M25 ただの物置。

師走の恋人



!注意

ジェネラル×オズワルド小ネタ。
オズさんが甘えたでジェネ様が甘いです。


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オズワルドの仕事は、神無月を過ぎると一気に忙しくなる。
全部署が年度変えの準備と年末処理に追われ、皆一様に無言で仕事を黙々とこなし、
果てがあるとも思えない膨大な量の荷物へと果敢に挑み、そのうちの何人かは体力が尽きて志半ばで倒れ病院へと運送される。
それに耐えたとしても、自らが処理しなければならない仕事に加えて、お歳暮シーズンが津波を起こし、追撃として年賀の運送が始まり、
春になれば新生活を始める人々が引越し荷物の運送を留めのように依頼してくるため、やはり一定数は耐えられずに津波に呑み込まれていく。
現世の地獄で、文字通りの雪解けの季節を待ちながら、オズワルドは疲れきった身体を引き摺るようにして自宅の扉を潜った。

「――――ただいま…戻りました…」

扉を潜ると同時に足から力が抜けて、そのまま玄関へと倒れこむ。
しかし、オズワルドが廊下の冷たさを感じるより早く、力強い腕に抱きとめられた。
ふわり、と香る紅茶の芳香に、身体の力が一層抜けていき、ジェネラルの腕に掛かる負荷が増す。

「オズ、お帰り」

迎える言葉を紡ぎながら、無音で甘える恋人の身体をしっかりと抱き直した。
途端にぐにゃり、と力の抜ける痩躯を支え、腰を抱き上げると手馴れたように革靴を脱がせて寝室へと運んだ。
器用にドアを開け、キングサイズのベッドにオズワルドを座らせると手早くコートとマフラーを取り去り、ジャケットとネクタイも解いてしまう。
皺にならないようにクローゼットに仕舞いこむと、ぼんやりとしている隙にサングラスも外して、酷使しただろう瞳に労わるようなキスを乗せた。

「さて、食事にするかね?それとも風呂を先にしようか?」
「―――……寒いです」
「そうか。では温まってくると良い」

短い選択の声に笑みを深めると、しっかりと締められた貞淑なベルトを緩め、スラックスを長い足から抜いていく。
外気が素肌を撫でて、ふるり、とオズワルドの肩が揺れた。
シャツだけを身に纏った肢体を冷気から守るように抱き寄せて、横抱きにする。
瞼を半分下ろしたオズワルドを寝室から連れ出し、振動が伝わらないように細心の注意を払いながら浴室へと移動する。
たっぷりと浴槽に湯を張ったため、脱衣所まで白い蒸気が充満して冷えた肌を柔らかく温めていく。
オズワルドの唇が薄く開き、小さく吐息が漏れ、酷く億劫そうに腕を動かしてシャツを脱ごうとする。
横抱きにしている不安定な状況で動かれると、決して落とすことはしないもののバランスが危うくなる。
腕に伝わる体温が、いつもよりずっと冷えているのを考慮すれば、本当に早く温まりたいのだろう。
ジェネラルは足先からゆっくりとオズワルドの身体を下ろすと、腰を抱き寄せて自らに凭れかけさせた。

「私が脱がせよう」
「―――閣下が言うと、何か意味深に聞こえますねぇ…」
「……君は大人しくしていたまえ」

幾分調子を取り戻してきたのか、やんちゃな声が耳を打つ。
それでも腕が持ち上がってこないあたり、今日も忙しかったのだろう。
ジェネラルは短く切りそろえられた髪に顎を乗せて、背後から抱きしめるように腕を回すと、シャツの鋲を一つずつ外し始めた。

「毎年の事とは言え、大変だな」
「いえいえ。私などより若…アーデルハイド副社長の方がお忙しいですよ」
「ルガールはどうしたのかね?」
「十時の時点で、『飽きた。トーナメント荒らしてくる』と言い残して消えました」
「――――…そうか」

オズワルドの声が低くなるのは仕方のないことだろう。
若くして奔放な父親に苦労を掛けさせられている真面目で常識ある若者をそのまま放っておくなどオズワルドが出来るはずもないのだ。
だとするならば、己の仕事に加えて、抜けたルガールの分の仕事もこなしてきたということになる。
そう考えると、よく途中で力尽きなかったものだといっそ感心してしまう。
昼食も取れないほどの激務だと聞いているから、今日も食べてないのだろうし、何よりこんなに細い腰をしているくせに何処にそんなスタミナがあるというのか。
思わず繁々とオズワルドの裸体を見やり、抱き寄せた細い腰を労わるように撫ぜる。
冷えた肌にジェネラルの掌の熱が心地良いのか、それとも立っているのか辛いのか、凭れかかる重さが増した。
両肩を支えるように掴むと、小さく笑んで口を開いた。

「さて、私は食事の準備をした方がいいかね?」

オズワルドのことを考えるなら、このまま湯に浸かっている間に食事の用意をしていた方が効率的だ。
そう思って言えば、オズワルドがゆっくりと振り返る。
半分以上落ちた瞼が影を作り、酷使された身体を持て余して酷く気だるげな様子だった。
頬に掌を当てれば、甘えるように擦り寄って瞼を下ろしてしまう。

「……頭を洗って頂けますか?」
「喜んで」

オズワルドが零した甘えに、ジェネラルはキスで応えると、湯気で詰まった浴室の扉を開けて紳士のようにエスコートした。






食事を終えて、ミルクをたっぷりと入れたミルクティを飲み干せば、オズワルドの瞼がゆっくりと瞬きを繰り返す。
ジェネラルは食器を食洗機へと並べてタイマーを仕掛けると、そのままキッチンから出てオズワルドの傍らへと片膝を付いた。
すると、まるで待っていたかのように腕が首へと回り、オズワルドの身体が傾いていく。

「すまない、待たせた」
「―――…い…え……ありがとう、ございます……」

白河夜船に足を掛けながら、それでも掠れた声で応じる姿が愛しい。
ジェネラルは温まった身体をひょい、と抱き上げると、リビングの照明を落として寝室へと向かった。
腕の中でオズワルドがひっきりなしに欠伸をかみ殺し、時折長い指で目を擦っている。
ジェネラルはその仕草に苦笑し、指先へと唇を寄せた。

「瞳を傷めるぞ」
「……は…い……」

とろとろと眠りの淵へと沈んでいくオズワルドの意識はあと幾らも持たないだろう。
ジェネラルはオズワルドを抱いたままベッドへと上がり、諸共シーツの海へと身を投じた。
身体を痛めないように寝姿を整え、頭の下に柔らかい枕を敷いてやると、呼気が分かりやすく深くなる。
風を立てずに毛布を掛けて、隣に寝そべればオズワルドの手が探し物をするかのように毛布の下で蠢いた。

「―――…閣下……?」

意識は殆ど眠りに囚われているくせに、危うい線で意識を保っている。
その理由を知っているジェネラルは小さく笑うと、オズワルドの手を大きな掌で包み込むようにして繋いだ。
手から伝わる温もりに漸く満足したのか、オズワルドはそのまま意識を霧散させた。
まるで泥のように眠る姿は無防備で、それほど心を許されているのだと思えば胸が暖かいもので満たされる。
ジェネラルは小さく笑って、そっとオズワルドの耳元に唇を近づけた。

「……君を疲れさせるのは、私の特権だろう?」

偽りのない本心を小さく呟くと、手を繋いだまま、暖かい恋人を抱き寄せる。
そうすれば、ジェネラルにも眠気が移ってきて、意識は急速に薄れていく。
ジェネラルはそれに逆らうことなく、夢の世界へと落ちていく感覚に身を任せた。
意識が完全に落ちる前に、明日ルガールを見つけたら運送会社へ強制送還しようと誓い、ジェネラルも一足遅く夜船へと乗船したのだった。



翌日未明の某トーナメント会場で、ワープ音と共に運送される見慣れた赤いスーツが居たとか居ないとか。



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