M25 ただの物置。

世紀末基準



!注意

バルバトス×ジャギの顔の話。
仲良く同棲中。


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ジャギはバルバトスが掛け値なしの器量良しだと思っている。

青銀色の長い髪は緩やかなウェーブが掛かっており、腰まで垂れる水面のようだ。
同じ色の睫を見れば、それが地の色なのだと良く分かる。
その睫も綺麗に生え揃っていて、しかも男の癖に下睫まで整っている。
褐色の肌は張りがあり、紫色の瞳はまるで宝石のようだ。
しっかりとした肩に、逞しい二の腕。それで居てジャギより細い腰は長い脚に繋がっている。
こんなに美人であるのに、身長はジャギより恵まれていて、顔を持ち上げないと視線が合わない。
飾らないバルバトスの仕草は粗野でなく、野性味を増幅させて男を上げているに過ぎない。
そこまで考えて、ジャギはほう、と見惚れるような息を吐き出した。

「どうした、もう限界か」
「違ぇよ。俺様がこの程度で音を上げるはずもなかろう」

テーブルを挟んで酒を飲み交わしていたバルバトスは不意の吐息に疑問を投げてきた。
視線は先ほどから感じていただろうに、見蕩れていたからとは結びつかないようだ。
結びついてもらっても、気まずさと気恥ずかしさでテーレッテーなのではあるが。
何はともあれ、これだけ恵まれた容姿をしていながら、バルバトスは自分の外見に疎い。
一度、暑いから。という理由で髪をばっさりと切ろうとした時は、さすがのジャギも心底焦ったものだ。

「いや、ただ。手前ェ、男の癖にえらい綺麗なツラしてんなぁ…っと思ってよ」
「………あぁん?」

既に酒が入って久しいが、真っ向から当然のように言われて、 バルバトスは眉間に皴を寄せ、考えるように小さく唸った。

「目ぇ腐ってんじゃねぇのか」

新しいビール缶のプルを容易く開けて、喉を鳴らしながら酒を煽る。
シュワシュワとした炭酸が喉を焼いて、心地良い。
ただ、ジャギの言った言葉が腑に落ちず、首を捻って青い髪を揺らした。
バルバトスの概念で言うと、“綺麗なツラ”と評されるようなのは、 どこぞの紙王のような生っちょろい優男のことだと言う先入観がある。
こんな筋肉質の三十路も過ぎた大男に一体何を言うのか。

「俺だけじゃねぇって、兄者達も別嬪だって言ってたぜ」

その言葉には流石にバルバトスも炭酸を噴出した。

「うぉおっ!?汚ねぇなっ!行き成りなんだ、手前ェッ!」
「それはこっちの台詞だ!貴様ら全員、どんな目してやがるっ」
「見りゃわかんだろ、こんな目だよ」
「仮面が邪魔だ」
「おい、こら。何、どさくさに紛れて脱がせようとしてやがんだ」

炭酸を噴出した口元を拭いながらも、ジャギのメットに手を伸ばしてくるバルバトスの手を払う。
隙あらばメットを奪おうとするバルバトスの方が、ジャギは酔狂だと思わざるを得ない。
しかし、そんな抵抗にバルバトスは不満を隠さず舌打ちし、憮然とした態度で声を返す。

「俺は貴様のツラの方が好きだ」
「ばっ、こんなもんで酔っちまうとは腑抜けたかぁ〜!?」
「酔ってるのは貴様の方だろう」
「違ぇ!手前ェの顔は嫌いじゃねぇって話だろ」
「フン、」

バルバトスは酒気帯びの呼気を吐き出してから、酒を一気に煽って空の缶をテーブルに捨てた。
ゆっくりと立ち上がれば、大股でズカズカとジャギの隣まで歩み寄る。
思わず構えるジャギは片手でメットを押さえながら、絶対的な力量差のある相手を睨みつける。

「世紀末基準だがなんだか知らんが、俺は貴様のツラも嫌いじゃねぇ」

構えていたところにさらりと返されて、挙句、ジャギのコンプレックスを一言で吹き飛ばす。
グ、と言葉を詰めると、バルバトスは口角を持ち上げ、ジャギのメットに手を置き、 後頭部をソファに擦り付けさせるように顎を起こさせると凶悪な笑みを口元に浮かべて見せた。
間近に迫力のある顔が迫ってくるとジャギは思わずバルバトスに見とれてしまう。
本当にバルバトスは綺麗な、ジャギ好みの顔をしているのだ。

いや、本当は顔だけではなく―――、
「貴様はどうなんだ?」
「ぁあ?さっき言っただろうが」
「違う、……ツラ以外の話だ」
「……………」

丁度考えていたことを図星指されたようで、ジャギは思わず閉口した。
メットを固定されていても、視線だけが下がってしまう。
しかし、わざわざ言わせようとする悪趣味さも実は決して嫌いではない。

「ジャギ?」
「…………、………んなこたぁ、手前ェが一番良く知ってるだろうよ」

小さく吐き捨てるように告げて、熱い頬を隠すように更に視線を下らせる。
ふ、と笑った気配がしたが、きっと今日はお互いに飲みすぎたんだと思うことにした。

「良い子だ、……ジャギ」

思い切り声を潜めた低音を出すと、確かにジャギはぐぅの音も上げられないように押し黙り、 メットを緩慢に押し上げて外すバルバトスに一切逆らわなかった。
バルバトスはそんな従順なジャギを見て、世紀末の美的感覚は未だに良く分からないが、 キスする時には便利だな、と思ったとか思わなかったとか。



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