M25 ただの物置。

保健室へようこそ



!注意

某嫁探し番外の保険医牧師×泣き虫教祖のR18話。
ほんのり担任社長→泣き虫教祖要素もあり。
キャラ崩壊、ご都合主義、ベタ展開、ヤリタカッタダケー等に
拒否反応を示す方は鬼ブロか要神回避。
色々無理やり系。


========================


「はぁ…、憂鬱だ……」

既に下校時間を過ぎ、人気の少なくなった廊下にはオレンジ色の西日が差し込んでいる。
その廊下をトボトボと歩くのは、似合わぬ小豆色の詰襟を身に纏い、学生鞄を片手に持つヨハンだった。
横顔には暗い影が差し、夕日が明暗を一層際立たせている。
しかし、ヨハンがこんなにも気落ちしてしまうのも無理はない話ではあった。
これから向かう先はヨハンにとって天敵とも言える相手の巣窟なのだ、 長く伸びる影を踏みしめるごとに溜息が零れてしまう。

「そもそも、なんで私だけ居残りまでして健康診断を受けねばならないんだ…っ」

片手で握り拳を作りながら小さく震わせ、不満が募って口から独り言が漏れてしまう。
本来、昨日が健康診断の日だったのだが、ヨハンはやむにやまれぬ事情で欠席していたのだ。
病気だとか諸事情だとか、そんなまともな理由ではなく、もっと理不尽な理由で登校すら出来なかった。
昨日、いつものようにデスアダーを投げ起こし、 二人で遅刻のデッドライン目指して走っていたところへMr.風と名乗る通り魔が現れた。
急いでいたので、無視するつもりでいたが、そいつは迷い無くヨハンを狙い攻撃を仕掛けてきた。
超展開はMUGEN故、仕方なしと言われそうだが、幾らなんでも唐突過ぎた。
不覚をとったヨハンはなんとか致命傷を避けたが、時既に遅く、 あっさりヨハンを置いて逃げたデスアダーはギリギリで学校に駆け込み、ヨハンは取り残された。
無常に鳴り響くチャイムに今日も校門にKOされる系の仕事が始まると肩を落とした。
無理ゲーと分かってても、せめて遅刻でも良いから登校しようとするとMr.風が連戦を仕掛けてきたのだ。
何処かで見たことがあるような技を繰り出し、ヨハンと互角にやりあってくる。
おかげで担任であるルガールが加勢に来てくれるまで、何ラウンドしたかは分からない。
お互いに傷を作り、漸くMr.風が退いたのは昼のチャイムが高らかに鳴るほど後になった。

気分は最悪、ルガールから慰めの飴を貰うまで片膝をついていたほどだ。

Mr.風…一体何者なんだ……。

昨日の忌々しい記憶を掘り起こし、掌を握り締めたまま、夕日に視線を向ける。
若干現実逃避しかけている背中に、聞き慣れた、しかしなるべくなら聞きたくない声がとんできた。

「遅いと思ったら、そんなところで何をぼーっとしているんですか」
「うわぁああっ!?」

いつの間にか保健室の前まで来ていたヨハンは、扉の合間からひょいと顔を覗かせたゲーニッツに驚きの声をあげた。
不意を突かれたと言うのもあるが、如何してもこの保険医を前にすると悲鳴じみた声が上がってしまう。
振り向けば、青い服の上から白い白衣を纏ったゲーニッツが視界に入る。

「おやおや、そんな悲鳴を上げて怯えなくても、今日は健康診断ですから注射なんてしませんよ」
「なんで、私が注射などで怯えると思うんだ」

子供じゃあるまいし。と驚きを誤魔化すような言葉を付け足して、僅かに顎を引く。
人の良さそうな笑みを浮かべて手招きするゲーニッツを警戒しつつも、保健室へ足を踏み入れた。
扉を潜ると微かな消毒液の匂いがして、夕日に室内が染まっていた。
常ならぬ雰囲気を漂わせる保健室に、遥か昔に味わったような懐かしさを感じてしまう。

ガシャ

「…………」

珍しくノスタルジーに浸っていたヨハンの背中に聞こえた不穏な音。
一瞬で血の気が引く。今、小さく鳴ったのは鍵穴の音ではないだろうか。
いっそ気のせいであってくれと願いを込めながらも、内心では冷や汗が止まらない。
既に逃げたい。今すぐ逃げたい。もう、おうちに帰りたい。健康診断などしなくても2タテ3タテ余裕のラスボスです。
直接何をされたわけでもないのに、ヨハンの中を危険信号が駆け巡る。今にも回れ右して走り出してしまいそうだ。
しかし、現実のヨハンには背中に刺さる視線に身が強張り、鞄を取り落とさないことだけで精一杯だった。

「先ほどから何を怯えているんです? とって喰われるとでも思っているんですか」
「……怯えてなどいない」

まるで心中を見透かしたような声を掛けられて、ヨハンは気圧されぬように態と硬い声を出すと鞄を来客用のソファへ放る。
ゲーニッツは密やかに笑いながら白衣を翻して、診察用の椅子を己の椅子と対面させるように用意した。
並ぶ二つの椅子が思ったよりも近くて、ヨハンのこめかみにジワリと汗が滲む。
ゲーニッツはギシ、と椅子を軋ませながら腰を下ろし、長い脚を悠々と組んでみせた。
視線で着席を促され、ヨハンも渋々ながら座るが、背もたれの無い丸椅子は如何にも居心地が悪い。

「それでは始めましょうか、ヨハン」

楽しげに瞳を細め、唇を撓らせ笑うゲーニッツは教育者に思えないほどの含みを持っていた。
その“含み”をなんと表現するのかは知っていたが、ゾクリとする視線に晒されて自覚が有耶無耶になる。
ゲーニッツは背中に沈みゆく夕日を背負い、コントラストが非常に妖しい。
薄く笑みを浮かべるゲーニッツから視線をそらしつつ、詰襟に手を掛けると一つ二つと上から釦を外していく。
首元を緩めたというのに息苦しさは変わらなくて、気を緩めてしまえば本人の前で溜息を零してしまいそうだ。
こんな居心地の悪い場所からは早く撤退するに限る。

「……苦しいのですか、ヨハン?」
「いや、そうではないが―――ッ!?」

気遣うような優しげな言葉に声を返そうと口を開けば、ゲーニッツは指を無遠慮に口腔に突っ込んできた。
唐突な行動の意図が掴めず、目を見開いて驚きを露わにするヨハンへゲーニッツは変わらぬ穏やかな口調で言葉を続けた。

「口を開いてください、――…そう、歯を立ててはいけませんよ」

単なる検査だ、健康診断だ。大丈夫、相手は教育者だ。
ヨハンの野生の勘が力一杯警鐘を鳴らすが、ゲーニッツに気圧されてしまう。
実力で対抗すれば分の悪い相手ではない、何もされていない内から逃げ腰になる必要などない。
そんな風に自分を鼓舞し、眦に涙が浮かびそうになるのをグッと堪えて、恐る恐る口を開く。
綺麗に整えられた爪先が柔らかい口内の肉を擽り、唾液が指に絡まる。
ぴちゃぴちゃと立つ水音を喉の奥に流し込まれるようで、舌が微かに痙攣した。

「綺麗にしていますね、口内炎もない」

つぅ…と歯茎まで撫でられて妙なざわめきが腰の辺りを走る。
普段自分でも触れない口の中を弄られ、酷い違和感がヨハンを苛む。
咎めるようにゲーニッツの名前を呼ぼうとしても、歯列が指先にぶつかり、うまく声が出せない。
唇を鯉のようにパクパクと開閉していると、下顎に指を引っ掛けられてグイと強く引っ張られた。
間近にはゲーニッツの微笑み、背中に冷たいものが流れて額に青筋が走る。

「眼も――…、濁り一つありませんね。良いことです」

ぶつかる視線から嬉々としたものを感じ、口角がヒクついた。
思わず身を引きかけるも、ゲーニッツの顔が近づく方がいくらか早かった。

「な…っ」

まだ口に指が入っているせいで可笑しな音階の声が出たが、それ以上にヨハンの意識は目の前のゲーニッツに捕らわれる。
こともあろうにゲーニッツの長い舌がヨハンの右目を舐めたのだ。
眼球を生温い軟体で舐められて、恐怖と居心地の悪さはピークを迎える。

「ふむ…、少ししょっぱいで――」
「……っ、……ゲーニッツ!!」

事も無げに口腔でヨハンの味を確かめるゲーニッツに、 とうとう叫び声をあげながら、ヨハンは顔を振って指を振りほどいた。
ヨハンの舌とゲーニッツの指の間で細い銀糸が引き、それが異様に卑猥に映った。
片手で右目を押さえながら、涙目になってしまう自分を叱咤し、上体を大きく反らして更に声を荒げた。

「普通にやれ!!こんなこと健康診断でやるかぁっ!!」
「二度手間かけさせてる貴方が何を偉そうにしてるんですか」
「それが仕事だろうがぁぁぁぁぁ!!」

そもそも私に落ち度は無い!飄々とするゲーニッツにツッコミの声は絶叫へと変わっていく。
ゲーニッツはヨハンの正論に何処か楽しげに首を緩々と振ると、ヨハンの手首に指を絡めて捻りあげた。
ギシッと肩の関節が不穏な音を立てて軋む。

「ひぃっ!? 痛い痛い痛いーッ!」
「痛いのが嫌なら協力しなさい、仕方ない人ですねぇ」

人の腕が曲がるはずの無い方向へ捻られて、ヨハンは思わず大声を出す。
仮にヨハンが仕方ない生徒だとしたら、ゲーニッツはどうしようもない教師だろう。
ギリギリと筋肉と骨が引き攣れる音が危機感を煽り、それなのに恐怖感から振り解くことは出来ない。
既にヨハンの身体の中にはゲーニッツの暴力が染みこんでいた。
この後、更に酷い行為が待っているのだと簡単に予想出来るのに、抵抗出来ないとは情けなくて頭が痛くなる。
それでもなんとか身を捩じらせて微かな抵抗を示すと、一層極める腕の力が強くなり、呻き声が喉から零れた。
こんなことなら、ほいほいと保健室などにくるのではなかった。痛みに歪んだ瞳が一瞬、保健室の扉を探す。
予想できていたはずなのに、最近はいつもルガールに助けられていただけに油断していた。
しかし今、ルガールはいない。
そこまで考えるとヨハンは無意識のうちにルガールを頼りにしていた自分の不甲斐なさを自覚してグ、と喉が詰めた。
自滅ばかりがヨハンを襲い、心臓までキュウと音を立てるように縮こまる。

「………何を考えているのですか?」

ヨハン、と名を呼ぶ場違いなほど穏やかな声が鼓膜を擽り、ヨハンは己の考えを改める。
ルガールは確かに優しく頼れる相手だが、ヨハン自身も立派なラスボスなのだ。
自分を奮い立たせるように頭を振ると、力強くゲーニッツを睨みつけた。
その反抗的な視線に当のゲーニッツは一層深い笑みを浮かべる。
一瞬のみ、ヨハンの視線が助けを求めるように扉へ注がれたのを見逃さず、 笑みを崩さぬまま、声が明らかにワントーン落ちた。
ヨハンとゲーニッツの脳裏に浮かぶのは意味合いの違う同一人物、金色の髪を持つ隻眼の彼。

「そう、ですか。………無事に帰すつもりでしたが、貴方が強情張るなら、 目上の者に対する接し方と言うものを教えてあげなくてはいけませんね」

嘘だっ!とヨハンは大声を張り上げたかったが、それを口にする前に手首に何かが絡まった。
シュル、と布の擦れる音がして、左右の手首が背中でぶつかり、驚愕が顔に広がる。

「やめろ!いい加減にしろ!これが目上の者がやることかっ!」

騒ぐヨハンを無視し、二の腕を掴んで無理やり立ち上がらせた。
引き摺るように連れられていくのは、カーテンで仕切られているベッド。
シャッとカーテンを引く音に、ヨハンの心音が跳ねる音が重なった。
背中を押されて、前のめりにベッドに倒れると重量に負けたスプリングが大きく軋む。
強かに肩を打ったが、スプリングが衝撃を吸収し、痛みは少ない。
だが、ゲーニッツが覆いかぶさってくるのに充分な隙が生まれた。
肩に武骨な指を掛けられ、両腕を下敷きにして身体の向きを変えられると真っ向からゲーニッツと対面する。

「やめろと言ってるだろう、ゲーニッツ!」

ヨハンの大声は薄いカーテンを揺らしたが、その程度で怯むようならトラウマラスボスなど呼ばれていない。
返事代わりにヨハンの下衣に腕を掛け、暴れる足を押さえつけるように無理やり脱がせた。
露になる自らの下肢に羞恥を覚えて、目の下に朱が走る。
煌々と明るい保健室で子供のように下衣を脱がせられて眦に屈辱の涙が滲んだ。

「……良い顔ですね、ヨハン」

ゲーニッツの飄々とした声に反応して赤い瞳に力を込めて睨みつける。
奥歯を噛み締めながら、せめてもの抵抗として足を持ち上げ、側頭部を狙ったが、 足がゲーニッツに届く前に足首を受け止められて、逆に大きく開かされてしまう。
掴まれた足首もギリギリと痛んだが、無理に開かされた関節も悲鳴を上げる。
ただでさえ、腕は自分の巨躯の下で押しつぶされているのだ、自由が利かないにも程がある。
しかも、ゲーニッツは何の戸惑いもなくヨハンの下半身を武骨な指先でするりと撫でてくるのだ。

「………ん…ッ」

直接的な刺激に鼻に掛かった声を思わず零れる。
低い声は自分で聞くだけでも羞恥を煽るが、それを目の前のゲーニッツも聞いている。
ヨハンは頬が熱くなるのを自覚した。
その反応に気を良くしたのか、ゲーニッツはヨハンの中心を指で握りこみ、ゆったりとしたスライドを開始した。
緩慢な愛撫はゲーニッツの指と、熱を認識するには十分で、頬から始まった熱が体中へ広がっていく。
駆ける鼓動に乗って、燃えるような羞恥がヨハンを支配する。

「ぃ…や、だ…ッ」

ヨハンは身を焦がす快楽に耐え切れず、掠れた声で拒絶を紡ぐ。
力任せに閉じた瞼の縁で睫が揺れ、生理的に浮かんだ涙が眦に溜まった。
唇を震わせ、何度もむずがるように首を振る。
その度に豊かな赤髪の流れが変わり、ゲーニッツの目を愉しませた。
サラサラと微かな音を奏でながら滑る髪を、狂風を操る指で絡め取ると、露になった耳元に唇を寄せ低音を叩き込む。

「人に――いえ、教師にものを頼む態度ではありませんね」
「ゲーニッツ…ッ!」

外耳をなぞる吐息のせいか、低音が持つ獰猛さのせいか、ヨハンの肩が露骨に跳ねた。
その反応に、ゲーニッツは笑気を漏らしながら掌に捕らえた熱を摩擦した。
ヨハンの吐息に熱っぽさが混じり、ゲーニッツの手が濡れる。
先走りを擦り付けるように五指を絡めれば、卑猥な音が下肢から響きヨハンを一層追い詰めた。
悦楽と恐怖で小刻みに震える首筋に舌を這わせて甘く噛むと、前から零れる先走りの量が増す。
窺うように視線のみを上へと向ければ、涙で潤んだ瞳が必死にゲーニッツを睨みつけていた。
今にも零れそうなほど涙を湛えた顔に、ゲーニッツは声を殺して笑った。
ヨハンが頗る苦手な、サディスティックな――恐怖を覚えずにはいられない笑みだ。

「そうですね……先生、と言えたら、お仕置きはやめてあげましょうか」
「な…っ!?」

笑みそのままに言われた言葉に、ヨハンの顔に驚愕が走る。
大きく見開かれた瞳から、堪えきれなくなった涙が零れた。
ヨハンの頬を雫が伝うと、ゲーニッツの長い舌が掬うように舐め取った。
素直に鳥肌を立てたヨハンに構わず、眦まで到達した舌は濡れる睫まで舐め上げた。

「何を考えてるんだっ!ゲーニ――――ッ!?」

怒声、というより、驚愕の意味合いが強い大声は後半で失墜する。
今までヨハンの熱を玩んでいた濡れた指が、慎ましく閉じられた秘所を暴いたのだ。
多少の滑りを持つ指は、強引にヨハンの体内へと押し入り呼吸の隙を狙って奥へと進む。
冷たいゲーニッツの指は太く、咥え込んだ後孔がギチギチと異物を締め付ける。

「聞こえませんでしたか、ヨハン。それとも……貴方は教育者に対しての礼節も弁えられないのですか?」
「あっ…、く、ゃ、……ふ――ッ」

ヨハンは思わず上げてしまった嬌声を堪えるように奥歯を噛み締めて強く瞳を閉ざし
噛み合わせすぎて微かに唇が震える。
少しでも力を抜けば、そのまま唇も解けて、酷くみっともない声をあげてしまいそうだった。

「さぁ、言ってごらんなさい」

唆す声にあわせて、深くを抉られる。
ヨハンの良いところを分かっているはずなのに、態と掠める程度で焦らしてくるのだ。
その癖、深度はきつく、ヨハンは自ら腰を揺らしてゲーニッツの指に縋ってしまう。
それなのにゲーニッツは戯れに奥底を煽るように掻き乱すばかりだ。
熱がヨハンの中で渦を巻き、性急に意識を燃やし尽くしていく。
ヨハンは恥辱に耐えながら、奥歯を噛み締めるように強制される言葉を吐き出す。

「ぁ、…ぅ、――クソ…ッ――、……ゲーニッツ…ん…ッ、せ、ぃ……ぁ、」

今にも零れてしまいそうな涙を懸命に堪えて吐き出す声も酷く弱弱しい。
己が声を出すだけで振動がゲーニッツの指先を擽るらしく、ク、と性器裏を指腹で捏ね回されて巧く言葉が紡げない。

「止め、て……っ、く…、」
「……“止めてください、先生”」

言い聞かせるように耳元で囁かれ、指を折り曲げられるとヨハンに逆らうことなど出来なかった。
じわりと眦に新しく熱い液体が浮いたのを自覚したが、ヨハンは諾々とゲーニッツを享受する。
自分でも恥じ入るほどに掠れた声を出しながら、ゲーニッツが求める言葉を復唱した。

「………ッ、て…、くだ……ぅ――ッ、ぁ…っ、………せん…、…せ…ぃ」
「―――…はい、良く出来ました」

言葉と言うには途切れすぎて、小さすぎたが、それでも満足してくれたのか、 ゲーニッツは指で粘膜を刺激しながら、ズルリ、と内側から引き抜いた。
しかし、ゲーニッツの声が余りにも楽しそうで反射的に身が強張る。

「では、ご褒美をあげましょう」
「――――ッ!!」

抵抗も出来ない身体に押し入ってくる熱い塊、緊張した肢体を看破する欲に喉が引き攣った。
大きく脈を打ちながら、ヨハンの身体を蹂躙し、思わず仰け反るほどの衝撃を受けた。
自分の中を他人に満たされる感覚に目を見開いて、眦から涙が絶え間なく零れ落ちる。
赤い髪がシーツに波打ち、ゲーニッツは満足そうな吐息を漏らす。
そのままヨハンの両足を抱えて、腰を浮かせると見せ付けるような角度に固定して、ゆっくりと腰を揺らした。
グズグズ、と結合部から肉同士が擦れ合う生々しい音が聞こえてくる。
そのたびにヨハンは喉を引き攣らせて、初めて齎される熱量に忙しなく息を吐き出す。
ゲーニッツが腰を引くたびに身体の奥が燃えるような熱が生まれて喘ぎ声に変わる。
舌が回らず、不規則に母音を漏らすだけの唇で切れ切れにゲーニッツの名を呼ぶ。
身体の奥で痛みは甘い疼きに摩り替わり、名を呼ぶことで溺れてしまいそうになる自分を叱咤した。

「ヨハン……ッ」

ゲーニッツの声が何処か切羽詰って聞こえる。
グッ、と強く、深く押し入ってきたゲーニッツが熱くて、苦しくて、それなのに身体の中が満ちていく。
どうして、とヨハンは思わずには居られない。
――――どうして、もっと柔らかく、優しく出来ないのだろうかと。
そんなに情熱的な声で呼ぶくせに、酷く手荒で酷いことばかりするゲーニッツに混乱が頂点を極める。

「私のヨハン…、」

内臓を押し上げられるような律動でスプリングが一際高い悲鳴をあげた。
ゲーニッツに名前を呼ばれると狭隘な肉筒が窄まり、熱量を改めて自覚してしまう。
思考の殆どは四散し、意識は乱れて混線する。
自分の鼓動とゲーニッツの鼓動が近すぎて、頭がクラクラと痛んだ。

「……魂も身体も、全て私なしでは居られぬように」

このまま溶けてしまう。もう、何も分からない。
繋がった場所から交じり合って、前も後ろも分からず熱に身体も精神も焦げていく。
こんな手酷く暴力的な熱に浮かされて、もう如何することも出来ない。
無意識のうちにゲーニッツの名前を呼んだ気がしたが、上手く言葉になっただろうか。
応じるように熱っぽく名を呼ばれたのは幻聴なのか現実なのか判別付かない。
それでも、何故だか酷く優しく髪を撫でられた気がしたが、思考が生まれるたびに身体を貫かれて燃え尽きる。
夢なら醒めろ、早く醒めろ。でなければ溶けてしまう。
涙に溺れ、甘い刺激に身体の中心まで犯されて、自らを組み敷く男の名前を呼びながら、落ちていく感覚に包まれる。
きっと、墜落したとき、この男なしでは居られなくなるのだ。
絶望のような結論と共に、心の底に生まれる暖かいものを自覚してヨハンは強く眼を閉じた。












「少し、よろしいですか?」

職員室で一時間目の授業の準備をしていたルガールは、不意に声を掛けられた。
書類に落としていた顔を上げると、そこには何かと教え子に絡んでくる気の合わない同僚が立っている。

「何だ、ゲーニッツ。今日は保健の授業はないぞ」

あらかじめ図太い釘を刺して牽制しつつ、何故かにこやかなゲーニッツに言葉を返す。
五寸釘並みの牽制を朝から貰いつつも、全く気にした風でないゲーニッツは一枚の紙をルガールの前に差し出して言葉を続けた。

「先日の健康診断の結果が芳しくない生徒がいるので、また保健室にやっていただきたいのです。
生徒の健康管理を任されている身としては、万に一つの危険要素も見逃せませんのでね」
「………そうか」

ゲーニッツの言葉を聞いて、数秒考え込むように顎を引くと片手で頬を撫でてから視線を起こす。
妙な違和感を払拭できぬまま口を開き、軽く同僚を睨みつけた。

「……作為的なものを感じるんだが?」
「失礼ですね。貴方でも体調不良なのは見ていて分かるでしょう?」
「……まぁ、確かに様子が可笑しいとは感じてるが……」

今日の彼は何処か足取りも覚束なく、眼の下に薄いクマまで持っていた。
しかし、ルガールが心配して声を掛けても慌てたように話を誤魔化して逃げるだけで、 不調だろうということは分かったが、それ以上のことは分からない。
いっそと思い、直に聞いてみたが、何故か眦を赤くするばかりで要領は得なかった。

「そうでしょう?私とて職務で手を抜くつもりはありませんからね」
「ふむ……、それなら仕方あるまい。しかし―――」

ルガール自身、不調と縁遠いこともあって専門であるゲーニッツの言葉を無碍にすることも出来ない。
それでも、これだけは言わなければいけないと言う風に声を低くして、隻眼が青い瞳を覗く。

「ヨハンが嫌がることはするな」

きっぱりと告げる彼の名前。確固たる強さを持って告げる一言は教師が生徒を庇護する質のものとは明らかに一線を画していた。
真っ直ぐに言い切られた言葉に、ゲーニッツは冷たく瞳を細めて座っているルガールを見下ろし、感情の篭らない声が続く。

「貴方にとやかく言われることではありません。幾ら担任と言えど、職務の邪魔をするなら私も容赦しませんよ」

瞬間的に空気が張り詰め、職員室の温度が確実に二度は下がる。
しかし、威圧感を発してくるゲーニッツに臆した様子も無く、ルガールは金色の髪を揺らして首を左右に振った。

「違う」

露わになった否定的な態度にゲーニッツの片眉が小さく跳ねた。
明らかな不快感を隠そうともしない態度に、ルガールは語調を強めて続きを口にした。

「担任としてではなく、一個人として言っている」
「……なら、尚のこと、」

呆れたようにやれやれ、と息を吐き出してゲーニッツは口元に笑みを浮かべながら、人外の瞳を細めた。

「彼は私のものです」

堂々と言い切ったゲーニッツからひやりとした風が生まれた。
思わず、ゲーニッツ、と止めるルガールの声を無視して白衣を翻し、ゲーニッツは踵を返す。
職員室の扉に手を掛け、ゆっくりと開くと、肩越しに睨みつけてくるルガールを振り返り、再び唇を動かして宣言する。
しかし、それは宣言と言うよりも、縋るような、頼むような、小さく弱い声だった。

「………彼は、私のものなんですよ」

その一言を残し、扉を抜けていくゲーニッツを見送って、ルガールは深く溜息を吐き出す。
小さく舌打ちをしながら、己の前髪に指を差し込んでクシャリ、と掻き揚げた。

「私もお前も、教育者だろう…」

頭で考えたはずの言葉が本音のように口から零れて、驚くと共に今一度溜息が漏れる。
うっかり迷い込んでしまった袋小路で、その実、自分もゲーニッツと変わらないじゃないか、と、 キリキリ痛む胃を押さえつつ、三度目の溜息を吐き出した。




TOP
Template by KKKing