M25 ただの物置。

黒龍の優雅な晩餐



!注意

ルガール×カリスマヨハンで殺伐としたR18話。
ルガールは紳士ではありません、やや原作よりの性格かもしれません。
それでもキャラ崩壊、ご都合主義、ヤリタカッタダケー等に拒否反応が出る方は閲覧を御遠慮下さい。


========================


天空を貫くように高い宮殿の最上階で、ヨハンは薄っすらと暗闇に転じていく空を眺めていた。
視界を遮る壁を取り払い、屋根を支えるのは細工の施された太い柱のみ。
円形の部屋の中央には、紫色の怪しい光を放つ炎が揺ら揺らと踊り、照明もないその空間を辛うじて闇から守っていた。
ヨハンは天空から地上を見下ろす神のように尊大な視線で何処とはなしを眺め、次いで、視線のみを泳がせた。

「―――…」

視線が向かうのは、唯一地上へと続く階段だった。
ゆっくりと、しかし、確実に階段を踏みしめる音が遠くから聞こえたのだ。
気配を殺してはいないから、ヨハンにはまるで見えているかのように階段を上る人物の動きを察知することが出来た。
ヨハンの配下にこの階段を上ることを許した覚えはなく、また、その気配もヨハンの知る物ではなかった。
少し前まで階下が騒がしかったことと関係しているのだろうと当たりをつけていると、闇に彩られた奥から、赤い色が、のそりと蠢き、その姿を現した。
長身で鍛えられた肉体に見合う闘気と殺気を身に纏った男に、ヨハンは愉快そうに目を和ませた。

「ここへヒトが上ってくるとは珍しい」

目を細めるヨハンに、来訪者は静かに階段を上りきるとヨハンへと歩み寄る。
一歩近寄るごとに血の匂いが強く馨る。
ヨハンはふむ、と指先で顎鬚を撫でると、確かめるように口を開いた。

「客人は丁重に迎えるようにとは言付けていたが…役者不足だったようだな」
「歯応えがない上に三文役者だ。龍を名乗るならもう少しマトモな手駒を用意しておくことだな」

丁寧に食い殺された配下はきっと階下で肉塊となっているだろう、と容易く想像が出来た。
男の服装は赤く、それが元々の色なのか、それとも血を吸ったからそうなったのか分からなかったが、趣味は悪くない。
ヨハンは暇つぶしが勝手にやってきた僥倖に微笑むと、男に向かって僅かに首を傾げた。

「名を聞こうか、客人」
「ルガール・バーンシュタイン」

ヨハンはその名を舌の上で嬲る。裏社会では割と有名な名だ。
強者ばかりを集めた大会の主催者だとか、生粋の戦闘狂だとか。
オロチだとかいう一族を調べれば、高確率でヒットする名前でもあった。
他の何にも眼中になく、ただひたすらに力を求める男だと聞いていたヨハンは、ルガールがこの場に来た理由を正しく理解すると、小さく頷いた。

「なるほど。黒龍にまで手を出そう、という腹か」
「そういうことだ」

問いかけでもない確認の声に、ルガールは尊大に頷いて見せた。
人工色に煌く右目は暗闇の中でも煌き、それが獣の瞳孔のように思えた。
ヨハンはゆっくりとコートを肩から落とした。
その濃紫色が床に着く前に、ヨハンの気に当てられて炎に巻かれると、ルガールの視線が興味深そうにヨハンへと注がれる。

「三文役者を当てた詫びだ。―――お相手致そう」

それと分かるほどの闘気を纏えば、ルガールの頬にも笑みが浮かぶ。
逞しい喉仏を揺らしながら、ルガールもまた戦いの構えを取った。

「……貴様の力、取り込んでくれよう」

傲慢に嗤うルガールに、ヨハンは腕に力を纏わせることで応える。
全ての音が二人の闘気に当てられて一瞬止んだのち、狂気の死闘が幕を開けた。





長い戦いの後に、最後に立っていたのはヨハンだった。
消耗はしているものの、そもそも人の身ではない身体ではそう簡単に消滅することはない。
軽く呼気を吐いて疲労を受け流すと、視線をルガールへと向ける
己の負けを認めると同時に自爆を選んだルガールを、ヨハンは容易く現世に引き留めた。
くすんだ金髪を鷲掴み、首に多大な負担を掛けさせながら顔を反らせる。
ぶちぶちと頭皮から髪が抜け、手に絡まる。
ヨハンの手はルガールの血で染まっており、金髪が赤く斑に染まっていく。
金色の太陽が黄昏を迎えた様に似ていて、ヨハンは紅玉の瞳を和ませながら喉奥で嗤った。

「悔しいか?」
「……力が得られないのが、惜しくはある」

猫撫で声で問いかける勝者の声に、敗者たるルガールはしっかりした声で答えた。
声を出したことで、ルガールの口端から血が流れる。
口内を切ったというより、内臓へのダメージが大きいのだろう。
独特の喘息音が聞こえないから肺は無事だろうと判じたヨハンは、すい、と顔を寄せた。
近づけば、濃い血の匂いが鼻を付いた。
ヨハンに、そしてルガールにとって最も身近なそれは戦場の芳香だ。
穢れを知らぬ天上には決して存在しない、勝者と敗者の絶対世界にのみ馨る甘く苦く暗い香り。

「そんなに強くなりたいのか?」

ほの暗い香りに満足げな吐息を零しながら、ヨハンはルガールに問いかけた。
敗者への問いかけは、勝者にのみ許された特権だ。
ルガールもそれを心得ているのか、抵抗することなく血に染まる唇を動かした。

「戦いは酒と同じだ。知らぬものはソレに飢えることはないが、知ってしまえばより強いモノを求めずにはいられん」
「ほぅ?」

酷く演技がかった仕草で、ヨハンは首を僅かに傾げた。
彼の長く豊かな赤髪が、肩から落ちてルガールの顔へと触れた。
毛先は確かにルガールの血を吸ったが、その色は深みを増すことなく泰然とした赤を保った。

「では、力を得て何を成すのだ?」
「何を?愚問だな」

敗者の血では汚すことすら出来ない赤の勝者は最後と言わんばかりにそう問うた。
この問いに答えたが最後、ルガールは生きてはいまい。
そう理解し、把握したルガールはしかし、黙することなく問いに答えた。
命を惜しんで生き永らえたとしても、それは力を望み奔放に生きたルガールではなくなる。



「戦い続けることに意味がある。果てることない力と力のぶつかり合いだけがこの渇きを癒してくれる」



ルガールは死ぬために戦っている訳でも、生きるために力を望んでいる訳でもない。
どうしようもなく、耐え切れないほどに身が渇くから戦いに身を投じているに過ぎない。

血を流し、屍を築き、死すら舞踏の相手する殺し合いだけが、狂うほどの渇きを癒してくれる。

語りながら、戦いの高揚感を思い出したのか、ルガールの目が恍惚の色に染まる。
うっそりと、数多の色を混濁させて創ったかのような黒を彷彿とさせる、狂った笑み。
ルガールにとって、戦いは酒であり、女であり、安らぎであり、悦楽であり、すべてを超越する衝動なのだろう。
ヨハンは禍々しいまでに貪欲なルガールを嗤った。
戦いの名残で至るところが軋む室内に、ヨハンの哄笑が木霊する。

「自ら滅びの道を選ぶか」

ルガールの生き方は文字通り破滅の道だ。
果てない輪廻の終着点は、ルガール自身の滅びでしかない。
血を啜り、骨を砕き、命を潰すルガールの先など、誰の目にも明らかだ。
今までルガールがしてきたように、やがてはルガールも血の報いを受けることになるだろう。
憐憫すら混じるヨハンの目を、ルガールは鼻で笑って一蹴する。

「私が滅べばそれだけの男だったというだけだ」

最後まで戦いの中で生きて、戦いによって死ぬことを選んだ眼。
自らの血に濡れたルガールの目は獣のそれだった。
戦いを止めて平穏に生きるより、路傍に屍を晒す方が本望だという、狂気を孕んだ独白を聞きながら、ヨハンはぞくり、と背筋を粟立たせた。
悪寒よりもずっと興奮を得られる感覚に背筋を苛まれながら、熱を含んだ吐息を漏らす。

「黒龍の力は人には過ぎた力。手に入れるには犠牲を払わねばならない」
「元より承知の上だ」

心地良いまでに貪欲な返事に、ヨハンは一層笑みを深めた。
まるで夜の闇のように純然とした黒い笑顔に、僅かにルガールが訝しがるような視線を向ける。
その視線を受け、ヨハンはゆっくりとルガールの顎に手を掛け、顔を上向かせる。
無理な負荷が掛かったことにより、ルガールの首が嫌な音を立て、眉間に皺が寄った。
しかし、その表情はすぐに驚愕によって崩された。
上向いたルガールの唇を、ヨハンが己のそれで塞いだのだ。

「―――ふ……ん…」

ぴちゃぴちゃと、唇の端から流れる血を丁寧に舐め取り、舌を口腔へと差し入れる。
ルガール自身の血を舌へと落とし、舌先を触れ合わせて互いにその味を共有する。
口の中まで切っているルガールにとって、器用なヨハンの舌で擽られるのは痛くはあったが、そんな痛みは常のものに比べれば酷く些細なものだ。
一瞬の驚愕が去ると、ヨハンにとっては意外なことに、ルガールも舌を絡ませて応えてきた。
血に濡れた腕を持ち上げ、ヨハンの腰を捕らえるのに抵抗せず、ゆっくりと自重をルガールへと傾けていく。
ねっとりと互いの呼吸すらも牽制しあうようなキスを繰り返し、銀糸を引きながら唇を離すと、ヨハンはうっとりとした視線をルガールへと向けた。

「……、差し出せ。お前の矜持と肉体を」

これ見よがしに下肢を密着させ、欲の孕んだ瞳を合わせればその言葉の持つ意味など一つしかない。
ルガールは傷だらけにも関わらずその誘いに応じた。
顎を僅かに持ち上げて、ヨハンに口づけると、心底愉快そうに喉を鳴らした。
そうして、ゆっくりと赤い髪に埋もれる首筋に歯を立てたのだった。




ルガールの眼下で、赤い髪が床へと広がって、まるで血の海のように揺らめいている。
戯れのように腰を動かせば、髪が大きく波打ち、悦楽に耐える紅玉が僅かに震えた。
その癖、ルガールが収まっている後孔は貪欲に蠢き、絶えずルガールに愉悦を伝えるのだか、可笑しなものだった。

「ドラゴンパピーが女の真似事をするとは意外だな」

ルガールは蠕動を繰り返す内壁を深く抉ると、そう囁いた。
衝撃にピンと張った足には綺麗に筋肉が付いていて、張りがある。
うっすらと汗を浮かべる足を捕らえて撫でると、組み敷いた肢体から苦しげな笑気が漏れる。

「ふふ、滾らせながら言っても滑稽なだけだぞ?」

ヨハンがこれ見よがしにルガールを締め付けると、余裕ぶった相貌が微かに歪んだ。
ルガールとて否定できないほど興奮し、滾らせているだから人のことを糾弾できるはずもない。
他人の脈動を腹の中で聞きながら、ヨハンは挑発するように足をがっしりとした腰へ回した。
反り返った自身は痛いほどで、内壁を押し上げる圧迫感は耐え難いほどだったが、それでも篭絡されてしまうのは面白くない。
上がりそうになる嬌声を喉の奥で何度も殺して、ルガールの腰を熱に溶かされた身体へと引き寄せる。
奥深くまで男根を飲み込み、僅かにヨハンの喉が引きつる。

「―――くく…ッ」

ルガールは内側から及ぼされる熱に体躯を火照らせながら、それでも優位に立とうとするヨハンを嗤った。
生理的な涙を眦に溜め、熱い吐息を繰り返す様に、ルガールの腹から情欲以上の欲が沸き起こる。
獣のように暴力的なまでの支配欲。
自身を打ちのめし、絶対的な力を身に纏う男がルガールの熱に悦がっている事実は、その欲を加速させる。
ルガールは両手で腰へと絡むヨハンの足を抱えると、そのまま断りもなく穿つ速度を速めた。
今までの牽制しあうような抽出とは一線を画す速度に、ヨハンの双紅が見開かれ、雫が頬を伝った。

「ぐッ―――が…ッ…ぁッ!」

殺し損ねた嬌声が呻き声となって、次々に零れ落ちる。
腹の中で暴れる熱に翻弄され、静止を求めて狼藉者の肩に手を掛けるが、与えられる快楽に指先が引きつって巧くいかない。
抱えられた足の先も、つま先まで力が入り空を掻いただけに終わる。

「どうした? 腰が揺れている」
「だま…れ…っ!」

指摘されて、ヨハンは頬に朱を走らせた。
ルガールの言葉通り、身体のそこかしこは悦楽で引きつっているものの、腰はより強い快感を求めて淫らがましく揺れ動いていた。
指摘され、自覚してしまえば自らの痴態に耐え切れず動きを抑えようと試みるも、それを咎めるように奥深くを拓かれれば全ての思考は波に飲まれる。

「ふ…ッ…、んげん…風情…がッ」
「口だけは達者だな…」

矜持を掻き集めて睨み付ければ、穿つ速度を保ちながら足に舌を這わせてきた。
肌に浮かぶ汗を舐め取り、脹脛に朱印を残す。
足に残る点々とした赤い痕は酷く卑猥な色を放ち、ヨハンの羞恥を煽ってくる。
顔を歪ませるヨハンに気を良くしたルガールは口元に笑みを湛えながら濃密な淫液を零す陰茎に指を絡めた。

「ほら、コレでもまだそんな口が利けるか?」

唆すような物言いと同時に陰茎を摩擦すれば、ヨハンの内壁が戦いてルガールを一層締め付けた。
当然、ルガールが感じる快感も凄まじいものだったが、前後を同時に嬲られるヨハンの悦楽はそれを凌駕する。
逞しい体躯が震え、開いたままの口からは唾液と共に掠れた嬌声が搾り出される。

「う…あ…ァ――――ッ」

骨に響くように身体を貫かれ、ヨハンは無音の嬌声を上げてルガールの掌に欲を吐き出した。
互いの腹を白く汚すと、ルガールもまたヨハンの中に逐情する。
腹の中に重く熱い熱を感じてヨハンの腹が戦くと、ルガールは満足そうな吐息を零した。
熱い呼気がヨハンの肌を滑り、背筋が震える。

「中々楽しめたな」

汗とルガールの血を吸って、しっとりと重みを増した赤い髪を掬い上げると、剣呑な赤眼が鋭くルガールを捕らえた。
それに取り合わず女のように長くはあるが、髪質は硬く、男のものであると認識できる髪を弄くりまわす。

「黒龍はヒトではないと思っていたが…喰べ応えがある」

喉奥で笑いながら、荒い息を繰り返すヨハンを茶化すと、髪を介して指先にどろりとした力が伝わってきた。
ルガールが欲している、ヨハンという人間の皮を被った黒龍と呼ばれる『何か』の力。
その力に殺されかけたにも関わらず、ルガールは強く髪を握りその力を捕らえようとする。
一向に懲りない様子のルガールに、今度はヨハンが笑う番だった。

「………黒龍を喰らうか、悪食め」
「なんとでも。美食も悪食も腹に入れば皆同じだ」

息を整えたヨハンが緩慢な動作で僅かに身を捩ると、赤い髪の流れが変わり、捕らえられていたルガールの手から逃れる。
しっとりとした髪が手から離れると、ルガールは少し惜しそうな顔をしたが、すぐにその顔は傲慢な色へと染まる。
まるで空のように移り代わりの激しい男だ。ヨハンは声に出さずそう思った。
天高く何者にも汚されない色をしているかと思えば、容易く汚染されて色を変える。
今まで晴れていたかと思えば、行き成り豪雨が容赦な大地を水で満たす。
無慈悲かつ、無感動。それでいて、子供のように無邪気で残酷なルガールに、不思議と嫌悪感は沸かなかった。
それが酷く可笑しい気がして、ヨハンは喉の奥で笑みを殺した。

「強欲かつ傲慢な、人間の典型のような男だな」
「自らの魂のまま生きぬ道に如何程の価値も見出せんのでな」

その笑みをどう取ったのか、ルガールの手が再びヨハンの髪に絡む。
絡め取られた赤髪をそのまま力任せに引っ張ると、ヨハンを自らの方へと引き寄せる。
急な動きについていけず、まともに体勢を崩すと、根元からブチブチと嫌な音と痛みが及ぼされ、ルガールの指に奪われた赤い髪が幾筋かその手の内に残る。
痛みと衝撃で一瞬顔を顰めるヨハンに心の底から邪悪な笑みを浮かべると、ルガールは自身の血が流れる唇を舐めて見せた。

「黒龍の力、全て取り込んでくれよう」
「愚か者め。貴様の手に収まるほど、黒龍は小さくはないぞ」
「物の大小など細かいことだ」

闊達に笑いながら、男を受け入れたことで消耗しているヨハンに容赦なく喰らいつく姿は紛うことない獣だ。
あれだけ叩きのめしたのだから、内臓へのダメージも相当だろうに、ヨハンの肌を這う掌は力強い。
ヨハンは今度こそ、殺すことなく笑気を漏らした。
上下する喉仏に歯列を感じて、笑みは留まるところを知らない。

「……良いとも。喰らえ、黒龍(わたし)を」

身体を這う掌が散々嬲られた後孔をなぞる。
赤く熟れて殊更敏感になった箇所は指の感触に震えながらも貪欲にルガールの熱を食み、奥へ奥へと誘い込む。
悦楽に犯されていく身体を自覚しながら、ヨハンはうっそりとした笑みを浮かべた。

「――――……喰えるものなら、な…?」

小さく呟いた声すら黙殺されて、ヨハンは快楽の渦へと呑まれていく。
ふと視線を外へと投げれば、空は完全に夜の色へと転じて、深い闇だけがあたりを満たしていた。
夜の気配を何処か遠くで感じながら、ヨハンは愚かしい獣に腕を回して、深淵にも似た笑気を夜に混ぜたのだった。



TOP
Template by KKKing