深夜過ぎたら逢いましょう
!注意
グスタフ×ゲーニッツでR18な話。
グスタフさんがかなり腹黒でヤンデレ。
エロは無理やり系なので注意。
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ゲーニッツの眠りは深い。
季節が冬に移り変わるとそれは顕著になり、瞼を下ろせば意識はすぐに霧散するほどだった。
一度眠りに付いてしまえば、仮に異変を察知したとしても身体が動かないのだから、
それは睡眠というよりも意識の消失と言った方が正しいのかも知れない。
身体が蛇の本性に引っ張られているのだろうと思うのだが、まるで人のようにとる性質を、ゲーニッツは密かに嫌っていた。
嫌っていながらも、寒い夜になると柔らかく温かい寝台に懐いて意識を混濁させてしまう。
ゲーニッツ個人が如何に嫌おうと、それはオロチの血を引く者が負うべき弊害の一つなのだ。
それを自覚しているから尚のこと、今夜の事態に誰よりもゲーニッツ自身が驚いた。
「………」
ゲーニッツは眠気を孕んだ空ろな瞳で、視界のほぼ半分を顔を埋めた枕に遮られながらぼんやりと寝室を見回した。
うつ伏せの状態、しかも、夜の闇に閉ざされていては、僅かな陰影で家具の造形を視認するのが精一杯だ。
念を押すように遠くで虫が鳴き、今が間違いなく夜であることをゲーニッツに伝えた。
「………?」
ゆっくりと瞬きをして、滲んできた涙で瞳を洗う。
そうして、少しでも明瞭な視界を取り戻そうと試みるも、視界は掠れて一向に晴れない。
寝起き特有の気だるさを身に纏いながら、月が支配する刻限に目が覚めるとは一体どういうことだろう。と回らない思考で疑問符を飛ばした。
ふるり、とうつ伏せのまま枕に擦り付けるように頭を振る。
柔らかい羽毛をカバー越しに感じながら身体を起こそうと身を捩り、肩でシーツを嬲る。
「―――………」
しかし、数度寝台の中でもがくが、身を起こすことすら間々ならない。
意識は覚醒に向かっているのに、一向に身体が動かない。
今夜は寒いからか、と思考をシフトしかけたところで、異質な音を耳が拾った。
身を起こそうともがく度に、きしッ、と。
まるで、細い金属が擦り合うような―――…
「……」
そう自覚した次の瞬間、ゲーニッツは一気に意識を覚醒させた。
今まで眠気を孕み空ろだった瞳は常の強さに煌き、鋭い殺気を寝室に満たす。
同時に、背中を無防備に晒した現状を打破するべく、スプリングを軋ませながら飛び起きようとした。
しかし、強固な捕縛によって身動き一つ取れず、寝台を大きく軋ませただけに終わる。
両足は動くものの、腕が何かに取られ、上半身が全く動かない。
「……これは……」
漸く闇に慣れてきた視界で両手の自由を奪うものを写すと、ゲーニッツの視線が剣呑な光を帯びる。
闇の中でも光沢が分かる、細く鋭利な銀糸。
それが幾重にもゲーニッツの両手首から腕に掛けてを戒め、寝台へとくくりつけられている。
丁寧なことに寝着の上から巻かれているため痛みは無いが、
このまま暴れれば手首ごと落ち兼ねないのを見て取って、ゲーニッツは怒りでこめかみを揺らした。
「―――……中々に面白い芸当をしてくれますね…」
舌打ちしたくなるほど無様な体勢のまま、獣のように後方に位置する扉を見やる。
覚醒した意識は塗りつぶしたような闇の中に同族がいることを察知していた。
僅かの間ののち、ゆっくりとした足取りで闇がゲーニッツに近寄ってくる。
「……血迷いましたか?飼い主の手を噛んだ犬がどうなるか、など、言われずとも分かるでしょう?」
冷気すら纏うような視線と声で以って、視認できる距離まで近づいてきたグスタフを迎える。
ぴりぴりと夜気すら切り裂くような怒りが寝室を揺らす中、足音は寝台近くで止まる。
死角に入られ、感覚でしかグスタフの存在を確認できないでいると、空気が静かに動いた。
「グスタフ、何を―――…ッ!?」
冷気を纏う声は、驚愕で途切れる。
グスタフが寝台に乗り上げ、ゲーニッツの寝着を乱しに掛かったのだ。
常はワイヤーを操る器用な手が、確固たる意思を持って貞淑かつ簡易な衣服の上を滑る。
布越しに手の熱を伝えるように背筋から腰へと下ると、形を確かめるように臀部を撫でられる。
「っ、馬鹿な真似は止めなさい!」
素直に鳥肌を立てたゲーニッツに気付いているのかいないのか、
はたまた気にしていないだけなのか、グスタフは緩慢な動作で下着ごと下衣を取り払う。
途端、冷たい寝室の空気が肌を撫で、冷気が乱された寝着の中に滑り込む。
寒さに弱いゲーニッツは、こんな状況だというのに寒さに負けて身を震わせた。
すると、その震えを違うように解釈したのか、グスタフが喉奥で小さく笑った。
「―――恐ろしいですか?」
その言葉に、ゲーニッツは額に青筋を浮かべた。
怒りの余りこめかみが痛み、全身の毛が逆立つほどの殺意を身に纏わせる。
上半身は未だ寝台に沈み、下半身は露出され膝を立てているという屈辱的な体勢のまま、下からグスタフをねめつけた。
暗闇の中でその表情を読み取ることは困難だが、その唇が弧を描いているのに気付くことは容易だった。
「……雷で打たれるよりも、風に切り刻まれる方が痛いと思いますよ?」
言って、自由を奪われた身を捩る。
腕と言わず、指さえ動けば風が操れるのだが、それを熟知しているのか丹念にワイヤーを絡ませられている。
一指たりとも動かないのであれば、如何に風の加護を得ているとはいえ力を振るうことは出来ない。
ゲーニッツが苛立ち、眉間に皺を寄せると、唇を細い指が撫ぜた。
指腹でゲーニッツの無力を嗤うかのような嬲る手つきに怒りが湧き起こり、獣のように牙を剥いた。
「―――ぐ…ぅッ」
しかし、噛み付こうとして開いた口は逆に捕らえられ、細い紐が嵌められる。
一瞬見えたそれは青く、グスタフが常用しているネクタイだと思い至る。
猿轡のように口を戒めるネクタイはそのまま項に回され固定される。
お陰で口を閉じることすら出来ず、唾液がネクタイへと染み込んで濡れぐちゃり、と嫌な感触が歯に伝わった。
「ぅ…ぅうッ」
罵倒の言葉を吐くものの、噛まされたネクタイのお陰で全てが耳障りな呻き声に変換される。
両手をワイヤーで固定され、猿轡で言葉も戒められ、さらには下肢を露出している姿は客観的に見ても無様なことこの上ない。
ゲーニッツは憤りそのままに、ネクタイへと噛み付いた。
「祭祀様には、やはり青がお似合いですね」
何処か恍惚とした声が耳のすぐ近くで聞こえる。
吐息が耳を擽ったかと思えば、滑る舌で耳を嬲られ、眉間に皺を寄せた。
ぴちゃり、と、まるで聞かせるように耳朶を濡らし、外耳をなぞるように舐められる。
「―――…ッ!」
何をされても睨みつける眼光の鋭さは衰えなかったが、グスタフの長い指がゲーニッツの陰茎に絡むと一瞬だけ瞳に狼狽が混じった。
捕らえたそれは何の反応も示していなかったが、グスタフは構わず手淫で熱を汲み上げていく。
裏筋をなぞり、五指を持って竿を扱くと、ゲーニッツの息が詰まる。
強いされて悦ぶ性癖は持っていないが、男として感じるものまでは否定できない。
それでも容易く反応してしまうのは癪で、ゲーニッツは勤めて無表情を保とうと試みるが、
先端に柔らかく爪を立てられると呼気が乱れた。
「感じてらっしゃいますか…?」
何度も扱かれた挙句、睾丸まで丹念に揉まれては感じない方が可笑しい。
それでもそれを肯定するのは業腹で、ゲーニッツは奥歯を噛み締めながら緩々と首を振る。
その反応に笑気が漏れ、咎めるように手淫が激しさを増した。
「―――んッ…んぅ……ッ」
先端から零れる先走りによって、より摩擦がスムーズになり喉奥から殺しきれなかった呻き声が上がる。
グスタフの手が摩擦を繰り返すたび、聞こえてくる水音は大きくなり痺れるような快楽が腰を苛んだ。
何とか不埒な掌から逃げようとするが、不自由な体勢では腰を僅かに振るだけに終わる。
それが、まるで下品に誘ったように思えたゲーニッツは羞恥と屈辱で視界を滲ませた。
「んッ…ぅ…ッ…――――ッ!」
熱源の先を指腹で嬲られ、止めのように強く扱かれると下腹部に電流のような強い快楽を感じた。
シーツに粘性の液体が落ちた音を聞いて、自らが達したのだと知る。
白いシーツが更に白くなり、生臭い匂いが鼻を付いた。
ゲーニッツは肩で息をしながら、大きく口を開いてまるで獣のように酸素を求めた。
呼吸を遮る猿轡が邪魔で、不敬と不遜を重ねる部下を睨み付ける。
生理的な涙が浮いた眼で睨んでも迫力などないとは理解しているものの、良いように嬲られてばかりではいられない。
ぎり、と、奥歯が噛み合う音がゲーニッツの口腔から響く。
「…祭祀様…」
打破できない状況を呪いながら、ゲーニッツは凶悪なまでに鋭くなった瞳を瞼で隠した。
睨みつけた先にいたグスタフはスーツを一部の隙もなく着こなしていた。
常時と全く変わらない様子の部下に吐精まで追い上げられた身としては、その姿は自身の羞恥を一層掻き立てるだけだった。
視界を闇に閉ざし、懸命に現実を否定しているとグスタフの指が労わるように顎を撫でる。
口を戒めるネクタイさえなければ、その指を食い千切り、血の制裁を加えることも容易だというのに。
むしろ、そうならないようにネクタイで口を戒めているのだとは理解しているものの、
腹が立つほど手際の良いグスタフに苛立ちばかりが沸き起こる。
「……」
そうして、全身で拒絶を表すゲーニッツに、何を思ったのかグスタフの身体が離れる。
低い体温が僅かな衣擦れの音を奏でながら離れていく感覚に、ゲーニッツは僅かに眼を開いた。
まさかこれだけで終わるとは思っていなかったが、興が冷めたのなら僥倖だ。
しかし、それが楽観的思考でしかなかったのだと、ゲーニッツはすぐに気が付いた。
「―――ッ!」
グスタフの手が臀部を撫で、誰にも触れさせたことのない後孔を指先で擽ったのだ。
余りの事態に下半身が強張り、背中が滾る。
その反応に何の感情も伴わない手が臀部を割り、舌で以って後孔を濡らし始める。
「ぅッ…ぅう…ンっ」
ぴちゃぴちゃと、まるで子猫がミルクを舐めるような音が信じられないような場所から聞こえて、ゲーニッツは耐え切れず呻き声を上げる。
好き勝手に動く軟体を拒めず、尖らせた舌で後孔の襞を丹念に舐められる。
腰が逃げを打とうとするたびに、掴まれた臀部を揉まれて足が震えた。
矜持を振り絞って立てた膝を落とすことはなかったが、それは結果としてグスタフの行為を手助けすることになってしまった。
「ん…ぅんっ…んんッ」
呼気が鼻から抜けて、まるで嬌声を噛み殺すような甘さに聞こえた。
そんな声を出す自身すら忌々しくて、ゲーニッツは何とか呼吸を整えようと勤めた。
しかし、臀部を揉んでいた指先が前へと回り、熱源に絡むと容易く呼吸は乱される。
白濁によって滑る陰茎を丁寧な手付きで摩擦し、熱を育てていく。
既に一度精を吐き出したにも関わらず、そこはグスタフの指により容易く反応を見せて頭を擡げていった。
「―――〜〜ッ」
後孔を塗らされる音と、陰茎を摩擦する音が混じりあい、ゲーニッツの耳を冒した。
快感に抗いきれずに腰が跳ねると、臀部に笑気混じりの呼気が当る。
絶え間なく後孔に唾液を擦り付け、緩ませると、前を弄っていた指先がそっと離れる。
前も後ろも攻められ息も絶え絶えになっていたゲーニッツは、攻め手が緩んだことに小さく息を吐いた。
「―――ンッ」
しかし、その瞬間を狙っていたかのように細く器用な指が後孔に突き刺さると、呼吸すら忘れて身を強張らせた。
白濁を纏った指は、唾液によって濡らされ緩んだ後孔に容易く進入すると、内壁を広げるように体内で暴れまわる。
指で僅かに出来た隙間からまた唾液を注ぎ込まれ、身体の深い場所まで濡らされる。
身体は強張るのに、腰は指が生み出す快楽に負けて見苦しく戦いた。
途中で放り出された熱からも、先端から涎のように淫液を垂れ流し、重力に引かれてシーツへと落ちる。
「ぐ…ぅう…っ」
指が動く度に脳まで痺れるような快楽がゲーニッツを襲い、強張る身体を熱で溶かしていく。
意図せず腰が揺れ、グスタフの指を強請るように内壁が蠢く。
ネクタイを噛まされた口からは唾液が零れて喉を伝い、過敏になった肌を毒のように苛んだ。
ガクガクと膝が震え、寝台へと落ちそうになると、手馴れたようにグスタフの手が腰を支えた。
冷たい指先に労わるように腰を撫ぜられると、眼の端に溜まった雫が頬を伝う。
「―――ゲーニッツ様…」
まるでそれが合図だったかのように、グスタフの指が引き抜かれる。
何度も抽出を繰り返した後孔は、去ろうとするグスタフに追い縋って卑猥な音を奏でた。
熟れた後孔はより強い快楽を強請るようにひくひくと小刻みな扇動を繰り返してグスタフを誘っている。
淫らな貪欲さを自覚したゲーニッツの頬に朱色が差すと、グスタフは小さく眼を細めて見せた。
笑われたのだと気配で気付いたゲーニッツは後方に顔を向きかけた。
「――――ん、んんッ!」
しかし、それよりも早く、グスタフの熱が誘いに応じて身体を貫いた。
まるで灼熱の杭を穿たれたような衝撃に、全ての動きは凍りつく。
逃げを打つ腰を両手で強く掴み、崩れそうになる膝を支えると、グスタフは一息でゲーニッツの中へと収めた。
狭い内壁を余すことなく抉じ開けて、異物を締め付ける身体にグスタフの形を覚えこませる。
「ん、…ぅ…ッ…んん…」
まるで生まれたての獣のように膝を頼りなく振るわせるゲーニッツを支えながら、グスタフの手は前へと下りる。
起立しながら絶え間なく涎を垂らす陰茎は、ゲーニッツの心情とは裏腹に熱を持ち、素直に悦びを呈していた。
グスタフは指を絡めながら、その音を聞かせるように白濁を捏ねる。
「身体は素直でいらっしゃる」
耳を打つ低音は酷く愉しげで、ゲーニッツは瞼を強く閉じた。
自らよりも遥かに下位であり、何より忠実な部下であるグスタフに犯されているのだと否が応でも認識してしまう。
快楽に堕とされた身では歯を噛み締めることすら出来ず、無力にも枕に顔を埋めることしか出来なかった。
「強いされてお悦びになられるとは…誰に対してもそうなのですか?」
くすくすと笑気を零され、羞恥が脳を灼いた。
こんな真似をしたのは貴方が初めてですよ、と心中で罵倒するも、恥辱の度合いが増しただけだった。
体内を占領された状態ではどんな言葉も行動もグスタフを喜ばせるだけだと判断したゲーニッツは、
せめてこの時間が少しでも早く終わるようにと強く眼を閉じた。
瞼の縁で、涙を含んだ睫毛が小さく震える。
けれど、グスタフはそんな些細な反抗すら許さず、口を戒めるネクタイの端を引っ張って、ゲーニッツの顔を枕から引き剥がした。
無理な負荷が首裏に掛かり、ゲーニッツの喉元が反る。
「ゲーニッツ様。どうぞ、顔をお見せ下さい」
ぞろり、と、一族特有に長い舌が首筋を辿る。
ゲーニッツ自身が零した唾液を啜り、悦楽に溶ける様を嘲笑う。
背中には衣服に包まれたグスタフの胸が付き、互いの上下関係が逆転したかのような錯覚に陥る。
「ぐ、…ん、ンンッ」
ゲーニッツの溶けた表情に興奮したのか、それとも単により一層追い詰めたくなったのか、何の前触れもなく抽出が始まった。
熟れた後孔から塗れた音が漏れ、肌と肌がぶつかる生々しい音が寝室に響く。
切っ先で前立腺を捏ねられ、ネクタイ越しでもそうと分かる嬌声を絞りだす。
跳ねる腰を押さえつけられて何度も深くを穿たれると、放置されたままだった陰茎から白いモノの混ざる淫液が零れる。
「んッんーッ…ぅ…ぐ…――――っ!」
腹に埋まる熱に翻弄され、同時に器用な指が震える熱に絡むと、ゲーニッツは二度目の精を放った。
自身でも驚くほど呆気無く吐精したことに驚く間もなく、身体が無意識の内に体内に居座るグスタフを締め付ける。
陰茎に柔らかく溶けた内壁が絡みつき、グスタフを精を強請った。
「――――っ、随分と慣れていらっしゃる…っ」
僅かに顔を歪ませ、嘲りの言葉でその誘いに耐えると、グスタフは細かく震える体躯をさらに蹂躙した。
達したばかりで殊更快楽に弱くなった内壁を抉り、気が狂わんばかりの愉悦をゲーニッツに及ぼす。
ゲーニッツは呻き声すら上げられず、全身で以ってグスタフを受け入れてしまう。
見苦しく戦く膝は白く汚れ、自ら腰を揺らして悦楽を強請る。
完全に手中へと堕ちたゲーニッツにグスタフは唇を緩めると、口を戒めるネクタイを解いた。
同時に、片手を僅かに閃かせ、ゲーニッツの腕を戒めるワイヤーすらも取り払う。
「ぁ、ああっぅあ…ん…ぁあっ!」
行き成り自由になった腕と声をゲーニッツが自覚するより早く、穿たれる悦楽に負けて嬌声を上げる。
自由になったら必ず風で切り刻むと決意したことすら忘れて、両手でシーツを掻き乱す。
伸びた腕はグスタフを害することなく、シーツに皺を刻んで愉悦の強さを物語った。
「ひ…ぁあッふ……ぁ、ぐぅッ」
開いたままの口からは唾液が零れ、快楽に彩られた声が紡がれる。
縦長の瞳孔は熱に溶けて、止め処なく涙を流した。
グスタフは手に入れた風に満足そうに微笑むと抽出の速度を速めた。
スプリングが大きく鳴き、卑猥な水音と重なってより一層ゲーニッツを追い詰めた。
「うぁ、ぁ、んッ――――ッ!!」
止めのように奥を抉じ開けられ、ゲーニッツは頂点に押し上げられた。
二度目の締め付けに、今度こそグスタフは逆らわずに熱を爆ぜさせる。
ゲーニッツは腹の中を焼かれるような奔流にぐったりと寝台へと沈み込んだ。
「……ぁ…」
柔らかいベッドに懐くと、疲労も相まって抗い難い睡魔に襲われる。
涙で掠れる視界に、散々な目に合わせてくれた部下を映すと、酷く暗い笑みを浮かべてゲーニッツを見つめていた。
その癖、ゲーニッツの零した涙を掬う指先は慈しみを孕んでいて何もかもが矛盾している。
疲弊して疲労して何も考えたくなくなったゲーニッツは、睡魔に抗うことなく意識を霧散させた。
遠くで鳥の囀りが聞こえる。
浅い眠りを漂っていたゲーニッツは、緩慢な動作で瞼を押し上げた。
ずっしりと重い身体を寝台から引き剥がし、ゆっくりと寝台の上に座位を保つ。
ベッドヘッドに背を預け、静けさに満たされる寝室に険を孕んだ視線を向ける。
いつもより早い時間帯ではあるが、意識は完全に覚醒し、冷たい朝の空気を肺に満たす。
「―――…」
無言のまま自らの身体を見やり、次いでシーツを撫ぜる。
ゲーニッツの身体を包む夜着は昨夜寝入ったままの状態を保ち、シーツも寝乱れているが何の痕跡も残っていない。
無論、身体にも異変は感じられず、ゲーニッツは緩々と息をついた。
心中で昨夜のあれは夢だったのだ。と何度も呟くも、卑猥な光景が脳裏に焼きついてその納得を飲み込めない。
もやもやと淀む心中を持て余し、昨夜に戒められていた手を撫でていると、静かに寝室の扉が叩かれた。
「―――どうぞ」
一瞬すくんでしまった自分を嗜めるように低い声で入室を許せば、躊躇うような逡巡の後、扉が開かれる。
常の黒いスーツを纏ったグスタフが、何処か困惑しながら寝室へと足を踏み入れた。
座位を保ちながら、顔だけを扉へと向けるゲーニッツに、手入れされた黒髪を揺らして頭を下げる。
「おはよう御座います、祭祀様」
「……ええ」
「………何処かお加減が悪いのでしょうか?」
「いえ?」
心配顔のグスタフの問いに、感情の篭らない瞳で切り捨てると、困ったように眉が下がった。
確かに、いつもならまだ眠りの海を漂っているゲーニッツがしっかりと覚醒していれば心配もするだろう。
そうは思うものの、その言葉に何か裏があるのではないかと邪推するのは昨夜のことが記憶に残っているからだ。
だから、視線に咎めるような色を乗せて口を開いた。
「………起きていては可笑しいですか?」
「いえ、決して、そのようなことは…」
慌てたように否定の言葉を紡ぐグスタフは、常の部下の顔と何ら変わりない。
何か不敬をしただろうか、何か気に障ることをしただろうか、と主人に叱られた忠犬さながらに困惑を滲ませている姿に、ゲーニッツは小さく息を吐いた。
身体に何の痕跡も残っていない上に、グスタフからも昨夜の行為を示唆するような変化は微塵もない。
自分が酷く不条理にグスタフに当たっている気がして、ゲーニッツは眉間に皺を寄せた。
それにさえ、傷ついたように目を細めるグスタフが、一層居た堪れなかった。
「何か、お気に障ることをいたしましたでしょうか…?」
「―――いえ、単に夢見が悪かっただけですよ」
まさか、貴方に犯される夢を見た、など言えるわけもなく、ゲーニッツは言葉を濁して首を振る。
このままでは要らぬことを口走ってしまいそうだと、努めて平静を保ちながら、手を払って退室を促した。
「着替えますので、お茶を淹れておいてくれますか?」
「はい。お手伝いは如何いたしましょう」
いつものように続けられた言葉に、刹那の間だけゲーニッツの声が止まる。
グスタフが不審に思う前に口を開くが、視線がグスタフから外れるのは止めようもなかった。
「………いえ、一人で出来ますから結構です」
「畏まりました。今朝の茶葉は何になさいましょう?」
「アールグレイをプレーンでお願いします」
「ご用意してお待ちしております、祭祀様。――…それでは、失礼いたします」
一礼を返して、グスタフの姿が寝室から消える。
ゲーニッツは露骨な反応を咎めるように頬を軽く叩くと、ゆっくりとした動作で寝台から降りた。
今日も朝からトーナメントの出場が決まっているのだ。
いつまでも淫夢ごときに囚われているわけにもいくまい、と思いながらも、
耳にこびりついた卑猥な音は中々忘れられそうになく、ゲーニッツは爽やかな朝にあるまじき溜息を寝室に響かせたのだった。
寝室から退室したグスタフは、そのままの足でキッチンへと向かった。
ケトルをコンロにセットし湯を沸くまでの間を利用して、すでに洗い終わった洗濯物を籠に入れて庭へと出る。
籠の中には青い法衣やシーツ、普段着が混在しており、朝焼けの中で手馴れたように黙々と干していく。
元々量は多くなかった為、すぐに作業は終え、キッチンへと戻ろうと空の籠を持ち上げる。
「………」
僅かに屈んだグスタフの頬に、干されたシーツが触れる。
朝の爽やかな風に煽られ、冷たく濡れた感触が頬に伝わり、グスタフは小さく笑んだ。
するり、と恭しい手つきでシーツを撫ぜると、シーツの端を唇に寄せた。
「―――深夜過ぎたら…また、お逢いいたしましょう…」
呼気に含ませた声はそのまま風に消え、何の名残も残さず霧散する。
グスタフはケトルが鳴く音を聞きながら、キッチンへと足を向けた。
その頬に刻まれる笑みは暗く、まるで夜のような冷たさを含ませながらも酷く満足げな笑みだった。