M25 ただの物置。

コーヒー・ブレイク



!注意

オズワルド&グスタフの師弟設定小話。
オズさんがグスタフ大好き。キス描写有り。
嘘設定、別人臭、妄想全開等苦手な方は要回避。


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なにやら大量の仕事に追われているらしい弟子の後姿を、オズワルドはなんとはなしに見やっていた。
あちらこちらに広げられた書類に視線を投げるたび、綺麗に手入れされた黒髪が肩口で揺れている。
視線がパソコンから離れている間にも、自分に良く似た器用な指が忙しなくキーボードを叩く音が響く。
かれこれ―――正確な時間は忘れたが―――三時間近くはパソコンと戯れているグスタフに休憩を取る気配はない。
オズワルドは一つ息をつくと、ゆっくりと座っていたソファから立ち上った。
暗殺者時代の癖が未だ抜けずにいるオズワルドは、ソファの僅かな軋みさえも殺しきると、足音さえさせずにキッチンへと向かう。

と。

「どちらへ?」

キーボードを叩く音に混じり、低音が耳を打つ。
それに触発されて、オズワルドの歩みが止まった。
首を巡らせれば、グスタフの視線はパソコンに向いたままで、オズワルドには背を向けている。
気配察知が巧くなりましたねぇ…と場違いなことを考えながら、オズワルドは微かに笑った。

「少しの休憩も取らない仕方のない弟子に、コーヒーでも淹れようかと思いまして」
「お気遣いなく」
「おや、適切な休息は処理速度に貢献しますよ?」
「結構です」

にべなく捨てるグスタフに、しかしオズワルドはグラス越しの瞳を一層和ませた。
笑気を隠さず片手で口元を隠し、一頻り笑うと、今度は足音を殺すことなくグスタフへと近寄る。
グスタフの背後に立っても、その背中は微動だにしない。

「疲れてるでしょう?」
「然程でも」
「私には疲れているように見えますよ?」
「貴方が耄碌したのでしょう」

結構な毒を吐いてくるところは誰に似たのか。
オズワルドの脳裏を青い法衣が過ぎったが、あえて気付かなかったことにする。
グスタフの背後に立ったまま、眼下に流れる黒髪を一筋掬う。
今までリズム良く奏でていたキーボードの音が一瞬だけ途切れるのが面白い。
掬った髪は、そのまま形の良い耳に掛けてやると、下から機嫌の悪そうな声が聞こえてきた。

「……なんですか」
「さて、何でしょう?」

反応が期待通り過ぎて、オズワルドは笑みを深めた。
ピリピリとした不穏な気配を生み出してくるグスタフに構わず、背後からやんわりと抱きついた。
グスタフの肩の上を、オズワルドの腕が通り過ぎ、グスタフの腹の上辺りで両手を緩やかに組むと、盛大な溜息が聞こえてきた。
強い瞳で振り返ったのを幸いに、オズワルドはグスタフの唇をそっと啄ばんだ。
子どものように触れ合わせるだけで終わるそれに、グスタフの眉間に皴が寄る。

「グスタフ」
「なんですか」
「キスするときに痛いですから、潤してくださいね?」

深く笑んで、これ見よがしに唇を舐めれば、眉間の皴が一層深くなる。
喉奥で笑いながらするり、と腕を解けば、完全に離れる前に強い力で掴まれた。
おや、と思う間もなく、離れたはずの唇が再び重なる。
しかも、オズワルドがしたような可愛いキスではなく、舌を差し入れ酸素を奪うような深いものだ。

「――――」

経験からか、年齢からか、舌を取られ酸素を奪われても理性までは奪われなかったオズワルドは、意外そうな視線をグスタフへと向ける。
グスタフは瞼を閉じているからその視線が交わることはなかったが、
オズワルドは唇を食まれながらふむ、と空いている腕をもう一度伸ばした。
腹の上―――ではなく、それより下へ手を伸ばし、器用な指でするり、と撫で上げる。

「――――ッ!」

途端、今までキスを繰り返していたグスタフは弾かれたように身を離し、オズワルドの腕から手を離す。
オズワルドは戻した手をマジマジと見やり、次いでなんとも言えない顔で視線を外しているグスタフを見た。
休日ゆえに手袋も嵌めていないオズワルドは、手に感じたグスタフの熱をしっかりと感じていた。

(仕事が滞って、溜まってるんですねぇ……色々と)

思ったことを口にしないのはグスタフに対するせめてもの気遣いだ。
もっとも、口元が弧を描いていては意味などなかったかもしれないが。
オズワルドは、にやり、と。およそ紳士には見られない笑みを浮かべると軽やかにグスタフを呼んだ。

「終わったら…遊びましょうか」

オズワルドは露になっていたグスタフの耳に唇を寄せて、笑気を含ませ囁いた。
その言葉に、グスタフはやはり眉間に皴を寄せるが、終に否定の言葉は出てこなかった。
オズワルドは闊達に笑いながら、まずはコーヒーでも淹れようと、足取り軽くキッチンへと向かったのだった。



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