームの残滓が残っているようだった。
クローンゼロは屈辱に顔を歪ませると、まるで獣のように唸った。
「―――…あの…絶倫が…ッ」
死んでも口を割る気はないが、閨での行為のみに限定すればオリジナルゼロの体力はクローンゼロの上を行くのだ。
加減も何もしなくて良いという一点のみでクローンゼロを性欲処理の相手に宛がっているのだろうが、こちらとて同じサイクルで仕事を処理しているのだ。
いや、仕事の有無に関わらず、オリジナルゼロの機嫌だか気分だかだけで身体を暴かれるのは業腹だった。
こちらの都合はまるで考えずに、好きに振舞う様はクローンゼロより余程悪辣だ。
今日中にせめてもう三件、片を付けておきたかった案件があったのだが全て明日へと回してしまった。
「……大体、あの小娘にかまけて処理速度を落としているのは何処のどいつだ。己のことは棚上げしおって…腹立たしいッ!」
「あら。ゼロの書類が少ないなーって思ってたけど、やっぱり貴方だったの?」
「――――……小娘。何処から入ってきた」
「ちゃんとドアからよ? あ、ノックは忘れちゃったかも」
顔の半分は枕に埋めたまま、じろり、と下から睨みつける。
凶悪な視線の先に金髪の幼女の姿を認め、クローンゼロは重い身体を出来る限り俊敏に起こした。
侵入に気づかなかったのは迂闊というより他ないが、互いの実力さを鑑みれば致し方ないことだ。
けれど、一度侵入者がいると認識してしまえば、これ以上無様な姿を晒しているのも憚られた。
身体は悲鳴を上げて、今にでも寝台へ戻りたいと訴えるのを理性で捻じ伏せる。
無論、理性で捻じ伏せたとしても許容量が増える訳でもなく、クローンゼロは寝台の上で座位を保つのが精一杯で、それ以上の動きは出来そうもない。
ある程度の妥協は仕方ない。そもそも礼を欠いてまで侵入してきた小娘に対して持て成す義理もない。
そう結論付けたクローンゼロは、珍しくも寝台に座り込んだままの姿を他人に見せるという、今までの彼なら決して見せなかっただろう怠惰な一面を晒して見せた。
その姿にイグのん顔をまずは驚きが支配し、次いで、酷く愉快そうな笑みが頬へと刻まれるが、それをクローンゼロが見咎めることはなかった。
ドアから入ってきたという自己申告を裏切るように開け放たれた窓枠に腰掛ける幼女へ向かって、面倒臭そうな低音が紡がれる。
「―――あの男との馬鹿げた痴話喧嘩はどうした」
「うわ、珍しい。心配してくれてたの?」
「戯言を抜かすな。この場所を破壊されたくないだけだ」
もっと言えば、オリジナルゼロの度の越した八つ当たりをこれ以上受けたくなかったし、更に加えるなら今日のように淫行を他者に目撃されるかもしれないという嫌な綱渡りをしたくなかった。
万が一にも億が一にも誰の目にも晒す気はないが、オリジナルゼロとクローンゼロの淫行が誰かに目撃された場合、割を食うのは確実に我が身の方なのだ。
例え押し倒され、男根を咥え込まされ、どう見ても和姦ではない状況だとしても、オリジナルゼロの外面が完璧である限り、誘ったのはクローンゼロだろうと糾弾されるのは目に見えている。
鬱々と腹に溜まる苛立ちは、久方ぶりの陵辱で奪われた体力と気力に比例して加速していき、八つ当たりだと分かっていながら全ての元凶に怒りの矛先が向いてしまう。
それでも現状で野試合に発展した場合、絶望的なランクの差を我が身を持って思い知ることになるだけだと、なけなしの理性を掻き集めて眉間に深い皺を刻むだけで己を留めた。
そんなクローンゼロの不機嫌そうな顔が面白いのか、はたまた興味がないだけか、鈴のように耳に響く幼い声は風に乗って歌うように口を開いた。
「オロチくんも反省したみたいだし、そろそろ帰ろうとは思ってるよ」
「今すぐ帰れ」
「偶の里帰りは女の特権なの」
「黙れ小娘が」
コロコロと笑う姿は幼い容姿とは裏腹に、さながら女帝のような傲慢さをチラつかせている。
その笑みは、実父たるイグニスよりも、教育係であったオリジナルゼロのものに近い。
確実にこの幼女がこんなにも性悪に育った主原因はヤツだろう。と、クローンゼロは眉間の皺を深くした。
よくもここまで嫌なところばかり似たものだ。しかも、ちゃっかりと使いこなしているから尚性質が悪い。
クローンゼロは臓腑の底から吐き出すような、これ見よがしな溜息をついて、片手を振った。
世間話程度ならばクローンゼロでなくても、それこそオリジナルゼロでもイグニスでもいいはずだ。
何が悲しくて磨耗している精神状態で小娘の相手などしなければいけないのか。
「私がいると髭にも良いことあると思うけど」
まるで猫の子を追い払うような手の動きに、イグのんはそれこそ猫のように大きな目を細め、含み笑う。
掛け値なしの美少女が浮かべる微笑は、世のロリコン共が見たらさぞ喧しいだろうと思える程度には絵になった。
けれど、それを素直に口にするクローンゼロでもなく、イグのんの発言を鼻で笑う。
散々に迷惑と被害を受けているクローンゼロにとってこの数日間良い事などあった例はない。
適当なことを言うにしても、もう少し頭を捻れ、と、クローンゼロが口を開いた瞬間。
「夜は一人で寝れてるでしょ?]
人類滅亡を謳う夫に寄り添う破滅の女神が、手にした鎌をこちらに向かって振り下ろした。
「―――――――――――」
迂闊にもバッサリと切り捨てられ、無様にも一切の動きを凍りつかせたクローンゼロへと微笑むと、綿のように軽い体は窓辺から離れ、扉へと向かっていく。
その背を呆然と眺めているクローンゼロの頬を、窓辺から流れてくる風が弄って室内を荒らしていく。
クローンゼロの視線を感じているだろうに、イグのんは振り返りもせず部屋を出て行った。
パタン、と静かに扉が閉まる音を耳が拾ったが、クローンゼロの動きは未だ凍りついたままだ。
全てが凍りついている状態で、うっかりと思い出したのはオリジナルゼロに犯され貫かれているときに訪れたイグのんの反応。
室内の様子を何も分からないからこその反応だと思っていたあれは―――――室内の様子を全て分かっていたからこその反応だったのではないか?
突き詰めれば自らが不幸にしかならない仮説を立ててしまったクローンゼロはすぐさま全ての思考を放棄して、風に波打つシーツの海に倒れこんだ。
クローンゼロの私室から出てきたイグのんは足取り軽く廊下を歩いていく。
暫くそうしていると、慣れた気配がイグのんの後ろに来たのが分かった。
長い足に似合わないゆっくりとした速度は、幼い足取りに追従して静かに廊下を進んでいく。
互いに言葉は交わさないまま、まるで散歩のように無目的に歩を進めていると、不意にイグのんが小さく笑気を漏らした。
「いいんじゃない? ゼロは頑張ってるし、ボーナスくらい貰っても」
唐突とも言える言葉に、けれどオリジナルゼロは驚いた様子も見せなかった。
ただ、イグのんの言葉に満足そうに笑みを深め、まるで高貴な姫に傅く騎士のように頭を下げた。
その何処か芝居がかった仕草に、イグのんは一層愉快そうに笑ってみせる。
いつも人当たりが良すぎて甘えてばかりいる教育係が望むのなら、人の一人や二人くらいは喜んで差し出そう。
小物に見えて割と有能な苦労性の重役にとっては残念なことだが、オリジナルゼロがイグのんに甘いように、イグのんとてオリジナルゼロには甘いのだ。
きっと今頃盛大な寒気を感じているだろうクローンゼロに気のない謝罪を念じて、イグのんは軽やかな笑みを廊下に響かせる。
「でも、ゼロってあんまり趣味良くないね?」
「同感です」
即答された言葉は上の者を立てるだけの意味しかなく、真実は別にある。
イグのんは有能で頼りになるのは確かだが、それ以上に性質の悪い教育係に小さな肩を竦めて見せた。
クローンゼロの預かり知らない場所で、着実に外堀工事は進んでいる。