M25 ただの物置。

誘導尋問



!注意

ジェネラル×オズワルド小話。
ジェネオズですが、ジェネ様がほとんど出てきません。
また、ウィンドさんが腐ィンドさんです。


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メール便を片付け、小休止をしていたオズワルドの向かいに、風の香りが色濃く残る女性がするり、とごく自然に腰掛けた。
おや。と口に出さず片眉を跳ねさせれば、整った顔立ちに華やかな笑みを浮かべて見せた。

「お疲れでしょうと思いまして」

言って出されたのは、四角い箱にぎっしりと詰まった黒艶の美しいチョコレートだった。
ちらりと見えた包装紙には、オズワルドの好む銘柄が描かれており、わざわざ用意してくれたのだというのが見て取れた。

「良いものをお持ちで。ご相伴に預かっても?」
「勿論ですとも」

オズワルドは色良い返事に、ふ、と口元に笑みを添えて、ウインドの分の紅茶をカップへと注ぎいれる。
紅茶の香りが広がり、空のように深みのある青い瞳も和むように細まった。
オズワルドは、ウインドの差し入れたチョコレートを摘みつつ、紅茶の味をゆっくりと愉しむ。
すると、紅茶の香りに触発されたのか、ウインドが笑みを浮かべながら口を開いた。

「まおりんの紅茶も美味しいですけど、オズワルドさんの紅茶も美味しいですねぇ」
「それはどうも。尤も、舞織さんの淹れた紅茶に敵うとは思いませんが」

賛辞に礼を述べるも、本音を後半に混ぜて返した。
紅茶党の尖兵の舌を満足させる彼女の腕前はかなりのものだ。
持ち前のセンスは勿論、相当の努力を積み重ねただろうあの味にはどうしたって勝てる気がしない。

「またまたぁ。この間またジェネ様にも聞きましたけど、甲乙付け難いって言ってましたよ!」
「また就業時間中に抜け出してたんですか貴女は」
「いやですねぇ私がそんなことするわけないじゃないですか!」

なおも賛辞を贈るウインドに微妙に面映くなったオズワルドは照れ隠しの意味も兼ねて鋭く指摘する。
あははーと軽やかに笑って誤魔化そうとする姿に、仕方のない人ですねぇ、と肩竦ませながら呟いた。
一体どちらが『仕方ない』のかは考えずチョコレートを摘めば、話題変更を狙ったのかウインドが再び口を開いた。

「でもジェネ様って本当に卒がないですよね。さすがパーフェクト・ソルジャーは格が違った」

無意味に腕を組み、したり顔でうんうんと頷く様子は何処か微笑ましい。
言っている内容にしても、オズワルドとて同意見だったため、緩く首肯する。

「そうですねぇ」

オズワルドの穏やかな低音に力を得たのか、
ウインドが年頃の女性らしくクスクスと笑みながら、たとえば、と前置きして想像を口にした。

「寝てるときとかもピシーッとして動かないイメージですよね」
「そうですか?割と寝相は悪いほうですよ?」

紅茶とチョコレートに舌鼓を打っていたオズワルドは深く考えずに続きを紡ぐ。

「抱きつき癖もありますしね。何か抱いてないとキチンと寝られないようです」

あの天下無敵のパーフェクト・ソルジャーにも人間らしいところもあるものだと笑ったのは随分前になる。
今ではジェネラルが抱きついてこないとオズワルドも深く眠れないのだから、慣れとは存外恐ろしい。
実際は慣れではなく、惚れた弱みという非常に厄介なものなのだが、もう暫くは自覚を遠くに置いておく。
只のしがない尖兵にこれ以上、心乱される姿を晒すのはフェアじゃない。

「…え?」
「はい?」

そんな風にオズワルドが心中で結論を出した瞬間に、ウインドが目を丸くして間抜けな声を漏らした。
その声に、オズワルドは思わず問い返す。しかし、ウインドからの返答はない。
オズワルドとウインドの間を、エアコンから吐き出される温風が過ぎ去り、お互いの一言を待って沈黙が堕ちる。
そして。


「……――――ッ!!!」


いち早く我に返ったのはオズワルドだった。
深く考えずに零した言葉たちはとんでもない爆弾だったと今更ながらに気付いたオズワルドは、彼にしては珍しく、サッと首筋までを朱色に彩った。
その反応に、アレやらコレやらの妄想を書き立てられたウインドは、すかさずネタ帳を取り出し、ボールペンを振りかざした。

「ちょっ!オズさんもう一度お願いします!」
「何を言っているんですか貴女は!!」

羞恥と狼狽で必要以上の大声を出しながら片手を熱くなった頬に当てる。
しかし、その反応は一層ウインドの想像力を駆り立てたようで、
ずずいッとばかりにテーブルに身を乗り出してオズワルドへとにじり寄ってくる。
やんわりと距離を測りながら逃げるも、茶をしているのはオズワルドの執務室だ。
この場所からの逃亡が出来ない以上、完全回避は至難の業である。

「後学のためにも詳しく!!」
「知りません!!」

嬉々としながらメモ帳を広げ迫ってくる美しい顔に激しい頭痛がする。
オズワルドは苦し紛れに吐き捨てて紅茶を啜るも、脳裏に寝相の悪い某尖兵を思い出してしまい自滅した。



爛々と瞳を輝かせるウインドに、オズワルドは己の迂闊さを壮絶に呪ったのだった。



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