Kiss×Kiss
!注意
ゲーニッツ×グスタフ小ネタ。
甘いけれどもオチがない。
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.祭祀様を起こすのはグスタフの大切な日課である。
オロチ一族の例に漏れずゲーニッツも酷く朝に弱い。
起きよう、起きたいと言う意志はあるのだが血が体に回らず、瞼が全く持ち上がらない。
オロチの血が濃い分、特性が出やすいのだろうが、
そんな風にベッドに懐く祭祀様を見るとグスタフの頬は知らず知らずの内に緩んでしまう。
穏やかな顔をして眠る祭祀様は格別だ。それでもいつまでも見つめているわけにはいかない。
グスタフはゲーニッツが籠城する布団に手を添え、ゆらゆらと揺すり起こす。
初めは力を入れず、全身に血を巡らせるように刺激して
ゆっくりと、とびきり低い声でゲーニッツの名を呼び、ピクリと震える睫に誘われるように顔を寄せた。
「…祭祀様、」
吐息がゲーニッツの耳朶をくすぐり、穏やかな寝顔に僅かな緊張が走る。
「祭祀様、お時間です」
今一度声を掛けると億劫そうに瞼が持ち上がって潤んだ青の双眸が露わになる。
まだ焦点の合わないあどけない表情に静かに息を飲む。
跳ねた心音も見惚れた疚しさも覆い隠して、そっと唇をゲーニッツの瞼に押し当てた。
柔らかく啄めば、薄い皮膚から力が抜けていくのがわかる。
グスタフの全てで以て起床を促すと、漸く意識まで覚醒してきたゲーニッツが緩慢に笑みを浮かべて身を起こす。
右手を持ち上げ、黒髪に指を差し込んでさらりと撫でた。
「おはようございます、グスタフ」
鼓膜を擽る低音は心地良く、朝から至福を感じる。
胸の内側が温かいもので満ちて、グスタフの夜が明ける。
この青い瞳ごしに己の姿を映して、ようやく一日が切り替わるのだ。
顔の横を滑り落ちていく指先に黒髪を梳かれ、双眸が撓む。
しかし、その指先が毛先まで落ちると途端に指先に力を込めて、グッとグスタフの顔を引き寄せた。
「ッ!?」
声は出さなかったが、頭皮を強く引かれてグスタフの上体が落ち、
額がぶつかりそうになった所でベッドヘッドに手を掛け、鼻先がぶつかる直前でブレーキを掛ける。
ゲーニッツの眼は撓んで、楽しげに笑っていたがそこには多分の揶揄が見えた。
「――…グスタフ、お忘れですか?」
幾らか虚ろ気な色を孕む声に、グスタフは瞳を瞬いて返す。
疑問符が頭の上にぽっかりと浮かぶが、それを身咎められたのか再びゲーニッツに髪を引かれて毛根を苛められた。
引かれるたびに反射的に眉が跳ねると、眼の前の上司は楽しげに唇を歪める。
「眠りから覚める時は、瞼ではなく―――」
擦り寄せるように鼻先が近づいてくると、爽やかな風の香りが鼻孔を擽る。
まどろむような微風と共に、ゲーニッツの声が続いて言い聞かせた。
鼻先どころか、吐息までぶつかる近い距離感にグスタフの耳朶に熱が走る。
「唇が、良い。と、言ったでしょう」
叱るほど強くなく、けれど反論させるほど弱くない言葉と共に、
ゲーニッツは目覚めのキスを、薄く開いた唇に押しつけた。
こうして、甘やかな主従の朝はようやく明けるのである。