M25 ただの物置。

君の瞳に乾杯



!注意

ジェネラル×オズワルド小話。
閣下の酒癖注意。


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オズワルドは長い足を組んで、ソファに身を預けていた。
皮手袋に包まれた手でグラスを持つと、ガラスと氷がぶつかり澄んだ音を奏でる。
香りの強い酒で僅かに唇を潤せば、微かな笑気が耳を打つ。
視線を音源に向ければ、ジェネラルが紳士的かつ男らしい笑みを浮かべながら、オズワルドを見つめていた。

「……閣下」
「何だ?」

低く呼びかければ、上機嫌な声が返ってくる。
僅かに肩を竦めると、音もなく立ち上がったジェネラルがオズワルドへと近寄ってくる。
別段、意識していないのだろうが足音を殺し切っているのは彼なりの癖なのだろう。
何とはなしにその動きを追っていると、ジェネラルはオズワルドの前で肩膝を付いた。
まるで、御伽噺の騎士が、姫君にするかのような仕草は酷く気障だったが、それが嫌に似合っていて
オズワルドは気恥ずかしさから眉を顰めた。

「―――呑みすぎです」
「そうだろうか?」
「はい」

はっきりきっぱり言い切ると、ジェネラルが可笑しそうに笑った。
ジェネラルは酒類に弱く、酒に呑まれる性質だった。
それを考慮して、オズワルドが酒を愉しむのは一人の夜に限定していたのだが、今夜は任務明けのジェネラルが
予定していた日程より早く帰宅して、そのままなし崩しに酒席へと発展してしまった。
疲れた身体には酒の回りも早いと忠告したにも関わらず、大方の予想通りに酒に呑まれてしまったようだ。
酒に浮かされた視線は熱っぽく潤んで、オズワルドを熱心に見つめていた。

「酔っている私は嫌いかね?」
「閣下に奔放になられると、色々と支障が出るんですよ」
「ほう?」

ジェネラルの手がオズワルドの頬へと至る。
オズワルドの声を強請るように、親指の腹で唇をなぞる。
込み上げてくる熱に翻弄されないよう、目に力を入れると、無理にでも呆れたような声を作った。

「いい加減に下戸だと自覚なさって下さい。そう何度も酔っ払った姿を晒したくないでしょう?」
「私は何時もオズに酔っているぞ?」
「閣下、話を逸らさないで頂きたいのですが」

酒精に犯された手は熱く、オズワルドは心音を苦労して抑えた。
そんな心情はきっとお見通しなのだろうジェネラルが、思わず見惚れてしまいそうな笑みを見せる。
どくり、と跳ねた心臓は忌々しいほど正直で、オズワルドは心中で舌打ちをした。

「オズ」
「…なんですか?」
「私はな、少しでも貴方との時間を共有したいのだよ」
「……はい?」

言われた言葉を受け取り損ねて、オズワルドは僅かに首を傾げた。
その隙に、頬に当てられたジェネラルの手がすべり、オズワルドの手からグラスを浚っていく。
カタン、と、テーブルにグラスが置かれた音が、嫌に大きく聞こえた。

「可能ならば、どんなことであっても貴方と同じことをして、同じ空間にいたい。
貴方が一人で酒を呑むのを見るのも良いが、貴方が好む味を私も味わいたい。」
「……それを閣下が好きじゃなくても、ですか?」
「貴方が飲む酒は不思議と口に合う」

酔っているとは思えないほどの真剣な目と声に、一瞬オズワルドの息が詰まる。
酒精に侵されたジェネラルの言葉は軽いが、その口から虚言が出たことはない。
本人曰く、普段押さえている枷が緩むのだとか。
ならば、この言葉はジェネラルの本音で、好きでもない酒でもオズワルドと飲みたいのだという本心なのだろうか。
そう思い至ってしまったオズワルドは思わず口を噤んだ。
今、口を開けば、聞き苦しい揺れた声が出てしまいそうだったからだ。

「オズ。酒より深く、強く、私を酔わせておくれ」
「―――…ッ」

ジェネラルはオズワルドの手を取り、そのままゆっくりと身を起こした。
抵抗する間もなく唇を奪われ、リップノイズに混じり、ネクタイに手が掛かる。
手馴れたようにソファに押し倒され、ジェネラルの顔が緩まされた首筋へと埋まる。
熱い舌にぞろり、と舐められると、痺れるような感覚が広がった。

「……閣下…ッ」

咎めるような声を出しながらも、オズワルドの手はジェネラルの服の裾を掴んで縋ってしまう。
結局、ジェネラルであればオズワルドに否やの声はないのだ。
じわじわと熱の広がる身体を持て余し、オズワルドは観念したように息を吐いた。
裾を捉えていた手をジェネラルの広い背に回して抱き寄せると、思っていた以上に簡単に身を引けた。
同時に、圧し掛かってくる重さも増して、ジェネラルの体躯がオズワルドに落ちてくる。

「…?」

訝しげにジェネラルの顔を覗き込めば、深い色の青眼は閉じられ、酒に塗れた唇は薄く開いていた。
背に回した手が、穏やかな寝息を感じ取り、オズワルドはこれ以上ないほど深い溜息を吐いた。
任務明けの疲れた身体に酒を入れたのだ。それは眠くもなるだろう。
ジェネラルとて休息も睡眠も必要な人の身なのだ。決して責めるようなことではない。
そう何度も心中で呟くも、オズワルドの頬には朱が差し、暖められた身体からは湯気が出そうだった。

「―――こうなるのが嫌なんですよ…ッ!」

既に幾夜も経験した酒席の終わり方に、オズワルドは片手で目元を覆った。
悔し紛れに目の前の金髪を引っ張ると、そのままジェネラル諸共ソファに沈み込む。
掠れた声での怒声は小さく掠れていて、ジェネラルの眠りを妨げることはなかった。
結局、オズワルドはジェネラルの寝息をBGMに、そのままソファで不貞寝を決め込むことになったのだった。



翌日、昨夜の記憶を飛ばしたジェネラルからソファで寝ていた理由を尋ねられ、オズワルドが何と説明したかは当事者たちのみが知る。



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