M25 ただの物置。

ブラックラインの攻防



!注意

ジェネラル×オズワルドでR18話。おまけでゲーニッツ×ヨハン(カリスマ)描写あり。
某尖兵動画基準で、昔ジェネラルがヨハンの悪行を止める為に性的なやんちゃしたとか言うとんでもない話が前提。
(某所に投下した続編的な代物、前作を知らなくても読めると思います)
ヘタレ全開ジェネラル、紳士ではないオズさん、性悪カリスマヨハンなどが生息します。
なんちゃって3P(ジェネラル×オズワルド前提ヨハンは野次馬)、キャラ全壊等が苦手な方は回避推奨。


========================


爽やかなアールグレイの香りが部屋に満ち、精神を落ち着けさせる。
戯れで薄く開いた窓からは、暖かい風が密やかに忍び込み、紅茶の香りと陽光の香りが混ざって柔らかく頬を弄った。
ジェネラルの頬を擽った悪戯な風は、向かい合う人物の髪も揺らして部屋の奥へと進んでいく。
風に揺らめく髪の色は夕暮れに近い赤。豊かな髪は一つに結ばれ、同色の瞳はジェネラルへと固定して、小さく笑んで見せる。

「枯れ老いた男を番にするとは、激しい趣旨換えだな?」

しかし、整った顔から紡ぎだされた言葉は酷く下世話で、ジェネラルは眉に皺を寄せた。
その反応に、龍蛇の瞳が愉快そうに細められ、薄く開いた唇から笑気が漏れる。
笑みを隠すように紅茶を啜ってはいるが、真剣に隠す気はないのだろう、逞しい肩が揺れていた。
ジェネラルは自身のカップをソーサーへと戻すと、咎めるような視線を向けた。

「彼への侮辱は止めてくれないか」
「ふふ…私には陵辱の限りを尽くした男が何を上品ぶるか」

さらりと返された言葉に二の句がつけず、ジェネラルは口を噤んだ。
目の前の
来訪者はヨハン・カスパール。人の形をしているが、その本性は人ではない。
人型の人外など取り立てて珍しくもないが、問題はその相手を、本人の申告通りに犯した過去がある、という一点に尽きる。
無論、昔のことではあるが、加害者側が被害者側に時効を主張するなど出来るはずもない。
当時ですら痛手を受けた様子もなく、今も笑みを浮かべて上機嫌に笑みを転がしている様子の相手を被害者と定義するのは些か抵抗を感じないわけではないが、若気の至りだと切り捨てるほど若くはなかった。

「………その件に関しては返す言葉もないが、今の私には彼だけなんだ」
「今の…なぁ?」

含みをたっぷりと持たせた囁きに、ジェネラルは小さく肩を竦めた。
若い頃は今思い出しても頭痛を覚える程度にはやんちゃをしていた記憶がある手前、何も言えなくなってしまう。
流石にジェネラルの夜遊び関連をヨハンが全て知っているとは思いたくないが、片鱗を知られているのは事実だった。
ぐうの音も出ないジェネラルの姿が面白いのか、ヨハンは唇を弧に歪ませて目を和ませた。
人外然とした縦長の瞳孔は笑気を含み、視線でもジェネラルをからかってくるのだから始末に悪い。
ジェネラルは溜息を紅茶へと吹きかけて僅かに温くなった紅茶を口へ含んだ。

「―――…ヨハン、用がないならそろそろ帰りたまえ」
「まぁそう言うな」

紅茶一杯で長々と居座り続けるヨハンに痺れを切らしたジェネラルが、言葉を選びながらも帰宅を促した。
そう強くは言えないものの、かれこれ三時間近く、ヨハンの言葉遊びに付き合っているのだ。
程よいところで穏便に退場を願わなければ、このまま夜になるまで居座りかねない。
ジェネラルが一人暮らしかつ、独り身ならば、加害者側の当然の贖罪として深夜まででも付き合う気はあるが現実はそうではないのだ。
そんな心情を重々承知しているだろうに、ヨハンはにっこりと笑みを深めて見せる。
僅かに傾げられた髪が波打ち、まるで大輪の薔薇が咲き誇ったかのようだった。

「―――お前の番に挨拶の一つくらい、しても良かろう?」
「ッ!」

その一言に、漸くジェネラルは玄関の外の気配に気づいた。
ジェネラルの想像以上に、目の前の男に意識が向いていたのだと気づいても既に遅い。
気配は何の疑いもなく帰宅の声を室内に響かせ、真っ直ぐにリビングへと近づいてくる。
頭を抱えたくなる衝動をジェネラルが何とか押さえつけていると、ヨハンは澄ました顔で紅茶を啜っていた。
それが酷く様になっていて、八つ当たりだと分かっていながらも3wayを飛ばしたくなる。

「閣下、向かいのレストランが改装したようですよ。今度―――」

中折帽を片手で弄び、他愛ない報告を口にリビングへと入ってきたオズワルドは僅かに目を瞬かせて驚きを表した。
幾度かトーナメント会場で顔を合わせた間柄なれど、オズワルド個人としては余り面識がないヨハンがソファで優雅に足を組んでいたのだから当たり前のことだ。
しかし、オズワルドは紳士然とした空気を壊すことなく、人当たりの良い笑みを浮かべて歓迎の言葉を口にした。

「―――珍しい組み合わせですね?」

それでもやはり、接点があるとは思えないジェネラルとヨハンの関係が気になるのか、小さく首を傾げて見せる。
オズワルドが知らない知人などジェネラルには数え切れないほどいるのだろうとは思うが、共に暮らし始めてから自宅に誰かを招いたことはなかったのだ。
若干の好奇心と小さな懸念、けれど大部分は純粋な疑問として問えば、ジェネラルからではなくヨハンから返答が返ってきた。

「別段珍しくもないが?」

オズワルドの問いに、鳩の血のように深い赤の瞳が微かに和んだ。
笑みの浮かぶ唇も僅かに色づいており、同性でも思わず見惚れてしまいそうな艶がある。
男前な方ですねぇ、と心中で呟くも、オズワルドにはそれ以上の感慨は浮かばない。
それよりも、過去ジェネラルとタッグを組んだわけでもないヨハンが珍しくない組み合わせだと言ったことの方が気になった。
無粋な邪推だという自覚はあるが、思わず確かめるようにジェネラルへと視線を移した。

「そうなんですか?」
「―――……古馴染みだな」

サングラスに隠された瞳に虚偽を言うことが出来ず、ジェネラルは差し障りのない言葉を返した。
ジェネラルとヨハンの関係を指すにあたり、ある意味では正しい形容なのだが、それでもオズワルドを騙していることに変わりはない。
かといって真実を言えば傷つけるだろうし、もっと突き詰めれば、真実を言って嫌われることが怖かった。
数多の死線を掻い潜ってきたジェネラルとて人間なのだ。恋をすれば臆病にもなる。
けれど、ヨハンはそんな人間味溢れるジェネラルの葛藤を見咎めると、それはそれは愉しそうに喉を鳴らした。
気に入った玩具を前にすることなど決まっている。
ヨハンは爆弾だと自覚している言葉をするりと唇から滑らせた。

「随分前に肌を重ねた、な?」

破壊力抜群の言葉に、オズワルドとジェネラルの視線が一斉にヨハンへと向かう。
二対の瞳を一手に引きつけたヨハンは腹の底から湧きあがってくる笑気に口元を押さえつけた。
オズワルドは一瞬ヨハンが性質の悪い与太話を始めたのかと思い、困惑したようにジェネラルへと視線を移した。

「ッヨハン!!」

しかし、視線がジェネラルへと移動しきるまえに、ジェネラルが諌めるようにヨハンの名を呼んだ。
ジェネラルが声を荒げることも珍しければ、こんなにも動揺するところも珍しい。
思わずジェネラルとヨハンの顔を交互に見比べ、次いで、唐突にヨハンの言葉が正しかったのだと理解した。

「――――……は?」

大混乱の渦に放り込まれたオズワルドは、酷く間の抜けた声を漏らして呆然とした。
事実を事実として理解したものの、決して衝撃が小さいわけではない。
むしろ受けた衝撃が大きすぎて一切のリアクションが凍りつき、その場で硬直してしまった。
人生初の修羅場という渦中にオズワルドを叩き込んだヨハンはと言えば、自身へと詰め寄るジェネラルへと微笑みかけている。

「ウハハハ。何を慌てることがある。事実だろう?」
「―――…昔のことを勝手に口にするのはマナー違反だぞ…ッ」
「昔のことにしているのはお前だけだ」

特徴的な笑い声でジェネラルをからかうヨハンは、意味ありげな視線を刹那の間だけオズワルドへと向けた。
その視線に、固まっていた身体が僅かに動くも、回復にはまだ遠い。
オズワルドのその様子が気に入ったのか、まるで見せ付けるように鍛えられた肢体をジェネラルへと摺り寄せた。
猫科の獣のようにしなやかに腕を伸ばしジェネラルへとしな垂れかかると、無骨な掌がボトムの内側をそろりと撫で上げる。

「―――私は今でも……お前を忘れていないぞ…?」

まるで猫のように高飛車に囁くヨハンは確かに艶がある。鍛えられた身体に、恵まれた容姿、低く穏やかな声。
豊かな赤い髪が張りのある肌を流れて、同色の瞳はうっとりと細まった。
確かに、年齢性別問わず人が狂いそうな色香がある。それは認める。むしろ、認めざるを得ない。

けれど、だからと言って。

オズワルドは数歩の距離を瞬く間に詰めると、ヨハンとジェネラルの間に割り込んだ。
三人分の体重を受けて、猫脚のソファがぎしりと鳴ったが取り合わず、力任せに二人の間に距離を作る。
常の紳士然とした空気を払拭したオズワルドらしからぬ行動にジェネラルの目が丸くなる。

「オズワルド…?」
「お話は良く分かりましたが、今の閣下は私のものです。差し上げる気もお貸しする気もありません」

ジェネラルの何処か困惑したような視線を感じないわけではないのだが、それよりも未だ愉しげに笑っている龍へ牽制するのが先だ。
腕の中にジェネラルを仕舞いこみ、敵意の満ちた視線でもってヨハンを貫いた。
長らく暗殺者として闇と共にあったオズワルドの人相の悪さは折り紙つきだ。
嫌な迫力ばかりある眼光を駆使して不快を露に睨みつけるも、ヨハンは一向に気にした風もなく首を傾げて見せる。

「一晩でも構わんぞ」

さらり、と流れる髪はまるで炎のようで、首を傾げたせいで伸びた首筋は匂い立つような色香を放っていた。
動作の一つ一つに含みがあり、手馴れている感が嫌でも伝わってくる。
ジェネラルともそうやって褥を共にしたのだろうか、という邪推が脳裏を過ぎり、腕に必要以上の力を込めた。

「お引取りください!!」

到底オズワルドが許容できるはずもないことを飄々と口にするのだから性質が悪い。
言ったヨハンですら、その言葉に頷くなどと思っていないのだと、雄弁に赤い瞳が物語る。
それでも、ヨハンの視線はオズワルドの腕の中へと注がれている。
視線を辿らなくても分かる。目の前の龍の目当てはオズワルドの宝なのだ。
けれど、腕の中の掛け替えのない宝を渡す気は一切ない。
無論、色々問い詰めたくはあるものの、それは一対一で話すことにして、断固として拒絶の言葉を発すればオズワルドの激昂など何処吹く風というようにヨハンは口を開いた。

「そちらがそうは言ってもな…ジェネラルとて男だ。老体では満足できない夜もあるだろう」
「随分下世話な話に持っていくのですね」
「好きだの愛してるだのと囁くだけで済む関係などではあるまい?」

低く唸り声を上げるオズワルドに、ヨハンは両手を挙げて肩を竦めて見せる。
嫌に芝居がかっている仕草は、ヨハンに頗る良く似合う。
本来なら、大切な宝を狙われるのは龍の方ではなかっただろうか。
MUGEN界ではお伽噺すら一筋縄ではいかないらしい。

「……お話する義理はありません」

奥歯を噛み締めるように切り捨てれば、ヨハンは喉奥で笑みを噛み殺した。
必死になっているのはオズワルドの方だ。
ジェネラルが若さや色気を重要視しているとは思わないが、ないよりはあったほうが良いだろうし、ヨハンの下世話な指摘も全くの的外れであるとは思えなかった。
確かに、現役軍人のジェネラルと引退した暗殺者であるオズワルドでは基礎体力が違いすぎる。
閨の中でも、先に意識を飛ばすのはオズワルドの方で、ジェネラルには物足りないのではなかろうかと人知れず悩んだこともあった。
そんなかつての懸念を見透かしたように、ヨハンは攻め手を緩めず着実にオズワルドの戦意を殺いでいく。

「どうせジェネラルに悦がらせられるだけだろうに。咥え込むのは下の口だけか?」
「ヨハン…それ以上言うと怒るぞ」

今まで口を挟めなかったジェネラルは、ヨハンの暴言を鋭く諌めた。
昔の弱みがあるためそう強くは出れないが、オズワルドに対しての侮辱を聞き逃すことはできない。
殺意すら孕むような怒気を受けながら、ヨハンはうっそりと瞳を細めた。
やはりジェネラルの怒気は心地良いと心中で零しながら、それでももっと怒らせてみたくて、唇を弓なりに反らせた。

「ふふ、そら旦那が出てきたぞ」

ヨハンのからかいに、オズワルドの中で今までギリギリと負荷を掛けられながら引き絞られた精神の糸が切れた。
初めてと言っても差し支えないほど制御できない感情に翻弄されているオズワルドには、それが一般的に『堪忍袋の緒』と言われているものだと知る由もない。
けれど、そんな風に自己を律していた線が切れたのだと思わなければ、到底説明のつかないことをしようとしているという自覚はあった。
オズワルドはおもむろに腕から力を抜くと、そのままソファから離れて、冷たいフローリングへと膝を着いた。
不意に解かれた腕と、離れていく体温に、咄嗟にジェネラルの腰が浮きかける。
けれど、立ち上がる前にオズワルドの手がジェネラルの行動を制した。

「―――閣下。座っていてください」
「……オズ?」

ジェネラルの訝しがるような声音が耳に痛い。
自分がしようとしていることがどれだけ恥知らずかは理解している。
現時点で気を失ってしまいそうな羞恥を感じているのだ。
思考の一部はこれ以上は止めておけと喧しく警鐘を鳴らしているのが今でも聞こえる。
オズワルドは意図して羞恥から目を逸らすと、意を決したようにジェネラルのベルトへ手を伸ばした。
驚愕を孕むジェネラルの目と、愉快そうなヨハンの目がオズワルドへと注がれる。

「お、オズワルド!何を…ッ」

ジェネラルの狼狽の混じる声が頭上から聞こえ、自分で仕掛けたことだというのに眦が熱くなる。
むしろ、眦だけには留まらず、熱は首から心臓へと周り、既に全身が燃えるように熱かった。
今までしたこともない行為を自らすることがこんなにも羞恥を掻きたてられるとは思わなかったが、それ以上にジェネラル以外の視線を横顔に感じてこのまま消え入りたくなった。
それでも此処でやめても羞恥が増すだけだと自信に言い聞かせ、オズワルドの行動を諌めるように肩へと掛けられたジェネラルの手を黙殺する。

「ほほう。中々行動力があるな」

笑気を多分に含んだ声に、羞恥で耳が焦げる音を聞いた。
突き刺さるような視線に固まりそうになる身体を??咤して、探り出したジェネラル自身に手を添える。
互いに乾いた皮膚では、手に馴染み辛い。
オズワルドは手に捉えた陰茎の先端に舌を乗せて、唾液で以って乾いた皮膚を濡らしていく。
舌から竿へと伝っていく粘液の感触に、オズワルドの肩に掛かる指が戦いた。

「ッ、いい加減に帰れ!ヨハン!」

僅かに息を詰めたジェネラルは、オズワルドの本気を悟ると頗る性質の悪い観衆と化したヨハンへと声を荒げた。
このまま高まっていく自分を見られる以上に、慣れない奉仕に必死なオズワルドを見世物にする気はなかった。
ジェネラルは視線に力を込めて威嚇するも、オズワルドの思わぬ行動によって動揺した瞳は揺れている。
困惑を抱えたままの青い瞳は酷く扇情的で、ヨハンは赤い瞳を和ませた。

「構わんだろう。見物くらいさせろ」
「君は――――ッ!」

尚も言い募ろうとするジェネラルの声が不自然に途切れる。
まるで二人の会話を遮るように、オズワルドが口淫を強めたのだ。
緩やかに頭を擡げた欲に舌を這わせ、音を立ててキスを繰り返す。
目元に熱を溜めながら唾液で濡れた陰茎の根元を細い指で支える姿は酷く倒錯的で、熱い呼気が心音を加速させる。
刺激に負けて下腹部へと意識が向くたびに、忘れることを許さないようにヨハンがちょっかいを掛けてきた。

「舐めるだけなら犬でも出来るぞ」

言うが早いか、ヨハンの手がオズワルドの後頭部を掴み、力に任せて押さえつけた。
遠慮のない負荷によりジェネラルの欲が一気に深くまで押し進んで、喉奥で酸素が潰れる。
呼吸すら阻まれて、オズワルドの眦に生理的な涙が浮く。
逃げることを許さずに固定する力は強く、オズワルドの喉仏が苦しげに痙攣を繰り返す。

「―――よせ…ッ…」

熱い吐息が零れそうになるのを渾身の力で耐え、オズワルドの頭に掛かる手を払う。
そんなささやかな抵抗をひょい、と軽々しく避けると、必死に奉仕を続けるオズワルドの頬を撫ぜる。
ジェネラルの逆鱗を戯れに引っ掻くように、頬を伝う涙を指先で嬲る。
その手からオズワルドを守りたくても昂まる熱は正直にジェネラルの理性を侵食していく。
初めての奉仕は拙いが、見下ろすオズワルドの表情は必死で、普段とのギャップに脳がじりじりと灼けてくる。
あの穏やかな低音が零れる口に己の欲を含ませているのだという自覚だけで目が眩みそうだった。
理性と本能の狭間で揺れ動くジェネラルに気づいているのかいないのか、再びヨハンの手がオズワルドへと伸び、深く飲み込ませた。
その瞬間、許容量を越した快楽がジェネラルを襲った。

「…オズ、…―――オズ、ワルドッ……ッ」

達するのを耐えることはもう出来なかった。
ジェネラルは快楽に侵された身体に鞭を打ち、オズワルドの頭を退かそうと力を込めた。
けれど、それを許すヨハンではない。むしろヨハン以上にオズワルドがその力に抵抗した。
オズワルドは陰茎を口に含んだまま、指で根元を摩擦し、限界を促す。

「―――ッ」

もとより細くなっていた糸は、その刺激が止めとなって呆気なく切れた。
舌の上で跳ねた欲は白濁を吐き出し、オズワルドは引き攣るように喉を鳴らした。
初めて口にする苦味にオズワルドの眉間に皺が寄り、意思に反して咳き込んでしまう。
それでも片手で口を押さえて、何とか最後まで飲み込もうとするオズワルドの背を、ジェネラルの手が労わるように撫で摩る。

「す、すまないオズワルド…ッ、大丈夫か?」
「大、丈夫…です…」

口を押さえる手を引き剥がし、飲み込もうとする白濁を吐き出させる。
淫液に濡れた唇は艶っぽく色づき、涙に潤んだ瞳は溶けている。
それだけで欲が溜まりそうになる自身を心中で何度も罵倒しながら、ジェネラルは何度も謝罪を口にした。
手袋が汚れるのも厭わずに口を拭ってくれるジェネラルを見上げ、オズワルドは頬を染めたまま問いかけた。

「…気、持ち良かったですか…?」

何処か不安そうに尋ねてくるオズワルドに、これ上なく煽られる。
スーツを一分の隙なく着こなしているという倒錯的な状況も、欲を加速させる要因でしかなかった。
色香溢れるオズワルドと、それにしっかりと当てられている自分自身を自覚するだけで消えてしまいたくなる。
けれど、返答を待つオズワルドの視線が一心にジェネラルへと向けられており、逃げ場はなかった。

「―――――…ああ」

短くはない沈黙を挟み、頬を薄く染めながら、酷く情けない顔でそう言うと、ジェネラルは片手で顔を覆った。
隠し切れない耳は朱色に染まり、居たたまれなさからか、オズワルドを撫でていた手が完全に止まっている。
オズワルドはといえば、その返答を聞いてほっとしたように控え目な笑みを浮かべ、止まってしまったジェネラルの手へと頬を寄せた。

「65点」

そんな二人を眺めていたヨハンは、笑みを刻む唇を片手で隠しながら聞いてもいない評価を口にした。
因みに及第点は70点だ。と、これ見よがしに人指し指を立ててみせる。

「ヨハン!」

文句の付けようのない笑みは完璧で、ジェネラルは思わず声を荒げた。
達した直後に発した声は掠れており、迫力に欠けるどころか妙な艶がある。
鳴りそうになる喉を丁寧に隠し、ヨハンは表面上は穏やかな笑みを晒した。

「だが、まぁ…面白いものを見せてもらったからな。今日は帰ろう」

漸く聞けた一言に、オズワルドとジェネラルの肩が分かり易く下がる。
それが言葉以上に雄弁に安堵を物語っており、ヨハンの目を楽しませた。
もう早く帰ってくれと全身で訴える二人を存分に鑑賞した後、ヨハンの手はソファに掛けてあったコートへと伸びた。
自己申告通りに帰り支度を始めたヨハンに、オズワルドは深い溜め息を漏らした。
帰宅してから決して長い時間は経っていないが、疲労感が尋常ではない。
何はともあれ、これで少しは落ち着いてジェネラルと話すことが出来る。
そう安堵したオズワルドは、他の誰でもない、ヨハンの目の前で気を緩めてしまった。
どう贔屓目に見ても迂闊の一言に尽きるが、そんな迂闊さを見逃すヨハンではない。
ヨハンはすい、と、ごく自然に腰を屈めると、ジェネラルの額へとキスを落とした。

「―――では、な。ジェネラル」

酷く可愛らしいリップノイズを挟み、笑みを転がせるヨハンからジェネラルは弾かれたように距離をとった。
ジェネラルの背がソファの背もたれにあたり、抗議のようにスプリングが鳴く。

「ッヨハン!」
「ウハハハハ。私に構うよりも先に宥めねばならん相手が居るぞ?」
「―――お前ッ!!」

最後の最後まで場を引っ掻き回しておきながら、足取り軽く去っていく赤い黒龍を見送りながら、ジェネラルはそろり、と視線をオズワルドへと向けた。
視線の先では、オズワルドが眉間に皺を寄せてジェネラルを―――正確には、その額を―――睨み付けている。
怒りからか、或いはもっと別の感情からか、頬は赤く染まり、淫液に濡れる唇が僅かに震えていた。
ジェネラルは、今にも泣き出しそうな不安定さを感じ取り、咄嗟に頬へと手を伸ばす。
しかし、その手がぬくもりを感じるより早く、今までフローリングに座り込んでいた痩躯が強襲を掛けた。

「――――オズ!?」

背中をソファへと押し付けられ、視界が回る。
衝撃に歪んだ視界を幾度か瞬きで洗うと、天井を背にしたオズワルドがジェネラルの体躯を押さえつけていた。
困惑を視線に載せると、ジェネラルを見下ろしている切れ長の目に涙が浮いていく。
雫は眦へと溜まると、そのまま重力に引かれてジェネラルの軍服へと落ちる。
硬い布地が水滴を受ける音を聞いてしまえば、無意識のうちに腕がオズワルドへと伸びた。
そっと優しく頬に触れれば、オズワルドの眉間に皺が寄り、涙は止め処なく頬を流れていく。

「オズ、……オズ」

すまない。と謝ることは容易い。けれど、謝ることで一層その心を傷つけはしないだろうか。
何もなかった。と言い募ることは容易い。けれど、言い募ることで疑惑が一層深いものにはなりはしないだろうか。
ジェネラルの心中でそんな葛藤が生まれては、言葉が詰まって音にならない。
出来ることと言えば、一つ覚えのように大切な名を連呼するだけだった。

「―――分かっております」

ジェネラルが自身のデリカシーのなさに頭を痛めていると、名を呼ばれたオズワルドが切なげに目を細めた。
いつもはサングラスで阻まれている深みのある瞳は、痛みを堪えるように揺れている。

「閣下は……閣下は、素敵な方ですから、私の前に誰もいないなんて、そんなことはあるはずがない」

ぽつり、ぽつりと呟きを零していくたびに、涙がつられるように落ちていく。
細い身体をさらに小さくさせて泣くものだから、痛々しく見えて仕方がない。
そして、こうまで泣かせてしまったの原因はヨハンではなく自分なのだ。
過去にやったことを悔やんでも、事実は消せない。なかったことになど出来ない。
それでも、あの頃の自分にもう少し分別があったらと思わずにはいれない。

「―――ですが…、ですが…っ」

溢れる涙に阻まれて、オズワルドは言葉に出来ない感情を何とか言葉に出そうとする。
オズワルド自身にも、なんと続けたいか分からないのだろう。
そこまで理性を掻き乱されるほど、オズワルドにとってジェネラルの存在は大きいのだろうか。
もしそうだとしたら、尚のこと申し訳ない気持ちが溢れかえる。

「オズワルド、」
「…ッ」

何度目かの呼びかけに、オズワルドが袖口で乱暴に目元を拭った。
紳士然としたいつもの彼らしからぬ行動に驚くよりも先に、刺激に弱い瞳が痛まないかが気になった。
けれど、そんな懸念はすぐに思考から吹き飛んだ。

「――ッ!?」

オズワルドが僅かに腰を浮かしたと思ったら、傷の少ない手がジェネラルの性器へと添えられたのだ。
一度熱を吐き出したにも関わらず、触れられた冷たい手の感触に反応して、緩やかに頭を擡げる欲の証にジェネラルの頬に朱が走る。
咄嗟に制止を呼びかけようと口を開くも、起立した陰茎の先に乾いた皮膚を感じて息が詰まった。
狼狽が過ぎて、一瞬オズワルドが何をしたいのか分からず固まってしまう。
一切の制止を忘れたジェネラルに取り合わず、オズワルドはゆっくりと腰を下ろし始めた。
そこで漸くオズワルドがしようとしていることに気づき、喉が引きつった。

「、待てッ」

言葉で止めるが、降りてくる腰が止まることはない。
何の準備も施されていない後孔は慎ましく閉じ、このまま無理にジェネラルを受け入れれば間違いなく傷ついてしまう。
本来他者を受け入れるように出来ていない身体であるにも関わらず、オズワルドは決して止めようとせず、そのまま無理に呑み込んでいく。
狭い内側を陰茎で拓いていく感触に追いたてられて、こんな状況だというのに腰が重くなる。
無理な挿入にオズワルドの顔は苦痛に歪み、歯列が軋む音を耳が拾う。
思わず退けようと動いた手はしかし、震える白い手で押さえつけられた。
細い指の力は弱く、掌にまで浮かぶ汗は冷たくて、ジェネラルはそれ以上の動きが出来なくなってしまう。

「―――ふ、…く…ぅ…ッ」

苦しげな呻き声を零しながら、オズワルドは逃げようとする腰を意思の力で押さえつける。
受け入れることに随分慣れてきたとはいえ、初めての体位はやはり苦しく、そして辛い。
それでも行為を止める気にはなれず、オズワルドは止まりそうになる腰を無理やり降ろした。
腰と臀部が当たることで全て収まったのだと理解する頃には、互いの息は獣のように荒くなっていた。
下腹部に及ぼされる快楽は凄まじく、ジェネラルは理性が焦げるほどだったが、それ以上に目の前のオズワルドが気掛かりだった。
受け入れる側の負担はジェネラルが想像する以上に重いのだろう、白い肌からは一層色が抜け、息が細く速い。
額からふつふつと浮かび、細いラインの顎に伝う汗は冷たく、長い脚は細かく震えていた。
ジェネラルは途切れそうになる理性を必死に繋ぎとめると、固まった身体に労わるように手を這わせる。

「オズ、無理は…」
「無理…じゃ、ありませ…っ」

今にも倒れ込みそうな顔色で、耐えるように息を吐くオズワルドに理性が瓦解しそうになる。
すぐにでも押し倒して貫いて、痛みで支配されている身体に快楽を与えたいと欲望が渦を巻く。
けれど、それは余りにもオズワルドを蔑ろにする行為だ。
誰よりも何よりも大切で愛している存在だからこそ、そんな真似はできない。
ジェネラルは理性を総動員させると、オズワルドの細い腰を両手で掴んだ。
此処までの行為で、オズワルドは十分に疲弊しているのだ。
不満も罵倒も甘んじて受けるが、これ以上無体は強いたくない。
ジェネラルは腕力にものを言わせ、貫いた痩躯から陰茎をゆっくりと引き抜いていく。
オズワルドの身体に必要以上の負担を掛けないようにと配慮していると、不意に上からパラパラと水滴が降ってきた。
思わず顔を上げれば、オズワルドが声もなく泣いていた。

「―――オズ…ッ」
「無理でもしないと……閣下を盗られてしまうじゃないですか…ッ」
「オズ、なにを…」
「閣下は…閣下はッ! 私のなんですから…ッ」

嗚咽で阻まれながら、それでも言い切った言葉は幼い子どもの駄々のような睦言。
どくり、と、不自然にジェネラルの鼓動が高鳴った。
こんな状況だというのに、オズワルドはこんなにも泣いているというのに、その言葉と想いにジェネラルは言い知れぬほどの愛しさを感じてしまう。
離れなければオズワルドが辛いのだという理性すら残らず、こんなにも泣くほど自分を好いてくれている人が愛しかった。
心中を荒れ狂う感情に支配されたジェネラルは涙を流すオズワルドへと口付けた。
涙の味がするキスは何故か酷く甘く感じられて、ジェネラルは酔いしれるようにキスを重ねた。
キスを間に挟み、呼吸を落ち着けたオズワルドがゆっくりと腰を動かし始めると、意識はそのまま業火へと呑まれていった。











ヨハンは足取り軽く帰宅すると、そのまま真っ直ぐにリビングへと向かった。
日が暮れ、宵闇が広がりつつある空を窓越しに見上げつつ、ソファへと身を沈めると、じんわりと疲れが抜けていく。
ソファに座ったまま濃紫色のコートを放り、足を投げ出して寝そべった。

「―――…随分とお早いお帰りで」

凝り固まった腕を伸ばしていたヨハンは、その声に小さく微笑する。
行儀悪くも寝そべったまま視線を巡らせば、不機嫌そうな青の牧師が立っていた。
慇懃な物言いではあるが、いつもの帰宅時間よりも随分と遅かったヨハンを責める棘はびっしりと含まれていた。
ヨハンは喉奥でコロコロと笑気を転がすと、赤い髪を揺らして見せた。

「何だ、来てたのか」
「ええ。何処かの誰かが、夕食を作ってくれと駄々を捏ねたので、ね」
「それはいけないな。私が注意してやろう」

密やかな笑気を漏らし続けるヨハンに気が殺がれたのか、ゲーニッツは溜息を漏らした。
ピリピリとした空気も払拭すると、キッチンへと戻って作業を再開し始めた。
水で手を洗う音を聞きながら、ヨハンは意地の悪い笑みを浮かべる。

「さて問題だ、ゲーニッツ」
「はいはい、何ですか」
「私は何処へ行っていたと思う?」
「知ったことではありませんね。どうせブラついてただけでしょう」

気のない返事を幾らか貰い、ヨハンはゆったりと身を起こす。
ソファの背に腕を預け、にっこりと含みのある笑みをゲーニッツへと向ける。

「ジェネラルのところへ行っていた」

言葉が紡がれた瞬間、水の中で動いていた手が止まった。
流れる水の音だけが室内に響き、空気すら動くことを憚るような沈黙が落ちる。

「古馴染みでな。中々楽しい時間が過ごせたぞ」

きゅっと、水を止める音がして、キッチンからゲーニッツが出てくる。
その目は、氷のように冷たい龍蛇の瞳だ。ヨハンの背筋を、悪寒にも似た恍惚が駆け抜ける。

「紅茶も旨かった。確か、アールグレイだったか。良い腕前だぞ」

音もなく数歩を縮められ、ゲーニッツは既に目の前だ。
その手が、何の感情もなくヨハンへと伸びる。
ヨハンは怯えることも逃げることもせずに、その手の到来を待った。

「そうだ。今度はお前も――――」

しかし、続く言葉が声として出る前に、ゲーニッツの逞しくも広い掌はヨハンの首へと掛かる。
抵抗する暇すらも与えられず、多大な負荷を掛けられソファへと押し付けられた。
呼吸が行き場を失い、押さえつけられた気道が戦いた。

「……黙りなさい」
「――――ッ、く…くくっ…」

息苦しさに顔を顰めながら、それでもヨハンは満足げに笑ってみせる。
尊大にして傲慢な笑みは、これ上なくヨハンに似合っていた。
呼吸すらも憚られながら、ヨハンは細い呼気に囁きを混ぜた。

「―――ふふッ…その…顔が、見たかった…」

ヨハンを見下ろすゲーニッツは、その笑みと言葉に凍てつくような微笑で応えた。
ゲーニッツの本性である、冷酷で非情な獣の笑みだ。

「いいでしょう、ヨハン。ご要望通りに、酷くして差し上げます」

告げられた事実上の死刑宣告に、ヨハンは笑みを深めた。
穏やかなゲーニッツの裏に丁寧に隠されたこの本性を、ヨハンは一番気に入っているのだ。


それこそ、かつての忘れられない相手よりも。


蛇の牙が肌に突き刺さるのを感じながら、ヨハンは笑気交じりの嬌声を噛み殺したのだった。





TOP
Template by KKKing