オロチ様が見てる
!注意
グスゲニ小話。
メタ&ささやかなNL描写あり、ギャグ。
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唇を合わせると同時にグスタフはゲーニッツの体躯を寝台へと押し倒した。
シーツが波を打ち、二人分の体重を受け止めてマットが沈む。
左腕をゲーニッツの耳の隣へとついて、右手で生え揃った髭を撫でると、甘い声が咽喉を震わせた。
低く、よく響く声をすべて独占しているのだと自覚すれば、下腹部に熱が溜まる。
性急に進めてはいけないと理解しながらも、口づけの角度を変えるだけで身を捩るゲーニッツを更に追い詰めたくて仕方がない。
顎髭を撫でて、首筋に触れると、普段は冷たい肌が熱を持っていた。
けれど、それに直ぐ気付ない程度には、グスタフの指先も熱くなっている。
ともすれば、震えてしまいそうになる指先で、胸元に光る金色の留め具を外す。
小さな金音を厭うように、ゲーニッツに手首を掴まれ、グスタフは動きを止めた。
「祭祀様……」
促すように声を吹き込んで、唇に吸い付いて先への許しを請う。
無論、拒絶されたなら手を引くつもりではいる。
自分の欲を解消したいから、不敬を承知で迫っているのではない。
「………後悔、しますよ?」
「どのような処罰も受ける所存です」
「………、……私は止めましたからね」
ゲーニッツの指先が手首を下り、シーツへと落ちていく。
それを咄嗟に掬うと、グスタフは恭しく指の節へ唇を乗せた。
忠誠を誓うように瞳を細めて、敬愛するゲーニッツの肌へ触れ、僅かに舌で節の山を撫でる。
指先を微かに揺らしたゲーニッツは強い眼差しでグスタフを睨みつけた後、キスを振り払うようにして視線を背けた。
ゲーニッツなりの照れ隠しを小さく笑い、グスタフは詰襟をゆっくりと解いていく。
厚い生地で作られている法衣を傷つけぬように、細心の注意を払いながら、指を滑らせる。
張りのある首筋が露わになり、緊張しているのか喉仏が緩やかに上下した。
思わず噛みつかなかったのは、理性の賜物だと思いたい。
既に下肢は熱く、浅ましい熱を持ち、瞬きすら忘れて見入る。
スル、と青の法衣の下へ手を差し込み、ゲーニッツの前を割った。
インナーの色は清潔な白、丸首の襟は機能性重視なのかもしれない。
たっぷりとした裾は長く、上背のあるゲーニッツが着ても大分余裕があった。
穢れの無い白の真ん中に、流れるような字体が中央に踊っている。
力強く、それでいて自由さを感じさせる文字は見覚えがあった。
染まらない白に、明暗を際立たせる黒。
厚い胸板を覆うそれには、『無に還ろう』と筆字で書かれた。
「どうしました? グスタフ」
楽しげな声をがっくりと下がった脳天で聞いてもグスタフは復帰できない。
衝撃から立ち直れないグスタフを見てゲーニッツは更に楽しげに笑気を漏らす。
黒髪が左右の視界を閉ざし、グスタフの目の前は名実ともに真っ暗だった。
その特徴的なTシャツはグスタフにも見覚えがあった。
何に感化されたのかは知らないが、いつかオロチから配られたものである。
液体窒素も驚きの瞬間冷却に気力を振り絞って耐えるも、背中側には『我、イグのんと共に在り』と書かれていることを思い出してしまう。
グスタフも持っているので知っているが、着たことは未だかつてない。
一族の長から受け賜ったものだと言う恐れ多さ半分、ごく普通の美的感覚を持つグスタフに「これはない」と思わせるセンスの無さ半分。
ゲーニッツが着ている理由は分からないが、グスタフの心を毎秒、勢いよくへし折ってくる。
腕を止めてしまったグスタフを唆すように笑うゲーニッツの声が脳内によく響いた。
「おや、続きはしないのですか?」
誘うような声はグスタフの理性を焼き切るほどに艶めいている。
ただ無慈悲な行書体が視界の端で邪魔し、脳内でオロチボールが騒ぎ出す。
まるでグスタフの反応を楽しむように笑みを口元に敷いたゲーニッツが龍蛇の眼を細めた。
「しないのでしたら、休みたいのですが」
もしかして、わざとなのですか。祭祀様。